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番外編 〜2人の夏休み〜
準備と飛行機③
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バスで空港に行き重たい荷物を預けると、その足でモバイルルーターのレンタルや通貨の交換をした。
空港は広く、乗る場所と通貨の交換所、モバイルルーターのレンタル場所はそれぞれ遠いところに散らばっていて。
俺だったらこの中で絶対に迷ってしまうのに、由良さんが近所周辺を歩くかのようにすいすいと歩き手続きを済ませてくれたから、全ては順調に進み、今俺達は空港のレストラン街に来ている。
「空港ってこんなところまであるんですね。」
案内された席に彼と向かい合わせに座り、つい興奮気味に話したら、由良さんは切れ長の瞳を柔らかに細めた。
「ここに来たのは初めて?」
「いえ、一度あります。でも…。」
「でも?」
言いかけた俺に、由良さんが返事を待つように問いかける。
でも、の後の言葉をあまり深く考えていなかった俺は、沈黙の中で次に紡ぐ言葉を考えた。
今までにも一度、高校の修学旅行でこの空港に来たことがある。
でも、今回由良さんと一緒に歩いてみて初めて色々な景色が目に入った。
あの時はこの場所を通らなかったのか、この場所が新しく変わったのか、もしくは俺の周りを見る目が変わったのか。
どれが原因かはわからないけれど、なんとなく俺が変わっという理由が一番しっくりくる。
「…由良さんとだから、全然、ちがってみえる…。」
途中で恥ずかしくなって視線を泳がせていると、ふと由良さんが“まずいな”、と言いながら俺の方に少し身を乗り出した。
ふわりと彼の纏うシトラスが鼻をくすぐる。
「そんなことを言われると、抱きしめたくなる。」
「!!」
耳のすぐ近くで凛とした低い声が鼓膜を震わせ、不意打ちで近づいてきた端正な顔立ちと相まって俺の心臓がうるさくさせた。
今日の由良さんもいつも通り格好いい。
水色のポロシャツが爽やかで、開いたボタンから覗くたくましく浮き出た鎖骨や、さりげなくかけられた銀のネックレスがとても色っぽく、だからこんなふうにいきなり近づかれると胸が苦しくなり困ってしまう。
「メニューは決めた?」
…ずるい。
俺がこんなにも動揺しているのに由良さんは穏やかに笑っていて、平然と俺にメニューを寄せてくれた。
空港は広く、乗る場所と通貨の交換所、モバイルルーターのレンタル場所はそれぞれ遠いところに散らばっていて。
俺だったらこの中で絶対に迷ってしまうのに、由良さんが近所周辺を歩くかのようにすいすいと歩き手続きを済ませてくれたから、全ては順調に進み、今俺達は空港のレストラン街に来ている。
「空港ってこんなところまであるんですね。」
案内された席に彼と向かい合わせに座り、つい興奮気味に話したら、由良さんは切れ長の瞳を柔らかに細めた。
「ここに来たのは初めて?」
「いえ、一度あります。でも…。」
「でも?」
言いかけた俺に、由良さんが返事を待つように問いかける。
でも、の後の言葉をあまり深く考えていなかった俺は、沈黙の中で次に紡ぐ言葉を考えた。
今までにも一度、高校の修学旅行でこの空港に来たことがある。
でも、今回由良さんと一緒に歩いてみて初めて色々な景色が目に入った。
あの時はこの場所を通らなかったのか、この場所が新しく変わったのか、もしくは俺の周りを見る目が変わったのか。
どれが原因かはわからないけれど、なんとなく俺が変わっという理由が一番しっくりくる。
「…由良さんとだから、全然、ちがってみえる…。」
途中で恥ずかしくなって視線を泳がせていると、ふと由良さんが“まずいな”、と言いながら俺の方に少し身を乗り出した。
ふわりと彼の纏うシトラスが鼻をくすぐる。
「そんなことを言われると、抱きしめたくなる。」
「!!」
耳のすぐ近くで凛とした低い声が鼓膜を震わせ、不意打ちで近づいてきた端正な顔立ちと相まって俺の心臓がうるさくさせた。
今日の由良さんもいつも通り格好いい。
水色のポロシャツが爽やかで、開いたボタンから覗くたくましく浮き出た鎖骨や、さりげなくかけられた銀のネックレスがとても色っぽく、だからこんなふうにいきなり近づかれると胸が苦しくなり困ってしまう。
「メニューは決めた?」
…ずるい。
俺がこんなにも動揺しているのに由良さんは穏やかに笑っていて、平然と俺にメニューを寄せてくれた。
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