強く握って、離さないで 〜この愛はいけないと分かっていても、俺はあなたに出会えてよかった〜 

沈丁花

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第2部

捧げる愛 ④

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「お腹すいたでしょう?食べようか。」

お皿を並べ、まだくっついたまま離れようとしない彼を膝に乗せ、いただきますをする。

けれども彼は手をつけようとしない。

ただじっと僕の膝に座ったまま、全くと言っていいほど食事に興味を示さないのだ。

空腹でないはずがないのに。

「幹斗、あーんして。」

このまま何も食べないまま衰弱させてはいけないと思い、向かい合う形に彼を座り直させ、弱いglareを放ちながら口元へ匙を持っていく。

もしこれで食べてくれないのなら、また口移しでもして無理やり食べさせるしかない。

「食べて。」

もう一度少しglareを強めて言うと、幹斗君は肩を固くした後で重たげに口を開けた。

淡い唇がぎこちなく粥をみ、それからゆっくりと嚥下し飲み込む。

その様子はひどく気怠げだった。

心が痛む。

傷ついている彼にこれ以上の無理をさせたくないという気持ちと、食べさせなければ彼の身体が傷ついてしまうという不安。

それらがせめぎあって心を乱したが、結局僕はまた彼の口元に粥を掬った匙を持っていった。

「いい子だね、幹斗。もう一度口を開けて。」

もうglareで強要することはしたくない。

彼が口を開けてくれるよう願いながら頭を撫で甘いglareを放ち続ければ、彼の肩から力が抜け、もう一度唇が開かれた。

普段の食事の何倍もの時間をかけ、椀の中身がなくなるまで何度もそれを繰り返す。

食事と言う行為にすら彼は疲れた様子で、終えたあとはまた僕に抱きついて動かなくなってしまった。

その後も、お皿を洗う時も読書をする時も幹斗君はずっと僕にしがみついて離れなくて。

「買い物に行ってこようと思うんだけど、いいかな?それとも一緒に行く?」

まだ空の明るい午後6時、ふとまともな食材がないことに気がつき膝の上の彼に問いかけた。

「… 」

寂しげに幹斗君の瞳が潤み、長い睫毛が露に濡れる。

置いては行けないと判断し、なんとか幹斗君を着替えさせ、手を繋いだ状態で玄関へ向かった。

彼は大人しく僕と手を繋いで玄関まで歩き、特に抵抗する様子もなく一緒に外へ足を踏み出す。

しかしその足が一歩外に出た瞬間、彼は膝から倒れ込み、明らかに不自然な呼吸を始めた。

深く息を吸い、吐き出し切る前にまた吸い込む。

それは繰り返すうちに加速していき、彼は目を見開いた状態で苦しげに片手で喉を押さえ、僕と繋いだ手にすがるように力を込め始めた。

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