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第1章過去と前世と贖罪と

7・登録、そして受難

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「じゃあ、これから登録作業に入るよ」

イザベラはカウンターの向こうの椅子に腰掛けると、そう言った。
ちなみにギルドマスターだが、
私と少し話をすると奥の部屋に引っ込んでしまった。
どうやら彼はギルドマスターとして、
やらなければいけない仕事が山積みらしい。
各地の別のギルドマスターと連絡を取りあったり、
魔物の動向などをを書類にまとめたりするので忙しく、
こうやって表に出てくることもあまりないらしい。
ひょっとしてギルド登録初日で、
彼と会えた私は実はかなり運が良いのではないだろうか。
そう思っていると、イザベラが何か紙みたいなのを取り出してきた。
そこには名前とか、年齢とか、出身地とか、必須事項を書く項目がある。

「これに書けばいいんですね」
「そうだよ」

私はイザベラから、ペンを貸して貰うと、そこに必要事項を書いていく。
ペンは羽ペンだった。ボールペンとかあるのと聞くと、何それと言われた。
この世界ではどうやらボールペンは無いらしい。
ちなみに文字は書こうと思ったら、すらすらと頭に浮かんできた。
明らかに日本語とは、違う文字なんだけどな。これはスキルの恩恵だろう。
やがて、必須項目を全て書き終えると、私はイザベラに紙と羽ペンを返した。

「ああ、ありがとう…ん? ちょっと待って、ヒョウム国?」

紙には出身地を書く項目もあった。
しかし私はこの世界に来たばかりなので、
地名について詳しくないので、出身地はヒョウム国にしておいたのだ。
適当な地名を書いてもいいが、バレた時が怖いので、そうしたのだ。

「ヒョウム国って何?」
「え? 国の名前ですけど」
「悪いけどそんな国の名前は聞いたことがないけど…。
ひょっとしてこの大陸の外から来たのかい?」
「え? まあそんなところです…」

やばい…これ以上追求されたらマズイ…。
なるべく冷静を装ってそう答えたが、内心冷や汗だらだらだった。
洞察力に優れた人間なら、怪しいと思っただろうが、
幸いにしてイザベラはそれ以上追及することはなかった。
たぶん細かいことを気にしない性格なのだろう。

「まぁそれはいいけど。
名前が…セツナ・カイドウって、
何だかあまりない名前だけど、セツナは貴族なの?」
「え?」

思ってもみなかった言葉に私は目を丸くした。

「だって家名は貴族か王族しか持たないのが普通だよ?
一般庶民は家名は持たないよ」

あれ、そういえば今までステータスを見てきた人達はみんな名字を持たなかった。
どうやら名字があるかないかで、貴族か、庶民かどうかが判別できるらしい。
そういえば日本も、今だと考えられないが、
名字を持つのは上流階級だけという時代があった。
この世界の文明は馬車があるから、多分中世ぐらい。
まだ貴族など、上流階級の力が強いのだろう。

「いえ、私は貴族ではありません」
「なら没落貴族の末裔とか、そんな感じかい?」
「まぁそんな感じです」

と、お茶を濁しておいた。幸いにしてイザベラがそれ以上追求することは無かった。

「あと、特技の項目にお菓子作りってあるんだけど、これふざけてるの?」

そう呆れたようにイザベラは言った。

「え、おかしいですか?」
「だって普通は腕っぷしが強いとか、採取が得意とか、
そういうことを書くもんだよ?」

ああ、なるほど。
どうやら冒険者として生かせる特技を書かないといけなかったみたいだ。
確かにお菓子作りって、あまり冒険者として役に立ちそうにない特技だよな…。

冒険者として生かせる特技か…。
アイテムボックスは…さすがにダメだよな。
空間術、私はアイテムボックスと呼ぶことが多いのだが、
冒険者として生かせそうな特技って言ったら、それしか思い浮かばない。
使える人間が限られるので、あんまり使える事は公に言わない方が良いらしいが、
あのハンクという男に物を取り出した所を見られてしまった。
しかもそれ以外にも、多くの人に見られたのだから、
遅かれ早かれ、町の人には広まる。
だったらもう自分からそれを言って、それを売りにしてしまえば良い様な気もする。
でもそれは私に忠告してくれたエドナとの約束を破ることなる。
それはさすがに申し訳ないし、自分から言ってしまったら、
取り返しがつかないことになりそうな気がする。
そうだな…一回だけならまだごまかしが効くかもしれない。

