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第十一章 神への叛逆
3-1 目覚めたら、そこはディエラ国!?
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芳しい花の香り。
決して華やかではないが、可憐で清楚なその香りには覚えがある。この香りは、あの少女がまとっているもの。春の女神のように暖かく美しい、自分の婚約者。
「ティアラ姫?」
ふと目を開けてその名を呼んでみるが、すぐに首を緩く振った。
「まさかな」
ここ(アシェイラ)にいるはずがない。
彼女は、数日後に迫った、誕生舞踏会の主役なのだから。
しかし。
「リュセル様?」
優しい花の香りが強くなったと思ったら、先程脳裏に思い描いた美姫が自分の顔を覗きこんでいた。
「ティ、ティアラ姫っ!?」
驚きに目を見張るリュセルを見下ろしていたティアラは、ほっとしたようにその緑色の瞳を和ませる。
「お気がつかれましたのね。良かった」
「どうして、あなたがここに……、アシェイラにいるのですか?」
寝起きな所為もあり、状況が今一読み取れていないリュセルが起き上がるのを手伝いながら、ティアラはその問いに答えた。
「いいえ、ここはディエラ国ですわ。昨夜、レオンハルト様と一緒にこちらに移られたのです」
「レオンと?」
一体、何故に?
リュセルのその疑問には答えを持ち合わせていないのか、ティアラは困ったように小首を傾げる。
「さあ? 詳しくはわたくしにも知らされておりませんの。直接、レオンハルト様にお尋ねになった方がいいと思いますわ」
「その、レオンはどこにいるのですか?」
「今はお姉様と何だか難しいお話をしている最中です。でも、リュセル様がお気がつかれた事を知ったら、きっとすぐにきてくれますわよ。わたくし、呼んで参りますね」
にっこりと微笑んで、腰かけていた寝台横の椅子から立ち上がりかけたティアラの動きに呼応するかのように、次の瞬間、部屋の扉が一気に開かれる。
「起きたか」
扉の向こうから現れた麗人の姿を認めて、リュセルはほっとしたような声をかけた。
「レオン」
「どこか具合の悪いところはないかい?」
ティアラとは反対側の寝台横に移動したレオンハルトが、自分の顔を覗きこむのを見上げながら、リュセルは頷いた。
「大丈夫だ」
「そうか」
ほっとしたように微笑むレオンハルトがベッドの端に腰を下ろすのを見つめたまま、リュセルはいつものように、典雅なる兄の美貌に顔を寄せる。それに答えるように、肩から落ちかけた自分の胡桃色の長い髪をかき上げつつ、レオンハルトは触れるだけの口づけを弟と交わす。
「しっかし、お前も災難だねぇ……」
軽く触れるだけで離れていく兄の唇を再び塞ごうと追いかけかけたリュセルは、不意に反対側から聞こえた、強く印象深い女性の声にビクリと体を震わせて動きを止める。
「ジュリナ殿!? い、いつの間に!」
「いつの間にって……、失礼な子だね。レオンハルトと一緒に入室したさ。お前が麗しのお兄様に気をとられている間に、ここに移動したんだよ」
ティアラの座る椅子の後ろに、いつの間にか(リュセル視点)立っていたジュリナは、にやにやしながらリュセルを流し見る。
「私達の事は気にぜずに、続きをやってもいいぞ」
そんなジュリナの言葉に同意するように、ティアラも微笑みながら頷く。
「気にせずって……気になるわっ!」
リュセルが大声でつっこむのを聞いたジュリナは、厚顔無恥な幼なじみに面白がるような目を向ける。
「だってさ。お前も気になるかい?」
「さあね」
そう言いながらもレオンハルトは、ジュリナに気を逸らしている弟の顎に片手を添えると、無理矢理に自分の方に向けさせ、その唇を奪う。
「ふふん。やっぱり、お前は気にしないよな」
ジュリナはティアラの頬に口づけながら、抵抗するリュセルの体を抑え込んで言いなりにしているレオンハルトを見て、当然のように頷いたのだった。
「いや~~、今日もいい天気だねぇ」
ジュリナはそんな事を言いながら、窓を開け放つ。
「んっふ……は」
「おいで、ティア。気持ちいいよ」
「はい、お姉様」
姉に導かれるがまま窓辺に立ったティアラは、頬に触れる気持ちの良いさわやかな風に、うっとりと目を細めた。
「本当に……」
ジュリナが肩を抱き寄せてくれるので、ティアラはその温かい腕の中でほっと息を吐く。
「レオン、ちょっ、もう止め……っ」
ほのぼのとしている姉妹の後ろでは、寝台の上に縫い付けられたリュセルが、兄のもたらす口づけから逃れようと躍起になっていた。
「もうすぐ、私は二十五、お前は十六か。あんなに小さくて可愛いかったティアが、十六歳だなんてねぇ」
「うふふ。わたくしも、もう立派な大人の仲間入りですわね」
「色々と教えてあげるから、楽しみにしておいで。うふふふふ」
「あんっ、いけませんわ、お姉様」
柔らかな曲線を描く肩から腰にかけてのラインを撫でさすられながら、ティアラはその不埒な手を止めようとする。
