218 / 261
番外編 〜2人の夏休み〜
準備と飛行機②
しおりを挟む
そんなこんなであたふたしながらも大体の荷物をキャリーケースに入れ、特に必要なものだけはリュックとショルダーバッグに入れて準備を終えた。
「えっと、パジャマ、下着、タオル、歯ブラシ、お財布… 」
忘れるのが怖くて作ったしおりに確認のチェックを入れていく。
「幹斗君は真面目だね。」
「!!」
ダイニングでコーヒーを飲んでいる由良さんにそう言われてはじめてチェックを入れる時声に出して読み上げていたことに気がついた。
子供っぽくて恥ずかしい。穴があったら入りたい。
なんとなく俯き、今度は声に出さないように確認する。
「幹斗君の分も淹れたから、休憩しない?」
確認を終えたタイミングで由良さんに呼ばれ、ダイニングへ赴くと、既にテーブルの上には俺用のマグにカフェオレが作られていた。
「ありがとうございます。」
礼を述べ彼の向かいに座りマグに口をつければ温かく舌触りの良い滑らかな液が舌を撫で、コーヒーの香りが口いっぱいに広がる。
「美味しい…。」
思わずため息と共に声が漏れた。
ミルクがたっぷり、砂糖も少し入っていて、苦くないのに芳醇な香りは残っている。
由良さんの淹れるカフェラテは俺が淹れるものよりずっと美味しいから不思議だ。由良さんはブラックしか飲まないのに。
「よかった。」
カフェラテの優しさに思わず口元を綻ばせた俺を見て、紫紺の瞳が緩やかに細められる。
彼のこの表情が好きだ。その瞳を見ているとまるで愛おしいと言われているみたいで。
「旅行、楽しみだね。」
穏やかに微笑んで由良さんが紡ぐ。
「はい。…でも…。」
「でも?」
「…なんでもないです。」
なんででもなんて言ったんだ俺…。
後悔しても口に出してしまったものはもう遅い。
ともかく誤魔化して…
「Say, 幹斗。」
「由良さんと5日間もずっと一緒だなんて、心臓が持つかどうか心配で…。」
不意打ちでcommandを放たれ、結局全て話してしまった。
大抵の場合彼に隠し事は通用しないと分かっていたけれど、やっぱりこれは恥ずかしい。おそらく真っ赤になっているであろう顔を両の手の平で覆う。
「じゃあその言葉、そっくりそのまま僕も返すよ。」
「…?」
返って来た言葉の意味がよくわからず首を傾げる俺を見て、彼は何故かやれやれと言った様子で頷き、子供にするようにして俺の頭を撫でた。
「それを飲み終わったら一緒にお風呂に入ろうか。しばらく帰ることができないから。」
「!?」
…また、そんなこと言う…。
せっかくいったん落ち着いたところに追い討ちをかけるように彼が恥ずかしげもなく自然に言うから、思わず彼の目をじっと見てその意味がわかっているのかと訴えてしまう。
行為の最中に彼のはだけた襟元を覗くだけでもあんなにもどきどきして心臓が壊れてしまいそうなのに、浴室の光に照らされた状態で彼の男らしい裸体が目に入る上、自分の肌をその彼に晒すだなんて。
「…嫌?」
尋ねられ、肩が跳ねる。
「嫌じゃない…です…。」
わかっているくせに、と思いながら、嘘をついても無駄なことをわかっているから正直に答えた。
誘っているみたいで恥ずかしい。
「じゃあ行こうか。」
もうすでに頭の中がぐちゃぐちゃで余裕のない俺とは反対に、彼は穏やかに微笑んで言う。
しかし彼の凛とした声は気のせいか少し熱を帯びているように聞こえた。
いつの間にか2人ともマグは空になっていて。
「…はい…。」
俯きながら頷き、立ち上がり浴室へ向かう由良さんを追いかけるようにして俺も椅子から立ち上がった。
浴室で交わっているうちに遅刻しそうになったのは当然の結果と言えよう。