「そうですね。私は――――」

その時、ギルドの扉が大きく開いた。
私が後ろを振り返ると大柄な1人の男が立っていた。
髪の色は緑色で、肌の色は褐色だった。

「あ、ジャン。おかえり」

と、イザベラが言った。という事は2人は知り合いなんだろうか。

「ただいま。ハンクの奴はちゃんと神殿まで送り届けておいたよ。
って、あれ? その子がひょっとしてハンクを倒した子?」
「そうだよ。名前をセツナっていうんだ。ヒョウム国から来たみたいだよ」
「へぇ…あのハンクをこの子がねぇ…」

緑髪の男はじっと私の事を見た。その瞳は純粋な好奇心に満ちていたが、
私よりかなり身長が高いので思わず後ずさってしまう。

「あ、あの、この方は…?」
「ああ、こいつはジャン。あたしと同じギルドの職員だよ。
最も入ってから日が浅いけどね」
「日が浅いって言って、もう2年も経つじゃないか…。
それよりうちのギルドに空間術が使える子が入ってくるなんてね。
喜ばしい限りだよ」

緑髪の男のその言葉を聞いて私は絶句した。

「え、空間術? どういうこと?」
「ハンクを担架で運ぶ時に、そう教えてくれた人が居たんだよ。
ハンクを倒した黒髪の女の子が何もない所から、物を取り出してたって」
「それ本当なの、セツナ?」

イザベラにそう聞かれた時、私は顔面蒼白だったに違いない。
ごまかそう、嘘を――そう思っても、言葉は一向に出てこない。
何か言わなければ――そんな必死の思いで、私は言葉を出した。

「ソ…ソンナコト出来マセン」

唐突にカタコト口調になった私を2人が奇妙なものを見るような目で見た。

「あれ、でも確かに見たって聞いたんだけど?」
「キット目ノ錯覚デス。幻覚デス。妄想デス。アリエマセン」
「でも、その人だけじゃなく、他にも見たって人がいたんだけど…」
「ハッハッハッ、私ノヨウナ小娘ニ、ソンナコトガ出来ルト思イマスカ?
コノ通リ、カ弱イ女ノ子デスヨ」
「でも君、ハンクを倒せたんだよね?」

ぐはっ、痛いところを突きやがった、この野郎…!
とりあえず落ち着け、私。考えろ。この状況を切り抜ける方法を…。
どうやって切り抜ける…?
だが、これは勘だが、ここで誤魔化して追求を免れたとしても、
多分、何かある度に聞かれるような気がする…。
なら、もう隠すことは無理だろう。
幸いにして、私が最強魔力を持っていることも、
聖眼持ちだということも、まだバレていない。
なら、まだ軌道修正出来る。
それに空間術を持っていることが例えバレたとしても、問題ない。
逆にそれを自分の売りにしてしまえば良いだろう。
だが問題はどうして私がそれを使えるか何だけど…。
事前にエドナにこうなった時の対処法を聞いておいて良かった…。
じゃなかったら、もうどうしていいのか分からなくてパニックになっていただろう。

「はぁ…あまり知られたくなかったんですけど、確かに私は空間術が使えます」
「え、そうなの?」
「やっぱりそうだったんだね。どんなのか見せてよ」

この緑髪の男は…体は大柄だが、中身は人懐っこくて好奇心旺盛みたいだ。
何ていうか犬みたいだな…。
そう思いつつ、私はアイテムボックスから、カバンを取り出してみた。
すると周囲の人間が驚いた顔した。近くにいた冒険者がみんな私の周りに集まってきた。

