【宝の鍵~金の王子と銀の王子~】本編 元平凡女性のイケメン王子は執着心強めな兄に溺愛される

月城はな

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第十五章 試練

12-3 陰の日の終わり

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 白銀の月が照らす大地。

 周囲にはレイデの木が風に揺れ、神聖な空気を醸し出していた。

 その柔らかな草の上で死んだように仰向けに横たわり眠る銀髪の青年の姿は、それはもうひどいものだった。しっかりと着込んでいたはずの宝鍵の正装衣装は完全に脱げ、ところどころ切り裂かれたそれは、傍に放られ、裸の体に金銀の装飾具のみをつけたままという姿。顔も体も色々な体液にまみれ、一番下肢の状態がひどい。受け止めきれぬ白濁が、今尚、後腔から溢れ出している。

 そんな青年の上に覆いかぶさっていた獅子は、おもむろに体を上げると、大きく体を震わせた。すると、獅子の体は白銀の光を放ち、徐々にその姿を変えていく。胡桃色の鬣を髪に変え、鋭い爪も牙も失くし、金色の瞳はそのままに、形を獣のものから人のものに変える。

 毛並みはなくなり、人の肌が現れ、体も小さくなっていく……。

「……ふぅ」

 完全に元の人の形に戻ったレオンハルトは、小さくため息をつくと弟の上から身を起こし、その横に片膝をたてて座り込んだ。

 この陰の間での作用の一環として、変化の力がある事をレイデに教えられたレオンハルトは、変化が出来るという禊の泉(森の中の例の温泉である)で試しに動物の姿になってみたのである。

 金色の瞳の獅子の姿に変化したレオンハルトは、リュセルが目を覚ました事を察し、森を出て、体を満ちさせ発情したリュセルと獣の姿のまま交わった。だが、理性が薄く本能の方が強くなる獣姿での交わりは正直危険だった。目の前の甘い体を本能のままに食らってしまわぬように、正気を保つのが辛かったのだ。

 激しい獅子との交わりにリュセルの体は満足してようやく体を再び欠けさせ、眠りについたようだが……。

「後どの位これを繰り返すのだろうね、お前は」

 疲れたようにそう呟いたレオンハルトが驚きを隠せぬ程、リュセルの陰の日の症状は、今までに例を見ない程の重さ、異常さだった。こんなに強い症状を見せた神子というのを、見た事も聞いた事もない。
 最初の陰の日である上に、それがかなり遅れた事。元々が快楽に弱い事、体が満ちる時間が長い男神子である事や異世界に行っていた事。色々原因の予測はつくのだが……。

 レオンハルトは体の下に敷かれた被衣ごと横抱きにリュセルの体を抱き上げると、汚れた体を洗ってやる為、森の奥の泉へと戻った。



 その後もリュセルの体は満ちて熟れ、欠ける事はほとんどなく、レオンハルトと休む事なく交わり続けた。レオンハルトの姿はいつもの姿であったり、獅子の姿をとっていたり、今よりもっと年上の姿だったり、またまた年下の姿だったりした。

 ただ、女性の姿だけはとっていない。リュセルの体自体が、男のもので貫かれないと満足出来なくなっていたからだ。
 代わりに、症状がかなり落ち着いた三週目に突入した頃、ようやく少し正気が戻ってきていたリュセルの体を女のものにしてレオンハルトがその身を抱き、女としての処女も奪い、散らしたのである。

 女になったリュセルは、波打つ銀糸の髪が美しい、清楚で可憐な美女だった。

 しかし、リュセルが僅かなりでも正気を取り戻したのはその時だけで、後は再び快楽の奴隷になってしまったかのような状態だったので、リュセルが変化したのはその一度きりだ。

 それ程までに、陰の日の期間中、リュセルの体は満ちている時間が多かったのである。




「よお、リュセルの症状はどうだい?」

 そうして、ようやく様子を見にジュリナがやって来た頃、こちら側の時間の進み方で三週間が経ってしまっていた。

 夜の世界に彩られた陰の間に姿を現したジュリナは、宝主の正装衣装のまま、ソファで優雅に紅茶を飲んでいるレオンハルトにそう言って話しかける。

「こっちでは、どれ位時間が経ってるんだよ」

 レオンハルトと違い、普段着のままのジュリナは、ドッサリと幼なじみの向かいのソファに腰を下ろし、用意された紅茶を飲みながら尋ねた。

「今は四週目に入ったところだね」

「はあッ!? って事は、二十二日目って事かい?」

「ああ。日にちで言うと、そうだね」

 のん気にそう言うレオンハルトに驚きの目を向けたジュリナは、首を横に大きく振った。

「信じられない。そんなに陰の日の症状が長く続いたってのか?」

「信じられなくても、事実、リュセルの体は二十日間、陰の日”が続いていたのだよ。ほとんど体を欠けさせる事なく、ずっと満ちていた状態でね」

 本来七日前後で終わる陰の日が二十日間も続いたという事実だけでも異例なのに、ずっと体を満ちさせていたとは、考えられない話だ。

「じゃあ、あの子はずっと発情しっぱなしだったって事か? 体の欠ける期間は陰の日の休止期間のようなものだ。いくら私達女神子に比べて、お前達男神子の方が体の満ちる期間が多いとはいえ、下手すると体力もなくなるし、狂っちまうぞ」

「この部屋の管理人、レイデの木の化身の力を借りてそれは防ぐ事が出来た。……確かに、症状は今までの例を見ない程重かったが、もう大丈夫だろう」

 そう言うとレオンハルトは立ち上がり、少し離れた場所にある紺色の天蓋に覆われた寝台へとジュリナを導く。

「昨日眠りに入った。陰の日は終了したよ」

 寝台の上では、宝鍵の正装衣装を着た銀髪の青年が仰向けに横たわり、静かに眠っていた。苦しくないよう、帯は緩めに絞められ、被衣も葉冠も眠るのに邪魔な為、省略されてはいたが。

「症状があれだけ重かったからね。この昏睡状態もどの位続くのか予測もつかん」

 レオンハルトだったからこそ、重過ぎる陰の日の症状を発症させたリュセルの相手が務まったのだろう。普通の神子では、おそらく体力と気力がもたない。

 ようやく昨日からまともに眠る事が可能になったレオンハルトは、先程食事と湯あみを終えたばかりである。

「まあ、あっちはまだ数刻しか経っていない状態だからねぇ。お前は安心して、ここでリュセルが目覚めるのを待つがいいさ。少しこっちで休め。お前、試練の迷宮を出てから、休みなしで動き回っていただろうが」

 試練の迷宮で試練を終えた後、ドラゴンの森に消えたライサンを追って行き、そこでドラゴンとのいざこざに巻き込まれ、異世界にリュセルが消え、それを追う為の準備に奔走し、異世界にリュセルを迎えに行き、戻ったらリュセルが陰の日を発症させ、その相手をずっとしてきて……そして、現在に至る。

 確かに、全然休みがない状況が続いていた。

「そうだな、すまない」

 幼なじみの素直な言葉に小さく笑うと、ジュリナはリュセルの額に軽く口づけを落とす。そして、レオンハルトに一度手を振って、再び向こう側に戻って行った。

「休めるのは今の内だけかもしれぬぞ、リュセル」

 リュセルの静かな寝顔を覗き込み、そう呟いたレオンハルトは、ゆっくりとその唇に口づけを落とす。

 そういえば、情欲の伴わない触れるだけの口づけは、ずいぶんと久しぶりだった。



 その後、リュセルは三日三晩眠り続け、ようやく目を覚ましたのは、陰の日を迎えた日から、実に二十五日間が経ってからの事だった。
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