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第九章 怪盗イチゴミルク
7-1 王子と怪盗の変装
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「あっちだ!」
「くそっ、イチゴミルクめ!」
城内警護にあたっていた騎士達は怪盗にまんまと城内に侵入されてしまい、汚名返上の為、躍起になって怪盗イチゴミルクを追っていた。
だが、例え頭に血が上っていたとしても、動きに一切の乱れがないのは、総指揮をとっているレオンハルトの指示の賜物か。
回廊を通過する騎士達の声が遠ざかるのを知ると、黒タキシードを着込み、月の美貌を半分仮面で隠したリュセルは、回廊近くの小部屋の掃除用物入れの中からメイド服姿のミルフィンと共に出てきた。
「ふう、窮屈だったな」
「そうですわね」
でも、ミルフィンとしては、リュセルと密着出来た(掃除用具入れの中でだが)この時間は、至福の時に他ならなかった。
吐息がかかる程近くにある美貌を見上げ、またしても鼻血が流れる。
「しかし、本当に付け入る隙がまるでなしだ。これでは獲物の元まで近寄れないぞ」
「誘導作戦は昨夜使ってしまいましたし、同じ手にレオンハルト王子が引っかかるとは思えませんわ」
う~んと、悩むように鼻をハンカチで押さえながらそう言った、ミルフィンのメイドコスプレを何気なしに目を向けたリュセルは呟いた。
「仕方ない……。変装するか」
*****
その日、彼は初めての任務に緊張していた。
先日ようやく、騎士見習いから一人前の騎士になったばかりの、新米騎士である。
まだ十七歳と年若い彼は、城内警護及び怪盗捕獲という、初めてにしては重大な任務を受け、他の騎士達と共に城内に侵入したという怪盗イチゴミルクを探索しながら手に汗を握っていたのだ。
カタンッ
レオンハルト王子の指示通り、三~四人でパーティを組み、行動していたのだが、不意に聞こえた小さな音に彼だけが気づいた。
「あ、あの……」
急いで他の先輩騎士達に伝えようとするが、皆、周りを警戒しながらさっさと先に行ってしまう。
(どうしよう)
先輩達の後を追って行こうかとも思ったが、物音のした部屋が気になる。
(よし!)
彼は決意したように小さく頷くと、物音の聞こえた回廊横のその小部屋の扉を開けた。
ギィ……
扉が少し軋むような音を立てる。
ここは本来、道具部屋になっているようだった。色々な用途に使えそうな道具類や掃除用具などが、きちんと整理整頓されて片づけられていた。
アシェイラ城の使用人のレベルの高さが伺える程である。
「だ、誰かいるのか?」
若干震えてしまっている声を出しながら呼びかけるが、返ってくるのは冷たい沈黙だ。
「いないのか」
気の所為かとホッとしかけた瞬間、いきなり掃除用具入れが開かれ、中から出てきた人物に口を塞がれる。
「っ~~~~~!?」
いきなりの事に恐慌状態になりかけながらも腰に帯びた剣を抜き放とうとして、彼は動きを止めた。
目の前に現れた、その青年の顔を見てしまったからだ。
「しい、静かに……」
仲間内でも背の高い自分と同等位なので、長身の部類に楽々入るであろう青年はそうささやくと、ふと小さく瞬きをした。
長い、銀色をしたまつ毛が揺れるのを、呆然と眺める事しか出来ない。
それ程に、その青年は美しかった。……一瞬、息をするのも忘れる程に。ただただ、目の前に在る神聖的な美に見入る事しか出来ない。
すべてを忘れ、思った。
ああ。こんなに美しいものが、この世に……と
「…………あ、あなたは人間ですか? それとも……、か、神ですか?」
つい、震える声で尋ねた自分に青年は首を傾げると言った。
「まあ、今は怪盗だな」