「うわっ…びっくりした。本当に使える人間が居るなんて…」

イザベラが驚いたように、そう言った。

「カイドウ家に伝わる魔道具の力です。
どんな物かは、お見せすることは出来ませんが、
カイドウの血を引く者にしか使うことが出来ません」

カバンをアイテムボックスにしまいながら、私はそう言う。
アイテムボックスは私のスキルの力だが、
ここはエドナに言われたように、
空間術の力を持った魔道具によるものと説明しておく。
エドナは確か空間術はそういった能力を与えられた聖眼持ちか、
賢者クラスの魔法使いじゃないと使えないと言った。
私が聖眼持ちだと知られたら、
神殿という場所に連れていかれて、軟禁コースだ。
でも賢者クラス…具体的に何がどうすごいのか分からんけど、
多分魔法使いの上級職業とか、そんな感じだろう。
その賢者だと言うのもまた余計なトラブルを引き起こしそうな気がする。
だから、そういう力を持った魔道具を持っているという事にしておこう。
まぁ実際はそんな物は持ってはいないんだけど、
そうすれば私が聖眼持ちであることに、気づかれる事は無い。
ついでに私は自分にしかそれが使えないということを強調した。

「え、何で? 見せてよ」
「ダメです。
これはカイドウの血を引く者以外の人間に見せたら、力を失ってしまうんです。
そういうまじないがかけられてあるんです」

とっさに言ったデタラメだが、我ながら良い嘘だと思う。
だって魔道具を手に入れようと思っても、
見た瞬間に力を失ってしまうなら、盗もうなんて誰も思わないに違いない。
それに空間術の力を込められた魔道具ってどんな形なのか、私は知らないのだ。
これで追求は免れることが出来る…と思っていたのだが。

「ところでさ、君って名字があるって事は貴族なの?」
「いえ、私は貴族ではありません。普通の庶民です」
「何でわざわざこの町まで来たの?」
「えっと…それはちょっと言えません」
「なんで冒険者になろうと思ったの?」
「え、えっと…」
「年はいくつなの、好きな食べ物は?」

おい…。どうやらこのジャンという男は、詮索好きみたいだ。
多分好奇心が強い性格なのかもしれない。
確かに空間術が使える人間なんて、興味がわくのは当然だろう。
でも私が異世界から来たという事は、絶対に知られるわけにはいかない。
困っているとイザベラが怒ったように口を開いた。

「こら、ジャン! セツナが困ってるじゃないか。
それにあんたはまだやらないといけない仕事があっただろう。
さっさと中に入ってギルドマスターを手伝ってきな」
「はいはい、じゃあ、またね。セツナちゃん」

そういうとジャンは、カウンターの中に入り、奥の部屋に入っていった。
できればもう二度と会いたくないと思った。
エドナもイザベラも人にあまり詮索しない人だから、油断していた。
どうやら異世界には、
ああいった人の事情をあれこれ知りたがる人間も居るみたいだ。
いや日本にも居たけど。

「はぁ…全くあいつは…。ごめんよ。セツナ。
あいつはまだギルドに勤めだしてから、
日が浅くって、人の気持ちとか、他人との距離感とか、
おしはかることが苦手なんだ。悪い奴じゃないんだけどね…」

そう言うとイザベラはため息をついた。
こういった人間関係のトラブルは、これからもあるだろうな…。
出来れば空間術が使える事は、
内緒にしておきたかったが、
もうばれてしまったのなら仕方が無い。それで通すしかない。
ていうかさっきから、他の冒険者がみんな私のこと見ているんだけど…。
何だか居心地が悪い。

