朝日に捧ぐセレナーデ 〜天使なSubの育て方〜

沈丁花

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第二部

2人の生活①(東弥side)

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酷く長く感じられた1週間が終わり、東弥は予定通り退院することになった。

「手続きお疲れー!真希ちゃんに車借りてきたよー!俺あんまし運転得意じゃないから、東弥助手席座ってくれる?」

病院から静留の押す車椅子で出てきた東弥に、谷津が運転席から声をかける。

「…ごめんほんと助かる…。」

「友達だからねー!」

礼を述べれば当然のようにそう返ってきて、やっぱり谷津はいい奴だと改めて実感した。

幹斗と静留に手を貸してもらいながら助手席に乗り、ドアを閉める。

ここから東弥たちの住む家まではかなり距離があるため、帰りの車は谷津が運転してくれることになったのだ。

ちなみに東弥が入院している間、静留は近くのスタジオでピアノを練習しながら幹斗の家で生活していたため、幹斗にも頭が上がらない。

「じゃあ、後ろに静留君と一緒に作ったお惣菜置いておくから、食べてね。冷蔵庫で3日くらいは持つと思う。」

荷台に何かを乗せながら幹斗が言う。

やけに大きな荷物を持っていたから、なんだと思ったが、そう言うことだったのか。

正直帰ってからのことについては食事など何も考えていなかったため、とても助かる。

「…幹斗も何から何までほんとごめん…。」

「由良さんと離れた時にお世話になったから、そのお礼。」

幹斗にも“当然のことをしただけ”、と言うような口調で返され、東弥は唖然とした。

__俺、殆ど何もしてないんだけどな…。

「でもお金とかは後で払うね。」

せめてそう申し出る。

「あっそれについては、

…なんか由良さんが僕もお礼したいからってめちゃくちゃな金額を振り込んできたから大丈夫。」

しかしまたもや予想外の答えが返ってきた。

「…秋月さんにもお礼しないと。」

「俺から言っておくよ。」

幹斗はそう言って東弥から静留へと視線を移す。

「静留君、たくさん手伝ってくれてありがとう。またいつでも遊びにきてね。またね。」

「うん!幹斗さん、たくさんありがとう。」

「どういたしまして。」

静留はこの1週間でかなり幹斗と打ち解けたようで、幹斗と笑い合い手を重ね合わせ、車が発進し幹斗の姿が小さくなっても見えなくなるまで名残惜しそうに手を振っていた。



「それにしても刺されるとか、正直相当な持ちネタになるよねー!今どんな気分?」

帰りの車の中、隣でふと谷津が聞いてきた。

「…谷津の考えがバ…画期的だなって気分。」

「うわひどい!!今バカって言おうとした!!めっちゃショックだったから事故ったら東弥のせいだかんね!!」

相変わらず賑やかだなと思いながら東弥が苦笑する一方で、静留は事故と聞いてあたふたとしている。

相変わらずの可愛らしさだ。



犯人は一昨日自主して逮捕されたらしい。

東弥を刺した男は静留の母親の元彼で、フラれたことへの当て付けで静留を誘拐し、ヨリを戻そうとしていたと言う。

しかし東弥の存在が邪魔で、glareで脅して撒こうとしたところ、glareによる威嚇が効かずに驚いてナイフを出してしまった。

…そして、人を殺してしまったかもしれないと怖くなって逃げた、と…。

なんとも情けない話で、今思い出すと笑えてくる。



__まあ、笑えるのは静留に被害がなかったから、か…。

谷津の運転をぼんやりと見つめながら、そんなことを考える。

とんでもない不足の事態だったが、これがきっかけで静留と今までできていなかった話ができたし、腹部にできた傷だって静留の盾になった証と考えれば、むしろ名誉に思えた。
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