56 / 92
第二部
2人の生活①(東弥side)
しおりを挟む
酷く長く感じられた1週間が終わり、東弥は予定通り退院することになった。
「手続きお疲れー!真希ちゃんに車借りてきたよー!俺あんまし運転得意じゃないから、東弥助手席座ってくれる?」
病院から静留の押す車椅子で出てきた東弥に、谷津が運転席から声をかける。
「…ごめんほんと助かる…。」
「友達だからねー!」
礼を述べれば当然のようにそう返ってきて、やっぱり谷津はいい奴だと改めて実感した。
幹斗と静留に手を貸してもらいながら助手席に乗り、ドアを閉める。
ここから東弥たちの住む家まではかなり距離があるため、帰りの車は谷津が運転してくれることになったのだ。
ちなみに東弥が入院している間、静留は近くのスタジオでピアノを練習しながら幹斗の家で生活していたため、幹斗にも頭が上がらない。
「じゃあ、後ろに静留君と一緒に作ったお惣菜置いておくから、食べてね。冷蔵庫で3日くらいは持つと思う。」
荷台に何かを乗せながら幹斗が言う。
やけに大きな荷物を持っていたから、なんだと思ったが、そう言うことだったのか。
正直帰ってからのことについては食事など何も考えていなかったため、とても助かる。
「…幹斗も何から何までほんとごめん…。」
「由良さんと離れた時にお世話になったから、そのお礼。」
幹斗にも“当然のことをしただけ”、と言うような口調で返され、東弥は唖然とした。
__俺、殆ど何もしてないんだけどな…。
「でもお金とかは後で払うね。」
せめてそう申し出る。
「あっそれについては、
…なんか由良さんが僕もお礼したいからってめちゃくちゃな金額を振り込んできたから大丈夫。」
しかしまたもや予想外の答えが返ってきた。
「…秋月さんにもお礼しないと。」
「俺から言っておくよ。」
幹斗はそう言って東弥から静留へと視線を移す。
「静留君、たくさん手伝ってくれてありがとう。またいつでも遊びにきてね。またね。」
「うん!幹斗さん、たくさんありがとう。」
「どういたしまして。」
静留はこの1週間でかなり幹斗と打ち解けたようで、幹斗と笑い合い手を重ね合わせ、車が発進し幹斗の姿が小さくなっても見えなくなるまで名残惜しそうに手を振っていた。
「それにしても刺されるとか、正直相当な持ちネタになるよねー!今どんな気分?」
帰りの車の中、隣でふと谷津が聞いてきた。
「…谷津の考えがバ…画期的だなって気分。」
「うわひどい!!今バカって言おうとした!!めっちゃショックだったから事故ったら東弥のせいだかんね!!」
相変わらず賑やかだなと思いながら東弥が苦笑する一方で、静留は事故と聞いてあたふたとしている。
相変わらずの可愛らしさだ。
犯人は一昨日自主して逮捕されたらしい。
東弥を刺した男は静留の母親の元彼で、フラれたことへの当て付けで静留を誘拐し、ヨリを戻そうとしていたと言う。
しかし東弥の存在が邪魔で、glareで脅して撒こうとしたところ、glareによる威嚇が効かずに驚いてナイフを出してしまった。
…そして、人を殺してしまったかもしれないと怖くなって逃げた、と…。
なんとも情けない話で、今思い出すと笑えてくる。
__まあ、笑えるのは静留に被害がなかったから、か…。
谷津の運転をぼんやりと見つめながら、そんなことを考える。
とんでもない不足の事態だったが、これがきっかけで静留と今までできていなかった話ができたし、腹部にできた傷だって静留の盾になった証と考えれば、むしろ名誉に思えた。
「手続きお疲れー!真希ちゃんに車借りてきたよー!俺あんまし運転得意じゃないから、東弥助手席座ってくれる?」
病院から静留の押す車椅子で出てきた東弥に、谷津が運転席から声をかける。
「…ごめんほんと助かる…。」
「友達だからねー!」