「それより、特技に空間術が使えるって足してもいいかい?」
「まぁそれでいいですよ…」

若干投げやりな気持ちになりながら、私はそう言った。

「しかし空間術が使えるなら、色々と仕事はありそうだね。
運搬の仕事も出来るし、指名依頼が来るかもね」
「指名依頼?」
「基本的にギルドの依頼っていうのは、
依頼人が提示した内容をあたしら職員が、
難易度に振り分けて掲示板に貼るんだよ。
それを冒険者が受理して、依頼を解決して、
報酬を受け取るって仕組みになっているんだけど、
指名依頼っていうのは、依頼人が特定の冒険者に依頼する事を言うのさ」
「あー、なるほどわかりました。
つまり特定の個人に自分の悩み事を解決してもらうわけですね」
「そうなるね。その分報酬も上乗せされるし、その顧客が満足してくれれば、
また次の指名依頼も来るし、そうやって稼いでいる冒険者は多いんだよ」
「へぇ、そうなんですか」
「ところでセツナ。
登録するなら、ギルドランクは最低のFランクからになるけど良いかい?」
「ギルドランク?」

そう言うと、イザベラは説明してくれた。
ギルドのランクは、一番下がFで、
次にE、D、C、B、A、Sとランクが上がっていき、
一番上がSSとなっているらしい。
そして最初に登録する時はみんなFランクからで、
ランクは依頼を解決していけば、上がっていくみたいだ。
それ以外にも本人の実力が高い場合にも上がるらしい。
ちなみにそれぞれのランクの強さというのは、
FとEが駆け出し冒険者。DとCが中級冒険者、
Bから熟練者となり、
Aになるともう普通の冒険者よりすごい存在で、尊敬すらされる。
ちなみにSとSSは冒険者の中でも別格。
もうそれぐらいの強さになると、
いちいちギルドに行って依頼を受けたりしない。
国とか軍隊とかで、仕事をするのが普通で、
このレベルになると、最早普通の冒険者ではお目にかかれないらしい。
しかしこういうランク付けも、ありがちといえば、ありがちだよな…。
やっぱり創立に異世界人が関わっているのだろうか。

「まぁ、Fランクからでいいですよ」
「わかった。じゃあFランクにしておくね」

そう言うとイザベラは、透明な水晶をカウンターの上に置いた。

「じゃあ、これに名前と年齢と出身地と職種を吹き込んでくれるかい?」

私は言われた通り、水晶に情報を言ってみた。

「セツナ・カイドウ、17才、ヒョウム国出身、魔法使いです」

そう言うと、水晶から白のカードみたいなのが突然浮かび上がってきた。

「うわ、何ですかこれ?」
「これはギルドカードって言ってね。冒険者の証みたいなもんだよ」

声を吹き込むだけでカードが作れるなんて、便利だな…。
こういうところは魔法が発展したこの世界らしいな。
そう思いつつ、カードを見ると、
表には大きくFと書かれており、裏にさっき私が吹き込んだ情報が掲載されていた。

【名前】セツナ・カイドウ。
【年齢】17才。
【出身】ヒョウム国出身。
【職種】魔法使い。
【所属】アアルギルド組合。

【達成済み】0 【受理中】0 【失敗】0

一番下のは何だと思ったけど、たぶんこれは今までに受理した依頼のことだろう。
無くさないように気を付けないといけないな。
しかし…ギルドランクがアルファベットなのは、翻訳されているせいだと思ったが、
このギルドカードを見る限り、この世界にもアルファベットは伝わっているらしい。
やっぱりギルドの創立には、異世界人が関わっているのかな…。
とりあえずギルドカードはアイテムボックスにしまっておいた。

「ところで、おおまかな登録はこれで終わりなんだけど、
次に規則の説明をしておくね。そもそも冒険者っていうのは――――」
「お、俺とチームを組んでくれ!」

その時、イザベラの話を遮る形で、1人の男が私に近づいてきた。
その男は年齢は多分30代ぐらい、鎧を来て剣を背負っているから、剣士だろう。

「チーム?」
「俺の仲間になってくれっ、お前のその力に一目惚れしたんだ!」

力? ああ空間術のことか。
そう思っていると、ずいっと別の男が現れた。

「それを言うなら俺だって欲しいぞ!」
「あ、僕も!」

そんな感じで私はあっという間に冒険者達に取り囲まれてた。

「えーと…」

みんな身長が私より高いので、見上げる形となってしまう。
それがすごく怖い。
何て言うかみんな獰猛なライオンみたいに目がギラギラしている。
たぶん彼らが私を欲しがっている理由は、私が空間術が使えるせいだろう。
その時になって、エドナが空間術の力を隠せと言っていた理由がよく分かった。
確かに便利な能力だから、誰でも欲しいと思うだろう。

