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第十六章 闇射す光
1-3 ドラゴン達への交渉
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「ここは、三千年前に起きた邪神と神子との決戦の地。”黎明の戦い”のあった場所なのだよ」
神殿の中でも最上位の神官巫女と一部の女神の子供(レオンハルトとジュリナ)しか知らぬ事実をあっさりと告げたレオンハルトに対し、知らなかったリュセル、ティアラ、ローウェン、アルティスは驚きの顔を向けた。
「確か、元々は山があったと聞いている。激しい戦いの余波を受け、山は大きく削られてなくなり、濃密な邪気の影響を受けた大地は砂漠化したと……。邪気は当時の神子達の浄化を受けてなくなったが、代わりに周囲を強い神気が漂うようになり、普通の人間には耐えられない場所になったらしい。セイントクロスの泉の周囲と似たような状況だとカルティア姫が言っていた」
前代の玉鍵の教えを口にしたレオンハルトに頷くと、アシェイラは言った。
「その通りだ。ものすごく神気の強い場所……。だからまさか、邪神の潜伏する空間の入口がここにあるとは誰も思わなかったんだなぁ。まあ、下手に近づく事も出来ないわけだし、ちょっと様子見に……なんて行けない場所だから、盲点になっても仕方ないといえば、仕方ないんだが」
そう言って、肩をすくめるアシェイラの言葉を引き継ぎ、今度はライサンがサンジェイラ王都を指差す。
「コールド砂漠には、アシェイラ王都よりもサンジェイラ王都の方が近いです。まずは、サンジェイラ王都に転移装置を使用して移動してもらい、そこからは、サンジェイラ支部の神官に既に連絡をしてありますので、彼らに案内を受けて下さい」
「……あれ? 確か、その周辺の領内って、サンジェイラ国側だと王家直轄地じゃなかった?」
ライサンの指示に皆が頷いていた中、ローウェンだけが首を傾げながら地図の場所を見ていて、ユリエに疑問に思ったそれを確認する。
「ええ、そうね。お兄様……王の御印を頂いて行けば、その周辺なら、王族や神子の身分を隠したままでもどこにでも行けるわ。それに、王族の一人を王の使者として連れて行けば、民の意識はそっちにいくからいい隠れ蓑になるんだけど……。暇そうなのがいたら、誰でもいいから連れて行くといいんじゃないかしら?」
さすが、王族の多い王家は言う事が違う。
リュセルが口元をヒクつかせている間にも、ユリエと同じように人数の多いサンジェイラ王族の中で育ったアルティスは姉の提案に頷く。
「そうよな。我らは従者か護衛という事にすればよいしな」
「この辺、田舎だしね~。だからといって、人がいない訳じゃないし。僕らだけでいくと目立つよね。いつもの任務みたいに二人だけならまだしも、今回神子が六人勢ぞろいしてるし。いくら変装眼鏡で変装するにしても限度があるよ。カモフラージュに一人、王族を連れて王家御一行様にしてしまう案はいいと思う。変に目立つなら最初から目立たせてしまえって感じ?」
サンジェイラ組の提案に、ジュリナも頷いて乗っかった。
「どのみち、コールド砂漠に入れるのは私達だけなんだから、安全な場所、近くの村にでも連れて来た王族の人間は待機させとけばいいだろう。出来れば、女の子じゃなく、男の方がいいかもねぇ」
危険が伴うかもしれない為、ある程度腕っぷしもいい人材がいい。
ジュリナの要望を受けたユリエは、小さな声で呟く。
「一人、打ってつけの馬鹿がいるけれど…………」
そう言いながら、リュセルとレオンハルトに視線を送ったユリエは、自分と同じ事を思ったであろうローウェンとアルティスが非常に微妙な表情をしている事に気づく。
「まあ、人材については、兄上に任せましょう。私からも一筆書いておくから、それを兄上に渡してね」
そんな風にユリエが締めくくってしまったから、他の者には、サンジェイラ組が思い浮かべた最適任者が誰なのかは分からずじまいだった。
「しかし、どうやって敵のアジトの入口のある場所を探し出したんだ?」
これからの計画を話し合った後、最も気になっていた事柄を口にしたリュセルの対し、三勇者は一瞬口を閉ざした。
「いずれ分かる事だから今教えるが、この情報を俺達に渡したのは、ジルとベルだ」
三人を代表して衝撃的な答えをアシェイラが告げると、リュセルは目を剥いた。
「はあッ!?」
大小、リアクションは様々だが、他の同胞達も同じように驚きを隠せないようだ。それもそのはず、リュセルの記憶が正しければ、あのドラゴン達とは最悪の別れ方をしている。
確かに、一度は向こう(邪神サイド)へと堕ちたらしいが、自分達の体と瞳をあんな風に利用されて、向こうに戻るつもりがあるはずもない事は分かる。ただ、だからといって、こちら(神子側)の味方になるはずがない。
ルークがライサンを選んだという事実がある限り、今まで通り中立の立場を貫くはずだと思っていた。事実、あの時彼らは、ドラゴンの森内にあるレイデの大木の内で世界の終りまで眠りにつくと言っていたのだ。
どうやって情報を聞きだしたのか?
