記憶喪失の僕は、初めて会ったはずの大学の先輩が気になってたまりません!

沈丁花

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明日の君が笑顔なら⑥

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三澤と翔の言った通りだ。北瀬は“自分といたら礼人が苦しむ”、と、本当に思っていた。

北瀬はあの日、礼人と一緒にいたくて声をかけてくれた。礼人は今もずっと北瀬と一緒にいたい。

もし北瀬が今も礼人と一緒にいたいと望むなら、もうこんなごちゃごちゃしたことを話さなくても、それだけでいいのではないだろうか。

「僕は先輩のことが好きです。離れてからもずっと、先輩のことばかり考えていました。一緒にいたいな、でも、一緒にいて先輩が辛くなるならいけないなって。だから、先輩の気持ちが聞きたいです。…先輩は僕と、本当に別れたいですか…?」

途端、目の前でシトリンの瞳がぐらりと揺れ、やがて白い頬を雫が伝った。

__…えっ?先輩、泣いて…?

突然の出来事に戸惑いながら、礼人は無意識に彼の頬へ手を添える。

まだ苦しそうに歪められた唇、戸惑うように泳ぐ視線。

どうしても彼の心の中は理解できないけれど、ただ、彼に笑っていてほしいと願う。せめて添えた手の温もりで、安心してほしいと思う。

「…一緒にいても、いいんですか…?」

やがて震える声で北瀬が問うた。どこか懇願するような口調だ。

「僕が一緒にいたいんです。先輩は一つも悪いことしてないのに、どうしてそんな風に泣くんですか…?僕は、どうして僕なんかをこんなに先輩が想ってくれるのか、今も不思議でたまらないのに。」

「君はなんかじゃありません。君だけなんです。…俺が、ほしいと望むものの全てが君だから。」

「えっ…?」

意味がわからず礼人が聞き返すと、少しだけ北瀬の口元が綻ぶ。

それから北瀬は、丁寧に過去をなぞりながら、自分の中で礼人がどれだけ大切だったかを語ってくれた。
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