強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

文字の大きさ
115 / 261

誕生日ss4

しおりを挟む
駅からホテルまでの道のりは海が見えたり遊園地があったりで、ホテルはドラマの中でしか見たことがないような豪華な内装で、物語の中に迷い込んでしまったみたいな心地になる。

受付はフロントではなくラウンジで行うらしく、行くと2人がけのふわふわのソファに通された。

「お待ちしておりました。それではこちらに記入をお願いいたします。」

ソファーの前には広い木机があって、ホテルマンがお茶を淹れてくれて、少し説明を受けてから差し出された紙に、由良さんが必要事項を記入していく。

「ご記入ありがとうございます。ティータイムではあちらのお菓子やドリンクがどれもご自由にお楽しみいただけますが、チェックインはどうされますか?」

手続きを終えた後は丁寧な口調でそう尋ねられ、俺は彼が示した先に視線をやった。

マカロン、ギモーブ、ケーキ、クッキーなど、さまざまなお菓子が並べられている。

しかもそれぞれいくつか種類があり、どれもとても美味しそうなのだ。

そして向こう側にはドリンクバーが置いてある。

「少しお茶を楽しんでから部屋に行こうか。どれも美味しそうだね。」

由良さんは俺に視線をやって笑みをこぼし、ホテルマンにそう言った。もしかしたら俺が子供みたいにお菓子を見て興奮したことに気づいてしまったのかもしれない。

…恥ずかしい…。

「かしこまりました。では、チェックインの際にお声掛けください。」


「取りに行かないの?」

ホテルマンが去っていった後で、ソファーでじっとしていると由良さんにそう尋ねられた。

「えっと… 」

喉から手が出るほど取りに行きたいけれど、恥ずかしくて躊躇ってしまう。

視線を泳がせていると、由良さんに優しく頭を撫でられた。

「取っておいで。好きでしょう?これもここを選んだ理由の一つなんだから。」

好きすぎる…。

僕の分もとってきてね、と付け加えて俺の後ろめたさを無くしてくれるところまで含め、本当に好きだ。

色とりどりのマカロンはどれも美しくて美味しくて、クッキーも、スノーボール、チョコチップクッキー、アーモンドクッキーと全て美味しかった。ケーキはガトーショコラと抹茶シフォン。それから…

ほっぺたが落ちそうなくらいのおいしさに、お昼も食べたのに思わずたくさん食べてしまう。

いくら甘いものを食べてもアールグレイを口に含めばそれだけで口の中の甘さがリセットされてしまうから、不思議だ。

「美味しかった?」

「はい、とても。」

「それはよかった。じゃあ部屋に行こうか。」

「はい。」

チェックインをしたいと告げると、ホテルマンが部屋まで案内してくれる。

「今日お泊まりになるお部屋がこちらになります。こちらは… 」

そして丁寧に部屋を説明すると、彼は頭を下げてから部屋の外へ行った。

部屋はテラス付きのオーシャンビューで、海と反対の方面には有名な観覧車が見える。

バスルームは広々としていて、浴槽のすぐそばの大きな窓からもまた、観覧車が綺麗に見えた。

ベッドはふかふか、アメニティーも見るからに高そうで、2人がけのふわふわのソファーが大窓に面して置いてあって、しかも夕食はルームサービスだと言う。

…一体いくら使ったんだ…

「由良さん、あの、いく… 」

いくら使ったのか、と聞こうとしたら、言い切る前に顎を指で挟まれ、ぐっと上を向かされた。

そのまま熱くglareを注がれ、綺麗な唇は意地悪く笑んで。

「お仕置きされたい?」

悪戯っぽく言われてしまい、もうこれで十分お仕置きだと思った。

…心臓への拷問だ。ぜったい。

「…おっ、俺トイレ行ってきます!」

「幹斗君、そっちお風呂。」

「… 」

ひとまず真っ赤になりながら、俺は慌ててトイレへと駆け込んだ。

…こんな完璧な人がパートナーなんて、前世で国でも救ったのかな、俺…。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。 更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

待てって言われたから…

ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。 //今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて… がっつり小スカです。 投稿不定期です🙇表紙は自筆です。 華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...