「ドラゴン達には、”邪神の元まで神子達を導く”という約束……いや、契約をしている。表立っての協力はないが、必要な時に呼べば嫌々ながらも協力してくれるはずだ。」
アシェイラの言葉を黙って聞いていたレオンハルトだったが、彼は不意に厳しい表情のまま尋ねた。
「何を対価に支払った?」
「ッ!?」
その言葉を聞いたリュセルは、言葉を発した兄の横顔に目を向ける。
「あのような拗れ方をしたドラゴン達(彼ら)が、何の対価もなしにこちらに協力をしてくれるとは思えん」
レオンハルトの、嘘やごまかしを一切許さない厳しい視線を受けたアシェイラは、隣のライサンに目を向けた。ライサンはそれに頷くと穏やかな声音でそれを告げる。
「対価を支払うのはあなた方でも私達でもありません。ドラゴン達と契約したのは、ルークなのです」
そう言うと、ライサンはつい先程の出来事、まだ一刻程しか経っていないドラゴンの森で起きた事を思い出していた。
「協力しろ……だと?」
再三の呼びかけにようやく答え、レイデの大木の中から出てアシェイラの前にようやく姿を現したジルは、その顔に不愉快そうな表情を浮かべた。
「よくもぬけぬけとそんな事が言えるな、お前達は」
今だ具合の悪いらしいベルは姿を現さなかった。
「敵の居所を知っているんだろう? お前達は」
アシェイラの言葉に顔をしかめたジルだったが、彼の後ろにいるルークとライサンに目を移し、口元をゆがめる。
「ああ。知っているが、お前達に教えるつもりはない。それともルーク、お前がその男を選んだ事を取り消して俺達の元に来るのなら協力してやってもいい」
ジルの提案に対し、何故か目の下の隈をひどくしたルークはピクリと反応し、ライサンがそんな彼を庇うように動く。
「それは出来ない。俺が選んだのは、この、どうしようもない阿呆タレだ」
ズキズキと痛むこめかみを抑えながらそう言ったルークは、相手の具合の悪そうな様子を怪訝に思ったらしいジルを睨み見た。
二日酔いにも似た酷い頭痛の影響を受けて、元々悪かったルークの目付きは現在なかなか凶悪なものになっている。
ルークのあまりの凶悪顔に、ドラゴンであるジルは一瞬圧倒されてしまい、少し後ずさりをした。
(剣鍵様の陰の日の余波で、現在ルークの体調は最悪ですからねぇ)
ジルの様子を見ていたライサンはそう思いながら、立っているのも辛いであろうルークの体を心配する。かなり頭痛が酷いらしく、痛み止めも効いていないらしい。その上、近くで吸い込んだ陰の日特有の香りを抜けさせる為に、昨夜ルークはかなり手荒くライサンに抱かれている。何度もライサンを受け入れて何度も何度も達した体は、歩くのも立っているのも辛いだろう。
それを気力で抑え、ここまで歩いて来たのである。ドラゴン達が自分にしか心を開かぬであろう事を知っているから。
ルークの首筋にライサンが残した痕を見てしまったジルは、ベルのような怒りの表情は見せる事はないが、複雑そうな顔をして顔を逸らした。
「俺は、お前達と番となって子を残す事は出来ない。だが、俺一人の血を使ってなら、あの卵の孵化を試す事は出来る」
顔を逸らしたジルに構う事無く、ルークは自分の提案を口にする。
「……!?」
それを聞いたジルはルークに視線を戻す。すると、挑むような凶悪な褐色の瞳が彼を射抜いた。
「もちろん、俺だけの血ではドラゴンの要素は薄いだろうからな。孵化するかは分からない。だが、試してみる価値はあるだろう?」
ルークの言葉に心を動かされたジルは、ゴクリと生唾を飲み込むと静かな声で尋ねた。
「何を求める? それだけの対価では多くは望めないぞ」
「構わん。神子様方を邪神の元へと導く事。それだけをしてくれればいいさ」
共に戦う事までは求めない。強力なバックアップもいらない。邪神の元へと導く事。それだけを求めた相手にジルは頷いた。
「分かった、契約しよう。俺達は神子達を邪神の元へと導く。代わりに君は……」
「すべてが終わった暁には、あの石の卵。最後のドラゴンの卵の孵化を試してやる」
邪神との戦いが終結し、世界が残ったら、残された最後の卵にルークの血を注ぐ事を約束し、こうしてドラゴン達との契約は成ったのだった。
神殿の中でも最上位の神官巫女と一部の女神の子供(レオンハルトとジュリナ)しか知らぬ事実をあっさりと告げたレオンハルトに対し、知らなかったリュセル、ティアラ、ローウェン、アルティスは驚きの顔を向けた。
「確か、元々は山があったと聞いている。激しい戦いの余波を受け、山は大きく削られてなくなり、濃密な邪気の影響を受けた大地は砂漠化したと……。邪気は当時の神子達の浄化を受けてなくなったが、代わりに周囲を強い神気が漂うようになり、普通の人間には耐えられない場所になったらしい。セイントクロスの泉の周囲と似たような状況だとカルティア姫が言っていた」
前代の玉鍵の教えを口にしたレオンハルトに頷くと、アシェイラは言った。
「その通りだ。ものすごく神気の強い場所……。だからまさか、邪神の潜伏する空間の入口がここにあるとは誰も思わなかったんだなぁ。まあ、下手に近づく事も出来ないわけだし、ちょっと様子見に……なんて行けない場所だから、盲点になっても仕方ないといえば、仕方ないんだが」
そう言って、肩をすくめるアシェイラの言葉を引き継ぎ、今度はライサンがサンジェイラ王都を指差す。
「コールド砂漠には、アシェイラ王都よりもサンジェイラ王都の方が近いです。まずは、サンジェイラ王都に転移装置を使用して移動してもらい、そこからは、サンジェイラ支部の神官に既に連絡をしてありますので、彼らに案内を受けて下さい」
「……あれ? 確か、その周辺の領内って、サンジェイラ国側だと王家直轄地じゃなかった?」
ライサンの指示に皆が頷いていた中、ローウェンだけが首を傾げながら地図の場所を見ていて、ユリエに疑問に思ったそれを確認する。
「ええ、そうね。お兄様……王の御印を頂いて行けば、その周辺なら、王族や神子の身分を隠したままでもどこにでも行けるわ。それに、王族の一人を王の使者として連れて行けば、民の意識はそっちにいくからいい隠れ蓑になるんだけど……。暇そうなのがいたら、誰でもいいから連れて行くといいんじゃないかしら?」
さすが、王族の多い王家は言う事が違う。
リュセルが口元をヒクつかせている間にも、ユリエと同じように人数の多いサンジェイラ王族の中で育ったアルティスは姉の提案に頷く。
「そうよな。我らは従者か護衛という事にすればよいしな」
「この辺、田舎だしね~。だからといって、人がいない訳じゃないし。僕らだけでいくと目立つよね。いつもの任務みたいに二人だけならまだしも、今回神子が六人勢ぞろいしてるし。いくら変装眼鏡で変装するにしても限度があるよ。カモフラージュに一人、王族を連れて王家御一行様にしてしまう案はいいと思う。変に目立つなら最初から目立たせてしまえって感じ?」
サンジェイラ組の提案に、ジュリナも頷いて乗っかった。
「どのみち、コールド砂漠に入れるのは私達だけなんだから、安全な場所、近くの村にでも連れて来た王族の人間は待機させとけばいいだろう。出来れば、女の子じゃなく、男の方がいいかもねぇ」
危険が伴うかもしれない為、ある程度腕っぷしもいい人材がいい。
ジュリナの要望を受けたユリエは、小さな声で呟く。
「一人、打ってつけの馬鹿がいるけれど…………」
そう言いながら、リュセルとレオンハルトに視線を送ったユリエは、自分と同じ事を思ったであろうローウェンとアルティスが非常に微妙な表情をしている事に気づく。
「まあ、人材については、兄上に任せましょう。私からも一筆書いておくから、それを兄上に渡してね」
そんな風にユリエが締めくくってしまったから、他の者には、サンジェイラ組が思い浮かべた最適任者が誰なのかは分からずじまいだった。
「しかし、どうやって敵のアジトの入口のある場所を探し出したんだ?」
これからの計画を話し合った後、最も気になっていた事柄を口にしたリュセルの対し、三勇者は一瞬口を閉ざした。
「いずれ分かる事だから今教えるが、この情報を俺達に渡したのは、ジルとベルだ」
三人を代表して衝撃的な答えをアシェイラが告げると、リュセルは目を剥いた。
「はあッ!?」
大小、リアクションは様々だが、他の同胞達も同じように驚きを隠せないようだ。それもそのはず、リュセルの記憶が正しければ、あのドラゴン達とは最悪の別れ方をしている。
確かに、一度は向こう(邪神サイド)へと堕ちたらしいが、自分達の体と瞳をあんな風に利用されて、向こうに戻るつもりがあるはずもない事は分かる。ただ、だからといって、こちら(神子側)の味方になるはずがない。
ルークがライサンを選んだという事実がある限り、今まで通り中立の立場を貫くはずだと思っていた。事実、あの時彼らは、ドラゴンの森内にあるレイデの大木の内で世界の終りまで眠りにつくと言っていたのだ。
どうやって情報を聞きだしたのか?
「ドラゴン達には、”邪神の元まで神子達を導く”という約束……いや、契約をしている。表立っての協力はないが、必要な時に呼べば嫌々ながらも協力してくれるはずだ。」
アシェイラの言葉を黙って聞いていたレオンハルトだったが、彼は不意に厳しい表情のまま尋ねた。
「何を対価に支払った?」
「ッ!?」
その言葉を聞いたリュセルは、言葉を発した兄の横顔に目を向ける。
「あのような拗れ方をしたドラゴン達(彼ら)が、何の対価もなしにこちらに協力をしてくれるとは思えん」
レオンハルトの、嘘やごまかしを一切許さない厳しい視線を受けたアシェイラは、隣のライサンに目を向けた。ライサンはそれに頷くと穏やかな声音でそれを告げる。
「対価を支払うのはあなた方でも私達でもありません。ドラゴン達と契約したのは、ルークなのです」
そう言うと、ライサンはつい先程の出来事、まだ一刻程しか経っていないドラゴンの森で起きた事を思い出していた。
「協力しろ……だと?」
再三の呼びかけにようやく答え、レイデの大木の中から出てアシェイラの前にようやく姿を現したジルは、その顔に不愉快そうな表情を浮かべた。
「よくもぬけぬけとそんな事が言えるな、お前達は」
今だ具合の悪いらしいベルは姿を現さなかった。
「敵の居所を知っているんだろう? お前達は」
アシェイラの言葉に顔をしかめたジルだったが、彼の後ろにいるルークとライサンに目を移し、口元をゆがめる。
「ああ。知っているが、お前達に教えるつもりはない。それともルーク、お前がその男を選んだ事を取り消して俺達の元に来るのなら協力してやってもいい」
ジルの提案に対し、何故か目の下の隈をひどくしたルークはピクリと反応し、ライサンがそんな彼を庇うように動く。
「それは出来ない。俺が選んだのは、この、どうしようもない阿呆タレだ」
ズキズキと痛むこめかみを抑えながらそう言ったルークは、相手の具合の悪そうな様子を怪訝に思ったらしいジルを睨み見た。
二日酔いにも似た酷い頭痛の影響を受けて、元々悪かったルークの目付きは現在なかなか凶悪なものになっている。
ルークのあまりの凶悪顔に、ドラゴンであるジルは一瞬圧倒されてしまい、少し後ずさりをした。
(剣鍵様の陰の日の余波で、現在ルークの体調は最悪ですからねぇ)
ジルの様子を見ていたライサンはそう思いながら、立っているのも辛いであろうルークの体を心配する。かなり頭痛が酷いらしく、痛み止めも効いていないらしい。その上、近くで吸い込んだ陰の日特有の香りを抜けさせる為に、昨夜ルークはかなり手荒くライサンに抱かれている。何度もライサンを受け入れて何度も何度も達した体は、歩くのも立っているのも辛いだろう。
それを気力で抑え、ここまで歩いて来たのである。ドラゴン達が自分にしか心を開かぬであろう事を知っているから。
ルークの首筋にライサンが残した痕を見てしまったジルは、ベルのような怒りの表情は見せる事はないが、複雑そうな顔をして顔を逸らした。
「俺は、お前達と番となって子を残す事は出来ない。だが、俺一人の血を使ってなら、あの卵の孵化を試す事は出来る」
顔を逸らしたジルに構う事無く、ルークは自分の提案を口にする。
「……!?」
それを聞いたジルはルークに視線を戻す。すると、挑むような凶悪な褐色の瞳が彼を射抜いた。
「もちろん、俺だけの血ではドラゴンの要素は薄いだろうからな。孵化するかは分からない。だが、試してみる価値はあるだろう?」
ルークの言葉に心を動かされたジルは、ゴクリと生唾を飲み込むと静かな声で尋ねた。
「何を求める? それだけの対価では多くは望めないぞ」
「構わん。神子様方を邪神の元へと導く事。それだけをしてくれればいいさ」
共に戦う事までは求めない。強力なバックアップもいらない。邪神の元へと導く事。それだけを求めた相手にジルは頷いた。
「分かった、契約しよう。俺達は神子達を邪神の元へと導く。代わりに君は……」
「すべてが終わった暁には、あの石の卵。最後のドラゴンの卵の孵化を試してやる」
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