156 / 261
第2部
捧げる愛 ④
しおりを挟む
「お腹すいたでしょう?食べようか。」
お皿を並べ、まだくっついたまま離れようとしない彼を膝に乗せ、いただきますをする。
けれども彼は手をつけようとしない。
ただじっと僕の膝に座ったまま、全くと言っていいほど食事に興味を示さないのだ。
空腹でないはずがないのに。
「幹斗、あーんして。」
このまま何も食べないまま衰弱させてはいけないと思い、向かい合う形に彼を座り直させ、弱いglareを放ちながら口元へ匙を持っていく。
もしこれで食べてくれないのなら、また口移しでもして無理やり食べさせるしかない。
「食べて。」
もう一度少しglareを強めて言うと、幹斗君は肩を固くした後で重たげに口を開けた。
淡い唇がぎこちなく粥を食み、それからゆっくりと嚥下し飲み込む。
その様子はひどく気怠げだった。
心が痛む。
傷ついている彼にこれ以上の無理をさせたくないという気持ちと、食べさせなければ彼の身体が傷ついてしまうという不安。
それらがせめぎあって心を乱したが、結局僕はまた彼の口元に粥を掬った匙を持っていった。
「いい子だね、幹斗。もう一度口を開けて。」
もうglareで強要することはしたくない。
彼が口を開けてくれるよう願いながら頭を撫で甘いglareを放ち続ければ、彼の肩から力が抜け、もう一度唇が開かれた。
普段の食事の何倍もの時間をかけ、椀の中身がなくなるまで何度もそれを繰り返す。
食事と言う行為にすら彼は疲れた様子で、終えたあとはまた僕に抱きついて動かなくなってしまった。
その後も、お皿を洗う時も読書をする時も幹斗君はずっと僕にしがみついて離れなくて。
「買い物に行ってこようと思うんだけど、いいかな?それとも一緒に行く?」
まだ空の明るい午後6時、ふとまともな食材がないことに気がつき膝の上の彼に問いかけた。
「… 」
寂しげに幹斗君の瞳が潤み、長い睫毛が露に濡れる。
置いては行けないと判断し、なんとか幹斗君を着替えさせ、手を繋いだ状態で玄関へ向かった。
彼は大人しく僕と手を繋いで玄関まで歩き、特に抵抗する様子もなく一緒に外へ足を踏み出す。
しかしその足が一歩外に出た瞬間、彼は膝から倒れ込み、明らかに不自然な呼吸を始めた。
深く息を吸い、吐き出し切る前にまた吸い込む。
それは繰り返すうちに加速していき、彼は目を見開いた状態で苦しげに片手で喉を押さえ、僕と繋いだ手にすがるように力を込め始めた。
お皿を並べ、まだくっついたまま離れようとしない彼を膝に乗せ、いただきますをする。
けれども彼は手をつけようとしない。
ただじっと僕の膝に座ったまま、全くと言っていいほど食事に興味を示さないのだ。
空腹でないはずがないのに。
「幹斗、あーんして。」
このまま何も食べないまま衰弱させてはいけないと思い、向かい合う形に彼を座り直させ、弱いglareを放ちながら口元へ匙を持っていく。
もしこれで食べてくれないのなら、また口移しでもして無理やり食べさせるしかない。
「食べて。」
もう一度少しglareを強めて言うと、幹斗君は肩を固くした後で重たげに口を開けた。
淡い唇がぎこちなく粥を食み、それからゆっくりと嚥下し飲み込む。
その様子はひどく気怠げだった。
心が痛む。
傷ついている彼にこれ以上の無理をさせたくないという気持ちと、食べさせなければ彼の身体が傷ついてしまうという不安。
それらがせめぎあって心を乱したが、結局僕はまた彼の口元に粥を掬った匙を持っていった。
「いい子だね、幹斗。もう一度口を開けて。」
もうglareで強要することはしたくない。
彼が口を開けてくれるよう願いながら頭を撫で甘いglareを放ち続ければ、彼の肩から力が抜け、もう一度唇が開かれた。
普段の食事の何倍もの時間をかけ、椀の中身がなくなるまで何度もそれを繰り返す。
食事と言う行為にすら彼は疲れた様子で、終えたあとはまた僕に抱きついて動かなくなってしまった。
その後も、お皿を洗う時も読書をする時も幹斗君はずっと僕にしがみついて離れなくて。
「買い物に行ってこようと思うんだけど、いいかな?それとも一緒に行く?」
まだ空の明るい午後6時、ふとまともな食材がないことに気がつき膝の上の彼に問いかけた。
「… 」
寂しげに幹斗君の瞳が潤み、長い睫毛が露に濡れる。
置いては行けないと判断し、なんとか幹斗君を着替えさせ、手を繋いだ状態で玄関へ向かった。
彼は大人しく僕と手を繋いで玄関まで歩き、特に抵抗する様子もなく一緒に外へ足を踏み出す。
しかしその足が一歩外に出た瞬間、彼は膝から倒れ込み、明らかに不自然な呼吸を始めた。
深く息を吸い、吐き出し切る前にまた吸い込む。
それは繰り返すうちに加速していき、彼は目を見開いた状態で苦しげに片手で喉を押さえ、僕と繋いだ手にすがるように力を込め始めた。
12
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる