朝日に捧ぐセレナーデ 〜天使なSubの育て方〜

沈丁花

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第二部

2回の来客⑤(静留side)

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やっぱり言わなければ良かっただろうか。

東弥がなにも言わないから、後悔だけが募っていく。

「…ごめんなさい…。」

沈黙に耐えきれず謝ると、東弥がはっとした様子で口を開いた。

「悪いのは俺のほう。静留は悪くないよ。

…恥ずかしいことだけど、確かに俺は静留と会うまで求められれば誰とでもそういうことをしてた。今でもばかだったと思ってる。嫌な奴だよね。」

だれとでも、という言葉にもう一度胸がちくりと痛む。

けれど東弥は嫌な人ではない。

こんなことを気にする静留が悪いのに、東弥は嫌な顔一つせず静留に優しく説明してくれる。

「ぼくがわるいの…。ほかのひととくらべるなんて、…おかしい…よね…?」

問いかけると、今度は腕を引き寄せられ抱きしめられた。

彼の温もりに安心するとともに傷が開かないか不安になってすぐに離れようとしたけれど、力の込められた彼の腕がそれを許さない。

「おかしくないよ。…でも、俺のわがままだけど、比べないでほしい。静留だからそういうことをしなかった。」

「…僕だから…?僕とは、したくないってこと…?」

それはもっと苦しい。静留は涙目になる。

どうしてだろうと考えるが、静留は男だしピアノ以外になにもできないし、魅力もないから当たり前だ。

しかし東弥は首を横に振って、静留の頭を緩く撫でた。

「それは違う。静留とはしたいからしなかった。…って、矛盾してるね。でもそうなんだ。俺、恋人ができたのは静留が初めてだから。」

東弥の言っている意味がわからない。

そもそもそれは恋人がする物ではないのだろうか?そして幸せそうで…。

__…あれ、そういえば映画のとき、しあわせじゃなかったって、いってた…。

「好きでもない人と、求められればしてた。そもそも俺は男の人が好きで、男の人が好きなのを周りに隠してて、だから女の人とそういうことしても幸せじゃなかったし、そういうのって好きな人とだから幸せだと思うんだ。」

東弥は続ける。

静留は一生懸命東弥の話を聞き、少しだけ理解できた気がした。

「しあわせじゃないことだから、しない…?」

東弥にとってその行為は幸せなものじゃなかった。だから静留とはしたくない。そういうことだろうか。

「…半分正解で、半分間違い。今までしてきたのは確かに幸せじゃなかったけど、静留とすれば幸せになれるし、静留とそういうこと、したいと思ってる。

でも、静留はそもそも最近までその行為を知らなかったし、聞いた時もやっぱり怖かったでしょう…?

だからゆっくりでいいと思ってる。この先もずっと一緒にいるから、なにも急ぐ必要はないよ。」

__しないのは、僕が怖がったから…?

確かに初めてその行為を聞いたとき、静留は怖かった。

でも今日映画でそれを見て、さらに東弥の話を聞いて、思う。

東弥とならそれは幸せで、だからしてみたい。怖くない。

「…怖くない。けがが治ったら、東弥さんと、したい。…だめ、かな…?」

震える声でなんとか言い切り、恥ずかしくて顔が熱くなる。

東弥は再び驚いたように目を見開いた。

「…無理してない?」

静留はふるふると首を横に振る。

場に静寂が流れた。

やっぱり静留とはできないのだろうか。

不安になり見上げた東弥の瞳は、愛おしげに細められている。

「じゃあ約束。いきなりは難しいから、けがが治ったら少しずつ覚えて行こう。恥ずかしいことたくさんするけど、頑張れる?」

「う、うん…。」

やけに色っぽい声で言われ、静留は思わず俯いた。

心臓がどんどん加速して苦しい。

「いい子。」

甘く低い声が鼓膜を震わせ、そのまま唇を奪われた。

ただ重ねるだけの口づけに安心して身体の力がぬけていく。

「疲れた?」

東弥が唇を離し微笑む。

「…うん、すこしだけ…。」

今日はたくさんいろいろなことがあった。谷津が来て、映画を見て、女の人が来て、東弥と大切な話をして。

だからすこし眠たくなってしまった。

「ご飯…あとはカップ麺にしようか。食べてお風呂に入って寝よう。」

「うん!」

東弥の申し出に頷き、カップの麺を棚から取り出して東弥に渡す。

東弥がそれを作ってくれている間に静留は食卓に置いてあったご飯をすこし躊躇いながら片付けた。

「できた。こっちで食べようか。」

東弥がリビングのソファーに座りながらそう言ったので、箸を持っていき東弥の横に腰掛ける。

静留が蓋を開けようとすると東弥はそれを静止し、静留が持っている箸を優しく取り上げてそれで麺を掬った。

「???」

首を傾げる静留を見て微笑みながら、東弥が掬った麺をふうふうと冷まして静留の口元に持っていく。

静留は口を開け、東弥の手から温かい麺をゆっくり啜った。

__おいしい…。

やっぱり東弥の隣に座って食べるご飯は美味しいなと思う。

しかし東弥が再び静留の箸で麺を掬うのを見て、静留は心配になった。

「…東弥さんの分、のびちゃうよ…?」

「俺は静留が俺の手から食べてくれたらそれが一番幸せだな。」

「!!」

彼はそう言って、再び静留の口元に箸を持ってきてくれた。

面倒な世話を進んでしたいと思うなんて東弥はやっぱり少し変だなと思いながらも、彼にそうしてもらうことは大好きなので静留も笑顔で口を開く。

__東弥さんがしあわせで、僕もしあわせなら、それがいい。

食べ終わり食器を片付けてからはシャワーを浴びて、疲れたからもうピアノの練習はせずに東弥と同じベッドで眠った。

もちろん、寝る前にはとびきり甘いわたあめのようなキスもして。
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