甘く響く声を最後に、彼の意識は闇に沈んだ。
「ちょうどいい、大きさだ。」
自分達のいる小部屋に誘い出し、気絶させた騎士から軍服を脱がせ、それを着込んだリュセルは、そう呟いた。
「素敵ですわ~、リュセル王子殿下」
あまりにも凛々しい姿。ミルフィンはうっとりと見惚れるしかない。
アシェイラ国に仕える騎士の制服とも言えるそ漆黒の軍服は、リュセルに似合いすぎる程、似合っていたのである。
煌く銀の髪との対比が幻想的で、その姿は、まさに、月下の騎士(剣はまったく使えないが)。長身と、引き締まった体躯が、それを引き立たせていたのかもしれない。
「でも、その髪では目立ちますわね。とっても素敵ですけれど!」
語尾にハートマークをまき散らすミルフィンを無視しながら、リュセルは室内の小道具入れを漁った。
「確か、ここに、侍女達が今年の花見で使ったと話していた小道具があったはず……。あっ、あったあった」
ガサガサガサ
リュセルは奥に置かれていた箱の中から黒髪のかつら(長髪)と黒縁眼鏡を取り出し、それを装着した。
「どうだ?」
「ブッ!」
ミルフィンは思わず吹き出した。
確かにこれなら、リュセルの超絶美貌をうまく隠せていると言ってもいいだろう……が。
取り出したかつらの長い前髪といい、目の色がわからない程グルグルとした丸いピン底の眼鏡といい、これでは、一見オタク青年のようである。
「変装眼鏡があれば良かったのだが、部屋に置いてきてしまったからな。まあ、これなら俺だと誰もわかるまい」
半身たる兄だったら、気づいてしまうかもしれないが……。
「でも、リュセル王子。ちょっと、オーラが」
「オーラ?」
常にいい男オーラを無自覚に放っているリュセルは、ミルフィンの忠告に軽く眉をひそめた。
「オーラばかりはどうする事も出来ないが、なるべく暗い、もっさりとした感じになっていればいいだろう。俺の演技力が試されるという訳だな。ふっ、おもしろい」
眼鏡ごしにも隠せない、このキラキラしたものをどう隠すというのだろうか。
しかし、おかしい位に自信満々なこの男、長兄譲りの完璧さで、オタク系騎士に見事なまでの変身を遂げるのである。
「集合!」
城内警備にあたっていた騎士達を集合させた、アシェイラに三人いる騎士団長の内の一人、ジェイク・ルッツは、集まった部下達を見回して言った。
「状況報告せよ」
上司の命令に従い、城内に侵入したという怪盗イチゴミルクの探索にあたっていた騎士達は、憤る気持ちを抑えて、気づいた事の報告に入る。
「いいか、お主ら~っ! 絶対に、我らが怪盗イチゴミルクを捕えるのじゃ~~! アンダーソンやゼラなど、若造共に先を越されてたまるかあああっ!」
「「「うおおおおおおおおおおッッ!」」」
今年、御年六十歳になるジェイク団長の熱すぎる言葉を聞き、部下達も熱い返事を返す。
ちなみに、アンダーソンとゼラとは、他の騎士団長の事である。
ルバール・アンダーソン
レイミア・ゼラ
共に、まだ三十代前半の若さで騎士団長にまで出世した実力者だ。
前騎士団総帥たるレオンハルトが後押しした事も影響しているのか、彼をまるで自分達の絶対神のように崇拝している節がある。
ジェイドが王太子であった頃の時代から騎士団団長として国と王族に仕えてきたジェイクと若い彼らが反りが合わないのは、仕方のない事かもしれない。
(もうろくじじいと思われない為にも、ここで手柄を立てなければ!)
ジェイクのそんな思いに呼応して、彼の部下達も怪盗イチゴミルク捕獲に燃えていたのだ。
まるで体育会系のノリになっている汗臭い騎士達の中で、騎士の軍服を着込んだミルフィンは、オエ~っと、吐き気を全力で抑え込んでいた。
(最悪っ、汗臭っ! もう、嫌ああああああっ~~~~!)
他の騎士団長の配下になりきれば良かったのだろうが、体育会系のジェイクの配下になってしまったので、周りは熱気ムンムンで、男臭い上に汗臭い。
美しいものを好むミルフィンからしてみれば、ここはまさしく地獄だった。
「大丈夫か?」
いつもは甘く響くその声は、周りを意識してか、ボソボソと聞き取りにくい音量でミルフィンに話しかけてきた。
あまりの環境の劣悪さに涙目になっていたミルフィンの隣りにいたのは、もさもさの黒髪を背後で一つに束ねた、ピン底眼鏡の騎士だった。
その暗い雰囲気と、一種の独特なオーラから、こちらも別の意味で近寄りがたさを体現している。
(見事だわ)
そう、見事な程オタク系騎士になりきったその青年こそが、リュセル王子その人なのだ。
この、あまりの男臭さと、長い事レオンハルトと離れていた為に、その身にまとっていた例の香水の移り香も薄れ、いい感じにリュセル王子を消し去っていた。
そこにいたのは、片手に少女フィギュアを持った、一人のオタク騎士だったのである。
(完璧だ)
内心そう思うリュセルの予測通り、誰も、彼が件の第三王子だとは気づいていない。リュセルは、片手に持っていたフィギュアを弄びながら、満足そうに小さく笑う。
リュセルとミルフィンは、騎士達の中に潜入する事に、こうして成功したのだった。
そして、その後、また三~四人でパーティを組み、指示された場所の見回りに行く事になり、リュセルはミルフィンと一人の先輩騎士と組む事になった。
「見た事ない連中だな」
いかにも体育会系というマッチョな角刈りの騎士の言葉に向かい、ミルフィンは愛想笑いを返す。
「入隊したばかりです。ご指導の程、よろしくお願いします」
「……よろしくお願いします」
ミルフィンの声に隠れるようにして、ぼそぼそと挨拶したリュセルにその騎士は眉をしかめた。
「ん~~~っ!?」
(え? ば……、ばれた!?)
しかし、冷汗を流すミルフィンの横で俯き加減に猫背になっているリュセルの背中を叩くと、彼は豪快に笑った。
「お前、そんな感じでよく入団試験突破したな~! まあ、いい。俺は、ジェイスン・オメガ。ジェイって呼んでくれい! よろしくなっ」
キラッと白い歯を光らせてそう言ったジェイスンに対し、ミルフィンとリュセルも偽名で自己紹介をした。
「くそっ、イチゴミルクめ!」
城内警護にあたっていた騎士達は怪盗にまんまと城内に侵入されてしまい、汚名返上の為、躍起になって怪盗イチゴミルクを追っていた。
だが、例え頭に血が上っていたとしても、動きに一切の乱れがないのは、総指揮をとっているレオンハルトの指示の賜物か。
回廊を通過する騎士達の声が遠ざかるのを知ると、黒タキシードを着込み、月の美貌を半分仮面で隠したリュセルは、回廊近くの小部屋の掃除用物入れの中からメイド服姿のミルフィンと共に出てきた。
「ふう、窮屈だったな」
「そうですわね」
でも、ミルフィンとしては、リュセルと密着出来た(掃除用具入れの中でだが)この時間は、至福の時に他ならなかった。
吐息がかかる程近くにある美貌を見上げ、またしても鼻血が流れる。
「しかし、本当に付け入る隙がまるでなしだ。これでは獲物の元まで近寄れないぞ」
「誘導作戦は昨夜使ってしまいましたし、同じ手にレオンハルト王子が引っかかるとは思えませんわ」
う~んと、悩むように鼻をハンカチで押さえながらそう言った、ミルフィンのメイドコスプレを何気なしに目を向けたリュセルは呟いた。
「仕方ない……。変装するか」
*****
その日、彼は初めての任務に緊張していた。
先日ようやく、騎士見習いから一人前の騎士になったばかりの、新米騎士である。
まだ十七歳と年若い彼は、城内警護及び怪盗捕獲という、初めてにしては重大な任務を受け、他の騎士達と共に城内に侵入したという怪盗イチゴミルクを探索しながら手に汗を握っていたのだ。
カタンッ
レオンハルト王子の指示通り、三~四人でパーティを組み、行動していたのだが、不意に聞こえた小さな音に彼だけが気づいた。
「あ、あの……」
急いで他の先輩騎士達に伝えようとするが、皆、周りを警戒しながらさっさと先に行ってしまう。
(どうしよう)
先輩達の後を追って行こうかとも思ったが、物音のした部屋が気になる。
(よし!)
彼は決意したように小さく頷くと、物音の聞こえた回廊横のその小部屋の扉を開けた。
ギィ……
扉が少し軋むような音を立てる。
ここは本来、道具部屋になっているようだった。色々な用途に使えそうな道具類や掃除用具などが、きちんと整理整頓されて片づけられていた。
アシェイラ城の使用人のレベルの高さが伺える程である。
「だ、誰かいるのか?」
若干震えてしまっている声を出しながら呼びかけるが、返ってくるのは冷たい沈黙だ。
「いないのか」
気の所為かとホッとしかけた瞬間、いきなり掃除用具入れが開かれ、中から出てきた人物に口を塞がれる。
「っ~~~~~!?」
いきなりの事に恐慌状態になりかけながらも腰に帯びた剣を抜き放とうとして、彼は動きを止めた。
目の前に現れた、その青年の顔を見てしまったからだ。
「しい、静かに……」
仲間内でも背の高い自分と同等位なので、長身の部類に楽々入るであろう青年はそうささやくと、ふと小さく瞬きをした。
長い、銀色をしたまつ毛が揺れるのを、呆然と眺める事しか出来ない。
それ程に、その青年は美しかった。……一瞬、息をするのも忘れる程に。ただただ、目の前に在る神聖的な美に見入る事しか出来ない。
すべてを忘れ、思った。
ああ。こんなに美しいものが、この世に……と
「…………あ、あなたは人間ですか? それとも……、か、神ですか?」
つい、震える声で尋ねた自分に青年は首を傾げると言った。
「まあ、今は怪盗だな」
甘く響く声を最後に、彼の意識は闇に沈んだ。
「ちょうどいい、大きさだ。」
自分達のいる小部屋に誘い出し、気絶させた騎士から軍服を脱がせ、それを着込んだリュセルは、そう呟いた。
「素敵ですわ~、リュセル王子殿下」
あまりにも凛々しい姿。ミルフィンはうっとりと見惚れるしかない。
アシェイラ国に仕える騎士の制服とも言えるそ漆黒の軍服は、リュセルに似合いすぎる程、似合っていたのである。
煌く銀の髪との対比が幻想的で、その姿は、まさに、月下の騎士(剣はまったく使えないが)。長身と、引き締まった体躯が、それを引き立たせていたのかもしれない。
「でも、その髪では目立ちますわね。とっても素敵ですけれど!」
語尾にハートマークをまき散らすミルフィンを無視しながら、リュセルは室内の小道具入れを漁った。
「確か、ここに、侍女達が今年の花見で使ったと話していた小道具があったはず……。あっ、あったあった」
ガサガサガサ
リュセルは奥に置かれていた箱の中から黒髪のかつら(長髪)と黒縁眼鏡を取り出し、それを装着した。
「どうだ?」
「ブッ!」
ミルフィンは思わず吹き出した。
確かにこれなら、リュセルの超絶美貌をうまく隠せていると言ってもいいだろう……が。
取り出したかつらの長い前髪といい、目の色がわからない程グルグルとした丸いピン底の眼鏡といい、これでは、一見オタク青年のようである。
「変装眼鏡があれば良かったのだが、部屋に置いてきてしまったからな。まあ、これなら俺だと誰もわかるまい」
半身たる兄だったら、気づいてしまうかもしれないが……。
「でも、リュセル王子。ちょっと、オーラが」
「オーラ?」
常にいい男オーラを無自覚に放っているリュセルは、ミルフィンの忠告に軽く眉をひそめた。
「オーラばかりはどうする事も出来ないが、なるべく暗い、もっさりとした感じになっていればいいだろう。俺の演技力が試されるという訳だな。ふっ、おもしろい」
眼鏡ごしにも隠せない、このキラキラしたものをどう隠すというのだろうか。
しかし、おかしい位に自信満々なこの男、長兄譲りの完璧さで、オタク系騎士に見事なまでの変身を遂げるのである。
「集合!」
城内警備にあたっていた騎士達を集合させた、アシェイラに三人いる騎士団長の内の一人、ジェイク・ルッツは、集まった部下達を見回して言った。
「状況報告せよ」
上司の命令に従い、城内に侵入したという怪盗イチゴミルクの探索にあたっていた騎士達は、憤る気持ちを抑えて、気づいた事の報告に入る。
「いいか、お主ら~っ! 絶対に、我らが怪盗イチゴミルクを捕えるのじゃ~~! アンダーソンやゼラなど、若造共に先を越されてたまるかあああっ!」
「「「うおおおおおおおおおおッッ!」」」
今年、御年六十歳になるジェイク団長の熱すぎる言葉を聞き、部下達も熱い返事を返す。
ちなみに、アンダーソンとゼラとは、他の騎士団長の事である。
ルバール・アンダーソン
レイミア・ゼラ
共に、まだ三十代前半の若さで騎士団長にまで出世した実力者だ。
前騎士団総帥たるレオンハルトが後押しした事も影響しているのか、彼をまるで自分達の絶対神のように崇拝している節がある。
ジェイドが王太子であった頃の時代から騎士団団長として国と王族に仕えてきたジェイクと若い彼らが反りが合わないのは、仕方のない事かもしれない。
(もうろくじじいと思われない為にも、ここで手柄を立てなければ!)
ジェイクのそんな思いに呼応して、彼の部下達も怪盗イチゴミルク捕獲に燃えていたのだ。
まるで体育会系のノリになっている汗臭い騎士達の中で、騎士の軍服を着込んだミルフィンは、オエ~っと、吐き気を全力で抑え込んでいた。
(最悪っ、汗臭っ! もう、嫌ああああああっ~~~~!)
他の騎士団長の配下になりきれば良かったのだろうが、体育会系のジェイクの配下になってしまったので、周りは熱気ムンムンで、男臭い上に汗臭い。
美しいものを好むミルフィンからしてみれば、ここはまさしく地獄だった。
「大丈夫か?」
いつもは甘く響くその声は、周りを意識してか、ボソボソと聞き取りにくい音量でミルフィンに話しかけてきた。
あまりの環境の劣悪さに涙目になっていたミルフィンの隣りにいたのは、もさもさの黒髪を背後で一つに束ねた、ピン底眼鏡の騎士だった。
その暗い雰囲気と、一種の独特なオーラから、こちらも別の意味で近寄りがたさを体現している。
(見事だわ)
そう、見事な程オタク系騎士になりきったその青年こそが、リュセル王子その人なのだ。
この、あまりの男臭さと、長い事レオンハルトと離れていた為に、その身にまとっていた例の香水の移り香も薄れ、いい感じにリュセル王子を消し去っていた。
そこにいたのは、片手に少女フィギュアを持った、一人のオタク騎士だったのである。
(完璧だ)
内心そう思うリュセルの予測通り、誰も、彼が件の第三王子だとは気づいていない。リュセルは、片手に持っていたフィギュアを弄びながら、満足そうに小さく笑う。
リュセルとミルフィンは、騎士達の中に潜入する事に、こうして成功したのだった。
そして、その後、また三~四人でパーティを組み、指示された場所の見回りに行く事になり、リュセルはミルフィンと一人の先輩騎士と組む事になった。
「見た事ない連中だな」
いかにも体育会系というマッチョな角刈りの騎士の言葉に向かい、ミルフィンは愛想笑いを返す。
「入隊したばかりです。ご指導の程、よろしくお願いします」
「……よろしくお願いします」
ミルフィンの声に隠れるようにして、ぼそぼそと挨拶したリュセルにその騎士は眉をしかめた。
「ん~~~っ!?」
(え? ば……、ばれた!?)
しかし、冷汗を流すミルフィンの横で俯き加減に猫背になっているリュセルの背中を叩くと、彼は豪快に笑った。
「お前、そんな感じでよく入団試験突破したな~! まあ、いい。俺は、ジェイスン・オメガ。ジェイって呼んでくれい! よろしくなっ」
キラッと白い歯を光らせてそう言ったジェイスンに対し、ミルフィンとリュセルも偽名で自己紹介をした。
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