229 / 261
番外編 〜2人の夏休み〜
異国の地で⑥
しおりを挟む
「今日はまず自然公園で野生動物を観察しに行きますが、まあ、コアラはなかなか見られないですねぇー…。会えたらラッキーということで!
カンガルーはめちゃくちゃいますよ。それはもう、一歩歩いたらカンガルー…ってほどではないですが確実に会えます!
自然公園に行ったあとはTボーンステーキを食べにいきましょう。これね、ついてくる食べ放題のガーリックバターバケットがめちゃくちゃ美味しいんですけど、あまり食べるとお肉が入らなくなるので注意してくださいねぇ!」
バスの中、寺本さんが今日の流れや雑談を話してくれた。
彼の引き出しは様々な分野に転がっていて、聞いていて楽しい上にそのまま土産話に出来そうなものも多い。
しかし幹斗君はその内容にあまり興味を示さず、窓枠に頬杖をつきじっと窓の外を眺めている。
酔ってしまったのだろうか。
「具合悪い?大丈夫?」
軽く肩を叩いて反応を求めると、彼がはっとした様子で振り返る。
その唇の端からは唾液が溢れていて、重たげなまぶたと相まって彼が寝ていたことを理解した。
「ごめん、起こしちゃったね。」
唇の端についた唾液を親指で拭ってやりながら謝れば、彼は慌てて首を横に振る。
「あの、…いえっ、そのっ、……すみません…。」
「謝らないで。具合が悪くなったんじゃないかって心配になってしまって声をかけたんだ。お昼の後、もしかしてあまり寝られなかった?」
「!!」
突然幹斗君が頬を真っ赤に染めた。
僕が寝ている間に何かあったのだろうか。
彼は気まずそうに視線を泳がせていて、そういえば僕が起きた直後幹斗君が挙動不審な様子を見せていたことを思い出す。
「なにがあったのか聞きたいな。」
“ぅー”、と愛らしい呻きを漏らしながら幹斗君が両手で顔を覆う。
「教えて、幹斗。」
優しく顔を覆う両手を剥がしその瞳をglareを放ちながらじっと見つめると、幹斗君は観念したように僕の耳に口を寄せた。
「…あの…実は…。」
ひそひそ声がくすぐったい。
そして内容を聞いてさらにくすぐったい気持ちになった。まったく、どうしてこんなにも愛おしい行動ばかり繰り返してしまうのかと疑問に思う。
彼は僕が寝ている間にちょっとした悪戯でキスをしようとしたらしい。
それなのに僕が無意識に抱きしめてきたらしく、眠れなくなったという。
「そんなにかわいいことをしていたの?起きていればよかった。」
耳元で囁けば彼がぴくりと肩を跳ねさせる。
「いっ、…意地悪、です…!」
むっと唇を尖らせる表情も可愛らしい。
出会った頃よりずっと、今の彼は僕の前で感情表現が豊かになった。
そのことを思うとさらに愛しくて、たまらず彼の唇を奪う。
つい欲望が勝ってしまうのは、彼の大きすぎる魅力が僕の理性を壊すのがいけない。
不可抗力だ。
カンガルーはめちゃくちゃいますよ。それはもう、一歩歩いたらカンガルー…ってほどではないですが確実に会えます!
自然公園に行ったあとはTボーンステーキを食べにいきましょう。これね、ついてくる食べ放題のガーリックバターバケットがめちゃくちゃ美味しいんですけど、あまり食べるとお肉が入らなくなるので注意してくださいねぇ!」
バスの中、寺本さんが今日の流れや雑談を話してくれた。
彼の引き出しは様々な分野に転がっていて、聞いていて楽しい上にそのまま土産話に出来そうなものも多い。
しかし幹斗君はその内容にあまり興味を示さず、窓枠に頬杖をつきじっと窓の外を眺めている。
酔ってしまったのだろうか。
「具合悪い?大丈夫?」
軽く肩を叩いて反応を求めると、彼がはっとした様子で振り返る。
その唇の端からは唾液が溢れていて、重たげなまぶたと相まって彼が寝ていたことを理解した。
「ごめん、起こしちゃったね。」
唇の端についた唾液を親指で拭ってやりながら謝れば、彼は慌てて首を横に振る。
「あの、…いえっ、そのっ、……すみません…。」
「謝らないで。具合が悪くなったんじゃないかって心配になってしまって声をかけたんだ。お昼の後、もしかしてあまり寝られなかった?」
「!!」
突然幹斗君が頬を真っ赤に染めた。
僕が寝ている間に何かあったのだろうか。
彼は気まずそうに視線を泳がせていて、そういえば僕が起きた直後幹斗君が挙動不審な様子を見せていたことを思い出す。
「なにがあったのか聞きたいな。」
“ぅー”、と愛らしい呻きを漏らしながら幹斗君が両手で顔を覆う。
「教えて、幹斗。」
優しく顔を覆う両手を剥がしその瞳をglareを放ちながらじっと見つめると、幹斗君は観念したように僕の耳に口を寄せた。
「…あの…実は…。」
ひそひそ声がくすぐったい。
そして内容を聞いてさらにくすぐったい気持ちになった。まったく、どうしてこんなにも愛おしい行動ばかり繰り返してしまうのかと疑問に思う。
彼は僕が寝ている間にちょっとした悪戯でキスをしようとしたらしい。
それなのに僕が無意識に抱きしめてきたらしく、眠れなくなったという。
「そんなにかわいいことをしていたの?起きていればよかった。」
耳元で囁けば彼がぴくりと肩を跳ねさせる。
「いっ、…意地悪、です…!」
むっと唇を尖らせる表情も可愛らしい。
出会った頃よりずっと、今の彼は僕の前で感情表現が豊かになった。
そのことを思うとさらに愛しくて、たまらず彼の唇を奪う。
つい欲望が勝ってしまうのは、彼の大きすぎる魅力が僕の理性を壊すのがいけない。
不可抗力だ。
12
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
待てって言われたから…
ゆあ
BL
Dom/Subユニバースの設定をお借りしてます。
//今日は久しぶりに津川とprayする日だ。久しぶりのcomandに気持ち良くなっていたのに。急に電話がかかってきた。終わるまでstayしててと言われて、30分ほど待っている間に雪人はトイレに行きたくなっていた。行かせてと言おうと思ったのだが、会社に戻るからそれまでstayと言われて…
がっつり小スカです。
投稿不定期です🙇表紙は自筆です。
華奢な上司(sub)×がっしりめな後輩(dom)
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる