【宝の鍵~金の王子と銀の王子~】本編 元平凡女性のイケメン王子は執着心強めな兄に溺愛される

月城はな

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第八章 暁を呼ぶ者

4-3 遊廓へ……

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*****



「なんだかな~」

 リュセル達が自分達の後を追い、城を出ようとしている事などまったく気づいていないローウェン一行は、荒廃したサンジェイラ王都の街中を歩いていた。

 冒頭の台詞を吐き、遊び人風レインがため息をついて見やる先では、客という設定のレインを放置して、遊女姿のローウェンとアルティスが仲良く手と手を取り合い、身を寄せ合って歩いていた。

「まかせて、アルは絶対に僕が守るから!」

 そう言って、眼鏡(変装眼鏡)の奥、右の瞳をキランと光らせ、そう言った可愛い系遊女姿のローウェンに対し、やはり、同じ眼鏡をかけた、綺麗&お色気系遊女姿のアルティスが嬉しそうに頷く。

「あい、わかった。頼もしいぞ、ロー」

「えへへへ」

 照れたように頭をかいているローウェン。当然の如く、二人に緊張感はまるでない。

 目立たない為に変装までしたというのに、客を放って、遊女同士でいちゃついてるもんだから、逆に目立っていた。

 こんな状態だから、街中(まちなか)を歩く者自体は少ないのだが、質の悪そうなゴロツキがニヤニヤと好色そうな笑みを浮かべ、二人の弟の横を何度も通り過ぎていた。それを見ていたレインは、仕方なく、ローウェンとアルティスの間に入り込み、二人の肩に腕を回す。
 非難めいた二対の瞳に見返されるが、レインは感謝されこそすれ、恨まれる覚えはないと思いながら小声で言った。

「お前ら、何の為にそんな格好してると思ってんだ? 今、逆に目立ってんぞ。いいから、ちゃんと演技しろ」

 珍しく的を射たレインの言葉に納得したのか、渋々二人は従った。

「どうでも良いが、愚兄に指摘されると、何故か非常に腹が立つ」

 アルティスは小声で辛らつにそう言い放つと、言葉とは裏腹な仕草で、レインの左腕に腕を絡めて甘えるように兄の肩にしな垂れかかった。

「同感だよ、愚兄」

 ローウェンもそう頷くと、レインの右腕にしがみついて抱きつく。

「アルティス、俺の事を愚兄と呼ぶのはやめろ。ローウェンが真似してるじゃないか」

 一応、兄らしくアルティスに注意をしたレインに、当のアルティスは妖艶に微笑んで頷いた。

「わかった。すまなかったな、愚兄」

「……」

「愚兄愚兄愚兄愚兄愚兄」

 アルティスの台詞を聞いて黙り込んだレインに対する、ローウェンの止めの連発攻撃が痛かった。



 そうして、しばらくして、王都の西の外れにある深紅の門をくぐり抜けると、周りは遊郭だらけになった。門の外の荒廃した街並みと違って、ここはまだ賑わっている。

 いや、賑わっているように見えた。

 ここにも、ルルドの葉の暗い影響は出ている。少し路地裏に入ると麻薬の影響で廃人になった者達や、死した者達の遺体があふれかえっていたのだ。

 だが、表向き、客引きの遊女や煩悩にあふれた男達で賑わう歓楽街は賑やかさを装い、その妖しさは健在だった。

 レインは物珍しげにキョロキョロと周りを見回すローウェンの頭を押さえつつ、この歓楽街の一番奥にある店の敷居をくぐり、出迎えた中年の女に言った。

「ジェイラを指名したい」

 レインの言葉に女ははっとしたような顔をすると、すぐに真剣な面持ちで頷く。

「こちらへ」

 女の案内を受けて店の奥に進むと、しどけなく肌を露出させた遊女達が、廊下を進む遊び人の格好をした端正な顔立ちの青年と見覚えのない若い遊女達を物珍しげにジロジロと見つめてきた。

「こちらでお待ち下さい」

 そう言って座敷に三人を通すと、女は去って行く。

「……?」

 ローウェンは通された座敷の中を見回して興味津々になり、探検する事にした。

「ローウェン、あまりうろつくなよ」

「わかってるよ~」

 レインの注意の言葉に頷きながらも、奥の襖をバーンッと開けて首を傾げた。

 深紅の寝具の上に、枕が二つ。

「ねえねえ、レイン兄上~!」

 とりあえず待つ事にしたらしいアルティスが座敷の座布団の上に座り、用意された酒に手を伸ばすのを目の端に入れていたレインは自分も飲む事する。

「なんだ~?」

 手酌で一口飲んでから手招きするローウェンに近寄ると、弟は純粋な目を向けて疑問を口にしてきた。

「ここって宿なの? 寝具が用意されてるケド」

「…………ちょい待て。お前、ここがどんな所だか知らんでついてきたのか?」

「だから、お宿でしょ?」

 ローウェンの答えを聞いたレインはため息をつきたくなった。

 純粋培養。汚れなき天使だ。

「あのなあ」

「?」

 純真な瞳で見上げてくるローウェンを見下ろし、次の瞬間、レインは口を噤むと、弟の華奢な体を布団の上に押し倒した。

「きゃあっ!」

 いきなりの事に悲鳴を上げたローウェンの右足の膝裏を掴み、ぐいっと大きく開かせる。

「実地で教えてやろうか?」

 冗談でそう言ったレインにローウェンはきょとんとする。

「何を?」

「何って。あれだよ、あれ、あれあれ」

「??????? そんな熟年夫婦の夫のような言い方をされても、僕、わかんないんだケド」

 レインの濁すような言い方を聞いたローウェンは、首を傾げながらそう返した。

「……これならどうだ!」

 強敵(?)の切り替えしに対し、意地になったレインは、その着物の合わせの部分を一気に左右に寛げた。

 白く細いローウェンの鎖骨と薄い胸元がさらされる。

「僕のない胸なんて見て、楽しい?」

 冷静なローウェンの言葉に、レインは脱力して弟の上に崩れ落ちた。

「お前……、俺がリュセル王子を手篭め(?)にしようとした時、あんなに怒っていたじゃないか。あれは、俺が彼にしようとした事をわかってて、怒ったんじゃないのか?」

「……? リュセル兄さんを裸にして辱めようとしたんでしょ?」

 そうそう。裸にして、そのまま犯してしまうつもりでした。

「裸にされたら恥ずかしいよ。いくらリュセル兄さんが綺麗だからって、裸にしたら駄目だよ。今度やったら、僕、許さないからね」

 やはり、何か勘違いをしていた。

「ローウェン。……お前」

 レインに憐憫のこもった目で見下ろされ、ローウェンは眉をひそめた。

「何、その目。なんかむかつく」

 次の瞬間、ローウェンの上にあったレインの体が強い衝撃を受けて横になぎ倒される。

「アル?」

 倒れたローウェンの前に立っていたアルティスは、何故か片手に掃除用のモップを持っていたのだった。
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