礼を述べれば当然のようにそう返ってきて、やっぱり谷津はいい奴だと改めて実感した。
幹斗と静留に手を貸してもらいながら助手席に乗り、ドアを閉める。
ここから東弥たちの住む家まではかなり距離があるため、帰りの車は谷津が運転してくれることになったのだ。
ちなみに東弥が入院している間、静留は近くのスタジオでピアノを練習しながら幹斗の家で生活していたため、幹斗にも頭が上がらない。
「じゃあ、後ろに静留君と一緒に作ったお惣菜置いておくから、食べてね。冷蔵庫で3日くらいは持つと思う。」
荷台に何かを乗せながら幹斗が言う。
やけに大きな荷物を持っていたから、なんだと思ったが、そう言うことだったのか。
正直帰ってからのことについては食事など何も考えていなかったため、とても助かる。
「…幹斗も何から何までほんとごめん…。」
「由良さんと離れた時にお世話になったから、そのお礼。」
幹斗にも“当然のことをしただけ”、と言うような口調で返され、東弥は唖然とした。
__俺、殆ど何もしてないんだけどな…。
「でもお金とかは後で払うね。」
せめてそう申し出る。
「あっそれについては、
…なんか由良さんが僕もお礼したいからってめちゃくちゃな金額を振り込んできたから大丈夫。」
しかしまたもや予想外の答えが返ってきた。
「…秋月さんにもお礼しないと。」
「俺から言っておくよ。」
幹斗はそう言って東弥から静留へと視線を移す。
「静留君、たくさん手伝ってくれてありがとう。またいつでも遊びにきてね。またね。」
「うん!幹斗さん、たくさんありがとう。」
「どういたしまして。」
静留はこの1週間でかなり幹斗と打ち解けたようで、幹斗と笑い合い手を重ね合わせ、車が発進し幹斗の姿が小さくなっても見えなくなるまで名残惜しそうに手を振っていた。
「それにしても刺されるとか、正直相当な持ちネタになるよねー!今どんな気分?」
帰りの車の中、隣でふと谷津が聞いてきた。
「…谷津の考えがバ…画期的だなって気分。」
「うわひどい!!今バカって言おうとした!!めっちゃショックだったから事故ったら東弥のせいだかんね!!」
相変わらず賑やかだなと思いながら東弥が苦笑する一方で、静留は事故と聞いてあたふたとしている。
相変わらずの可愛らしさだ。
犯人は一昨日自主して逮捕されたらしい。
東弥を刺した男は静留の母親の元彼で、フラれたことへの当て付けで静留を誘拐し、ヨリを戻そうとしていたと言う。
しかし東弥の存在が邪魔で、glareで脅して撒こうとしたところ、glareによる威嚇が効かずに驚いてナイフを出してしまった。
…そして、人を殺してしまったかもしれないと怖くなって逃げた、と…。
なんとも情けない話で、今思い出すと笑えてくる。
__まあ、笑えるのは静留に被害がなかったから、か…。
谷津の運転をぼんやりと見つめながら、そんなことを考える。
とんでもない不足の事態だったが、これがきっかけで静留と今までできていなかった話ができたし、腹部にできた傷だって静留の盾になった証と考えれば、むしろ名誉に思えた。
0
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
Dom/Subユニバース読み切り【嘉島天馬×雨ケ谷颯太】
朝比奈*文字書き
BL
🖤 Dom/Subユニバース
毎週日曜日21時更新!
嘉島天馬(クーデレ・執着Dom)× 雨ケ谷颯太(ワンコ系・甘えんぼSubよりSwitch)
読み切り単話シリーズ。命令に溺れ、甘やかされ、とろけてゆく。
支配と愛情が交錯する、ふたりだけの濃密な関係を描いています。
あらすじは各小説に記載してあります。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる