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第六章 北の神童
3-3 アシェイラ城厨房立てこもり事件③
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すぐさまカイルーズに突っ込まれたが、ジェイドは素早い動きで部屋を飛び出したのだった。
「に…………、逃げられた!」
カイルーズはそう叫ぶと、逃げたジェイド王を追って、すぐさま執務室を飛び出す。
「私も参ります」
最近、執務室にこもってばかりいたから、きっといい運動になるだろうと、カイルーズを止めもせず、カイエも部屋を飛び出した。
「あははははは、ここだよ~、カイル! ここまでおいで~~~~~(笑)」
「待てよ~、こいつめ~…………って違う! 父上、仕事に戻って下さいいいいいい!」
素早い動きでスキップをする国王を、怒鳴りながら追いかける王位継承者……。廊下を行き交う使用人達は、この異様な光景を見ない振りをする事にした。
「平和だなあ」
その後を、のん気に王位継承者の側近が、早歩きでついて行く。しかし、そんな平和な光景も、たどり着いた厨房から響いた叫び声を耳にした途端、凍りついたのだった。
「きゃあああああああっ」
鋭い女性の叫び声を聞いて、それまでふざけていたジェイドは、一瞬で表情を引き締めると、厨房の中へと飛び込んで行く。……そして。
「な……」
そこで目にした光景は、悲惨なものだった。
血に濡れたナイフを持った、二十代半ば位の年齢の男が、侍女らしき女性を盾にして、周りにいた使用人達を威嚇していたのである。盾にされた女性の腹部からは血が溢れ、白いエプロンの上に赤い染みが広がっていく。
「ち、父上、これは!」
遅れて入ってきたカイルーズが驚愕に目を見開くと、ジェイドはそれに小さく頷いた。
「来るな……、く、来るんじゃねぇ!」
男の目は、灰色に濁りきっている。
「この男、ルルドの葉の中毒症状をおこしています、父上。…………ってな、な、な、なな、何してるんですか!」
着ていたTシャツを脱いで、いきなり上半身裸になったジェイドが、ゆっくりと男に近寄っていくのを見たカイルーズは、あまりの事態に度肝を抜かれてしまう。
「さあ、私は丸腰だ。人質の交換といこうじゃないか。そのままでは、その女性は死んでしまうよ」
「く、くくく、くく来るな!」
完全に気がおかしくなってしまっている男に近づいていく父王を、カイルーズは心の中で罵倒した。
(こんの、馬鹿王がああああ!)
「ああ。上を脱いだだけでは信用できないかい?わかった、下も脱ごう」
そう言って、履いていた柄パンを脱いだジェイドは、ふんどし一枚という姿になると、男に更に近づいていく。そして、ジェイドが丸裸に近い姿になった為、男は、気を失い、人質としては面倒な状態になった女性から、人質をジェイド王に交換する事を渋々承諾した。
相手がこの国の最高権力者である事など、まったく気づいていない男は、ジェイドにナイフを向け、抱えていた女を解放する。
「私が残るんだから、他の者を解放してはもらえないかね? これだけの人数がいると面倒だろう?」
ジェイド王の言葉に男が頷くのを見た瞬間、カイルーズはその場にいる者達に命令した。
「皆、この部屋を出ろッ!」
命令する事に慣れたその声に、抗う事など出来はしない。
厨房にいた者達は、蜘蛛の子を散らすように、一気に出口を目指して我先にと走り始めた。カイエも、倒れた女性を抱えて、部屋を飛び出す。そんな惨状だった為に気づかなかった。
カイルーズが厨房に残ったままだという事に……。
使用人達が出て行って、急に静かになった厨房内に、のん気なジェイドの声が響いた。
「カイル、なんで残っちゃったのさ」
「父上を置いていけません」
きっぱりとそう言い切ったカイルーズに対し、ジェイド王は低く唸る。
「でも、パパとカイルが両方共ここに残ったら、誰がこの事態を収拾するの?」
まさしく、その通りである……。
「と、いう訳なんです」
説明を終えたカイエがむせび泣くのを、リュセルは遠い目をしながら見ていた。
まったくもって、馬鹿親子である。
「国を預かる直系の王族として、その行動ってど~な訳? ダメでしょ、自分は一番安全な所にいなくちゃ。使用人達の代わりはいても、王や王位継承者の代わりはいないんだし」
冷静にそう言ったローウェンは、さすがだった。
確かに、その通りだ。彼らがとった行動は軽率過ぎて、決して王族としていいものではない。
でも、これだけは言える。
リュセルはふと、不敵に笑うと言った。
「でも、俺は、そんなどうしようもない父上とカイルーズを誇りに思うぞ」
「に…………、逃げられた!」
カイルーズはそう叫ぶと、逃げたジェイド王を追って、すぐさま執務室を飛び出す。
「私も参ります」
最近、執務室にこもってばかりいたから、きっといい運動になるだろうと、カイルーズを止めもせず、カイエも部屋を飛び出した。
「あははははは、ここだよ~、カイル! ここまでおいで~~~~~(笑)」
「待てよ~、こいつめ~…………って違う! 父上、仕事に戻って下さいいいいいい!」
素早い動きでスキップをする国王を、怒鳴りながら追いかける王位継承者……。廊下を行き交う使用人達は、この異様な光景を見ない振りをする事にした。
「平和だなあ」
その後を、のん気に王位継承者の側近が、早歩きでついて行く。しかし、そんな平和な光景も、たどり着いた厨房から響いた叫び声を耳にした途端、凍りついたのだった。
「きゃあああああああっ」
鋭い女性の叫び声を聞いて、それまでふざけていたジェイドは、一瞬で表情を引き締めると、厨房の中へと飛び込んで行く。……そして。
「な……」
そこで目にした光景は、悲惨なものだった。
血に濡れたナイフを持った、二十代半ば位の年齢の男が、侍女らしき女性を盾にして、周りにいた使用人達を威嚇していたのである。盾にされた女性の腹部からは血が溢れ、白いエプロンの上に赤い染みが広がっていく。
「ち、父上、これは!」
遅れて入ってきたカイルーズが驚愕に目を見開くと、ジェイドはそれに小さく頷いた。
「来るな……、く、来るんじゃねぇ!」
男の目は、灰色に濁りきっている。
「この男、ルルドの葉の中毒症状をおこしています、父上。…………ってな、な、な、なな、何してるんですか!」
着ていたTシャツを脱いで、いきなり上半身裸になったジェイドが、ゆっくりと男に近寄っていくのを見たカイルーズは、あまりの事態に度肝を抜かれてしまう。
「さあ、私は丸腰だ。人質の交換といこうじゃないか。そのままでは、その女性は死んでしまうよ」
「く、くくく、くく来るな!」
完全に気がおかしくなってしまっている男に近づいていく父王を、カイルーズは心の中で罵倒した。
(こんの、馬鹿王がああああ!)
「ああ。上を脱いだだけでは信用できないかい?わかった、下も脱ごう」
そう言って、履いていた柄パンを脱いだジェイドは、ふんどし一枚という姿になると、男に更に近づいていく。そして、ジェイドが丸裸に近い姿になった為、男は、気を失い、人質としては面倒な状態になった女性から、人質をジェイド王に交換する事を渋々承諾した。
相手がこの国の最高権力者である事など、まったく気づいていない男は、ジェイドにナイフを向け、抱えていた女を解放する。
「私が残るんだから、他の者を解放してはもらえないかね? これだけの人数がいると面倒だろう?」
ジェイド王の言葉に男が頷くのを見た瞬間、カイルーズはその場にいる者達に命令した。
「皆、この部屋を出ろッ!」
命令する事に慣れたその声に、抗う事など出来はしない。
厨房にいた者達は、蜘蛛の子を散らすように、一気に出口を目指して我先にと走り始めた。カイエも、倒れた女性を抱えて、部屋を飛び出す。そんな惨状だった為に気づかなかった。
カイルーズが厨房に残ったままだという事に……。
使用人達が出て行って、急に静かになった厨房内に、のん気なジェイドの声が響いた。
「カイル、なんで残っちゃったのさ」
「父上を置いていけません」
きっぱりとそう言い切ったカイルーズに対し、ジェイド王は低く唸る。
「でも、パパとカイルが両方共ここに残ったら、誰がこの事態を収拾するの?」
まさしく、その通りである……。
「と、いう訳なんです」
説明を終えたカイエがむせび泣くのを、リュセルは遠い目をしながら見ていた。
まったくもって、馬鹿親子である。
「国を預かる直系の王族として、その行動ってど~な訳? ダメでしょ、自分は一番安全な所にいなくちゃ。使用人達の代わりはいても、王や王位継承者の代わりはいないんだし」
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確かに、その通りだ。彼らがとった行動は軽率過ぎて、決して王族としていいものではない。
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