「えっと、パジャマ、下着、タオル、歯ブラシ、お財布… 」
忘れるのが怖くて作ったしおりに確認のチェックを入れていく。
「幹斗君は真面目だね。」
「!!」
ダイニングでコーヒーを飲んでいる由良さんにそう言われてはじめてチェックを入れる時声に出して読み上げていたことに気がついた。
子供っぽくて恥ずかしい。穴があったら入りたい。
なんとなく俯き、今度は声に出さないように確認する。
「幹斗君の分も淹れたから、休憩しない?」
確認を終えたタイミングで由良さんに呼ばれ、ダイニングへ赴くと、既にテーブルの上には俺用のマグにカフェオレが作られていた。
「ありがとうございます。」
礼を述べ彼の向かいに座りマグに口をつければ温かく舌触りの良い滑らかな液が舌を撫で、コーヒーの香りが口いっぱいに広がる。
「美味しい…。」
思わずため息と共に声が漏れた。
ミルクがたっぷり、砂糖も少し入っていて、苦くないのに芳醇な香りは残っている。
由良さんの淹れるカフェラテは俺が淹れるものよりずっと美味しいから不思議だ。由良さんはブラックしか飲まないのに。
「よかった。」
カフェラテの優しさに思わず口元を綻ばせた俺を見て、紫紺の瞳が緩やかに細められる。
彼のこの表情が好きだ。その瞳を見ているとまるで愛おしいと言われているみたいで。
「旅行、楽しみだね。」
穏やかに微笑んで由良さんが紡ぐ。
「はい。…でも…。」
「でも?」
「…なんでもないです。」
なんででもなんて言ったんだ俺…。
後悔しても口に出してしまったものはもう遅い。
ともかく誤魔化して…
「Say, 幹斗。」
「由良さんと5日間もずっと一緒だなんて、心臓が持つかどうか心配で…。」
不意打ちでcommandを放たれ、結局全て話してしまった。
大抵の場合彼に隠し事は通用しないと分かっていたけれど、やっぱりこれは恥ずかしい。おそらく真っ赤になっているであろう顔を両の手の平で覆う。
「じゃあその言葉、そっくりそのまま僕も返すよ。」
「…?」
返って来た言葉の意味がよくわからず首を傾げる俺を見て、彼は何故かやれやれと言った様子で頷き、子供にするようにして俺の頭を撫でた。
「それを飲み終わったら一緒にお風呂に入ろうか。しばらく帰ることができないから。」
「!?」
…また、そんなこと言う…。
せっかくいったん落ち着いたところに追い討ちをかけるように彼が恥ずかしげもなく自然に言うから、思わず彼の目をじっと見てその意味がわかっているのかと訴えてしまう。
行為の最中に彼のはだけた襟元を覗くだけでもあんなにもどきどきして心臓が壊れてしまいそうなのに、浴室の光に照らされた状態で彼の男らしい裸体が目に入る上、自分の肌をその彼に晒すだなんて。
「…嫌?」
尋ねられ、肩が跳ねる。
「嫌じゃない…です…。」
わかっているくせに、と思いながら、嘘をついても無駄なことをわかっているから正直に答えた。
誘っているみたいで恥ずかしい。
「じゃあ行こうか。」
もうすでに頭の中がぐちゃぐちゃで余裕のない俺とは反対に、彼は穏やかに微笑んで言う。
しかし彼の凛とした声は気のせいか少し熱を帯びているように聞こえた。
いつの間にか2人ともマグは空になっていて。
「…はい…。」
俯きながら頷き、立ち上がり浴室へ向かう由良さんを追いかけるようにして俺も椅子から立ち上がった。
浴室で交わっているうちに遅刻しそうになったのは当然の結果と言えよう。
11
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
待てって言われたから…
ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる