【宝の鍵~金の王子と銀の王子~】本編 元平凡女性のイケメン王子は執着心強めな兄に溺愛される

月城はな

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第十六章 闇射す光

3-1 美しき花の街

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 街に到着すると同時に案内された邸はこの街一番の豪邸で、街の代表者が住む邸との事だ。その邸内でも最も豪華な客室に案内されたリュセル達は、街の代表者の歓迎を受けていた。

「ようこそお越し下さいました。レイン様」

 美しき花の街、ビゼンテの代表を名乗る女性はそう言って、急に視察に訪れた王弟に頭を下げた。

 年の頃三十代後半といった感じのその女性。スラリと背が高く、黒色をした髪はシンプルな形で背後でまとめられている。着ている小袖もシンプルな絵柄のもので、色も地味だ。仕事の出来そうな女性の印象を受ける。

「昨年より父からビゼンテの代表を受け継ぎました、カランと申します。滞在中、何か不都合な事がございましたら、何でも私にお申し付け下さい」

「ああ、世話になる」

 今までの彼なら、美人のキャリアウーマンなど目にしたら口説き文句の一つでも口にしたであろうに、レインはカランの言葉に小さく笑ってそう答えただけだった。

 旅の間、ローウェンとアルティスの協力の元、十分な睡眠と食事で、いつもの体力と気力を取り戻したらしいレインは、前のようにリュセル達女神の子供の美貌を褒め称えるようになったが、口説く事はなくなっていた。彼が変わった事を、リュセルは認めざるを得なかったのである。

 従者として、アルティスと共にレインの背後に控えていたリュセルは、カランが窓の外に目を向けるのをなんとなく眺めていた。

「滞在がもっと遅ければ、ルリカの花も満開で見頃を迎えていたのでしょうが。残念ですわ」

 あれでまだ、満開ではなかったのか。

 街の周囲に咲き乱れているピンク色の美しい花々にうっとりと見入ってしまっていただけに、その言葉に驚いてしまう。

「かの有名なディエラ国の麗しの花の街、テルカーナには及ばないでしょうが、このビゼンテも花の街として美しいと評判なんですよ。かつて王女としてサンジェイラ王家にいらしたルリカ姫が、この街にルリカの花を植えたのが始まりだと父から聞いております」

 四季折々に様々な花を咲かせるという花の街、テルカーナの事は、行ったことはないが、リュセルもよく知っている。ディエラ国の有名な観光スポットだからだ。同じ花の街でもテルカーナのようにたくさんの種類の花が咲き乱れるのではなく、ビゼンテはルリカの花一種類のみなのだという。

「王族の管理者がレティシア様に代わってから、レティの花も植えようかと話が上がったそうなのですが、レティシア様自身がそれに反対なさったようです。ルリカの花だから、この街は美しいのだとおっしゃって……」

「はは、義母上らしいな」

 レインの言葉にカランは笑うと、今後の予定を話し出した。

「今宵はレイン様歓迎の宴をご用意しております。それまではゆっくりとお寛ぎ下さいませ」

 そうして、ゆっくりと一礼して部屋を退室して行った。

「ふう~~~~」

 それまでのロイヤルスマイルはどこへやら。急に長椅子(ソファ)で寛ぎ出したレインは、怠惰に横になり、傍に立つリュセルとアルティスを見上げる。

「今夜行くのか?」

 それにリュセルは頷き答えた。

「ああ」

「宴に従者の一人も伴わないで参加する王族ってどうよ。まったく、誤魔化すのが大変そうだねぇ」

 レインの軽口に今度はアルティスが答える。

「そこは、無駄に高い兄上の演技力でカバーされよ」

「はいはい」

 そう返答を返しながら、テーブルの上に用意された果物の器から葡萄を一粒取ると、レインは無造作にそれを口に運び入れる。

「じゃ、俺はここ(ビゼンテ)でしばらく待っているから、さっさと用事済ませて帰って来いよ」

 彼らが向かう先の事を考えると、戻っては来ないかもしれない。しかし、レインはその事を一切口には出さずに軽い口調でそのように告げる。

 その不器用さにリュセルが苦笑をこぼした時、室内にレイン付きの侍女に扮したティアラとローウェンが入室して来た。

「アル、リュセル兄さん。レオンハルト兄さんとジュリナ姉さんが今後の相談をするってさ」

「ああ」

 それを聞いたリュセルはレインの方に目を向ける。レインはリュセルの視線の意味を正しく理解したのか、小さく欠伸を漏らしながら言った。

「この部屋を好きに使えよ。俺は疲れたから宴の時間まで少し寝てるわ」

 肩を小さくすくめて寝室に消えて行ったレインの背に、リュセルは礼を言う。

「ありがとう、レイン殿」

 それにレインは片手を軽く上げる事で答えた。

 そうして、その後、周辺の地理を確認していたレオンハルトとジュリナ、それにトリスラムが戻ると、コールド砂漠までの道のりを話し合ったのだった。

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