「俺とチームを組もう! 損はさせない!」
「僕と組んだらおいしいものを食べさせます!」
「俺と組んだら報酬はお前に半分やる!」

…日本にいた時、クラスにスポーツ万能なクラスメイトが居た。
彼は抜群の運動神経と、反射能力を持っていた。
バスケをやらせれば、どんなに離れた距離でもゴールを決めたし、
陸上やれば、クラスで一番速いタイムを出した。
しかし本人は全くスポーツに興味がなく、
運動も体育でやるぐらいで、帰宅部だった。
そんな彼をいつも休み時間になると、運動部の部員が勧誘していた。
それはもう熱烈に、泣き落としを使ったり、マネージャーに誘惑させたり、
うちは別に体育系の学校じゃないにも関わらず、
どの運動部も彼を欲しがっていた。
それが煩わしくて仕方がないと、彼はいつも友人に愚痴っていた。
私は特別、彼とは親しいわけではなかったが、
心の中では運動部の方に味方していたように思う。
せっかく才能があるんだから、それを生かせばいいのにと。

ごめんねぇーー! 吉田君ーーー!! 君の気持ちが分かったよ!!
こんな風に熱烈に求められたら、普通引いちゃうよねーー!!
ごめん、本当にごめーーん!!

「こら、あんた達、何勝手なことやってるの!」

その時、イザベラが冒険者達を一喝した。
イザベラさん、やばいかっこいい。しかしそんな考えは次の言葉ですぐに霧散した。

「そういう事は規則の説明が終わった後にしな!」

え? そっち? 怒るポイントそっちなの?
私が勧誘されて、困ってるとかじゃなくて…?

「あ…あのイザベラさん。それよりこの状況どうしたらいいでしょうか?」
「え? うーん、ここは誰でもいいから適当に選んでおいたら?」
「はい?」
「いやー、だってこんな風にこいつらが目の色を変えることっていうのは珍しいから、
ここは誰でもいいから、選んでおいた方がいいよ。そうじゃないと、みんな納得しないと思うし」

そうあっけらかんとイザベラは言った。
ちょっと待て、私の味方をしてくれるんじゃなかったのか…。

そう思いつつ、私は周りにいる冒険者を見渡した。ほとんどが男性である。
しかもみんな身長が高い、そして体が何ていうかがっしりとした体つきをしている。
普通の体つきをした男性もいたが、おそらくそれは魔法使いだろう。
遠目に私を見ている冒険者も居るが、
共通しているのは彼らの視線は私に集中しているということ。
みんな私に仲間になって欲しいと思っているに違いない。

だらだらと冷や汗が出た。
この中で誰か選べ? しばらくは1人でやっていこうと思っていたのに…。
だって人間関係とか、報酬の分配とか、面倒くさいじゃん…。
こうなったら仕方がない。あの手を使うか…。

「あ、後ろにセクシー美女が!!」

そう言うと、ほとんど男性が後ろ振り返った。今だ――!!
私は冒険者達の間をくぐり抜けると、急いで扉の方に向かった。

「あ、逃げるぞ!!」

その時、気がついた1人がそう叫んだ。
全員がこちらに来ようとしているのが分かった。
私は扉を開けて、外に出た。

「《飛翔(フライ)》!!」

私は魔法で空を飛ぶと、ギルドの屋根の上に避難した。

「待てーー!!」
「降りてこいーー!!」

そんな叫び声が下から聞こえたが、私には関係なかった。
私はただ善行を積んで、地獄行きを回避したいだけなのに…。

どうしてこうなった。

私が異世界に来て、1日目。
想像以上に私のカルマを消す道は遠く、険しかった。
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