「いいじゃないか、誰も見てやしないよ」
「そうですけれど……」
この美しき姉妹の目には、後ろの寝台でレオンハルトの腕から逃れようと奮闘中のリュセルの姿は映っていないらしい。
「ティアラ姫もジュリナ殿もいるんだ! 頼むから、もう……、ん、んん~~~っ」
言葉の途中で再び唇を塞がれ、リュセルは口内を弄られながら、自分の身に覆いかぶさるレオンハルトの腕に縋った。
「はっふ……」
息継ぎの為に翻弄していた弟の唇からわずかに己が唇をずらし、レオンハルトは低く笑う。
「何を抵抗する必要がある。好きだろう? 口を弄られるのは…………」
目の前にある琥珀の瞳をぼんやりと見返しながら、リュセルは素直に頷いた。その様子にレオンハルトは満足そうに唇に刻んだ笑みを深くすると、誘うように開かれた弟の唇を再び塞いだ。
「ん……んっん」
レオンハルトの甘い唾液を無意識の内に嚥下しながら、リュセルはわずかな水音を響かせて、深く長い口づけに酔う。
正気で考えれば、婚約者である可憐な朱金の妹姫がいる同じ室内で、このような行為に及ぶのは、死んでも嫌なはずだったのだが、残念な事に、リュセルの正気は段々と失われつつあったのである。
「ティア」
「お姉様」
しかし、もう一方の麗しき花姉妹も次第にその接触を濃厚にしていき、リュセル達のように深い口づけを交わし合い始めたので、彼女達を気にする心配も実はなかったのだ。
室内の空気は、二組の女神の子供のカップルが放つラブオーラの所為で、かなり濃厚なものになっていた。
決して華やかではないが、可憐で清楚なその香りには覚えがある。この香りは、あの少女がまとっているもの。春の女神のように暖かく美しい、自分の婚約者。
「ティアラ姫?」
ふと目を開けてその名を呼んでみるが、すぐに首を緩く振った。
「まさかな」
ここ(アシェイラ)にいるはずがない。
彼女は、数日後に迫った、誕生舞踏会の主役なのだから。
しかし。
「リュセル様?」
優しい花の香りが強くなったと思ったら、先程脳裏に思い描いた美姫が自分の顔を覗きこんでいた。
「ティ、ティアラ姫っ!?」
驚きに目を見張るリュセルを見下ろしていたティアラは、ほっとしたようにその緑色の瞳を和ませる。
「お気がつかれましたのね。良かった」
「どうして、あなたがここに……、アシェイラにいるのですか?」
寝起きな所為もあり、状況が今一読み取れていないリュセルが起き上がるのを手伝いながら、ティアラはその問いに答えた。
「いいえ、ここはディエラ国ですわ。昨夜、レオンハルト様と一緒にこちらに移られたのです」
「レオンと?」
一体、何故に?
リュセルのその疑問には答えを持ち合わせていないのか、ティアラは困ったように小首を傾げる。
「さあ? 詳しくはわたくしにも知らされておりませんの。直接、レオンハルト様にお尋ねになった方がいいと思いますわ」
「その、レオンはどこにいるのですか?」
「今はお姉様と何だか難しいお話をしている最中です。でも、リュセル様がお気がつかれた事を知ったら、きっとすぐにきてくれますわよ。わたくし、呼んで参りますね」
にっこりと微笑んで、腰かけていた寝台横の椅子から立ち上がりかけたティアラの動きに呼応するかのように、次の瞬間、部屋の扉が一気に開かれる。
「起きたか」
扉の向こうから現れた麗人の姿を認めて、リュセルはほっとしたような声をかけた。
「レオン」
「どこか具合の悪いところはないかい?」
ティアラとは反対側の寝台横に移動したレオンハルトが、自分の顔を覗きこむのを見上げながら、リュセルは頷いた。
「大丈夫だ」
「そうか」
ほっとしたように微笑むレオンハルトがベッドの端に腰を下ろすのを見つめたまま、リュセルはいつものように、典雅なる兄の美貌に顔を寄せる。それに答えるように、肩から落ちかけた自分の胡桃色の長い髪をかき上げつつ、レオンハルトは触れるだけの口づけを弟と交わす。
「しっかし、お前も災難だねぇ……」
軽く触れるだけで離れていく兄の唇を再び塞ごうと追いかけかけたリュセルは、不意に反対側から聞こえた、強く印象深い女性の声にビクリと体を震わせて動きを止める。
「ジュリナ殿!? い、いつの間に!」
「いつの間にって……、失礼な子だね。レオンハルトと一緒に入室したさ。お前が麗しのお兄様に気をとられている間に、ここに移動したんだよ」
ティアラの座る椅子の後ろに、いつの間にか(リュセル視点)立っていたジュリナは、にやにやしながらリュセルを流し見る。
「私達の事は気にぜずに、続きをやってもいいぞ」
そんなジュリナの言葉に同意するように、ティアラも微笑みながら頷く。
「気にせずって……気になるわっ!」
リュセルが大声でつっこむのを聞いたジュリナは、厚顔無恥な幼なじみに面白がるような目を向ける。
「だってさ。お前も気になるかい?」
「さあね」
そう言いながらもレオンハルトは、ジュリナに気を逸らしている弟の顎に片手を添えると、無理矢理に自分の方に向けさせ、その唇を奪う。
「ふふん。やっぱり、お前は気にしないよな」
ジュリナはティアラの頬に口づけながら、抵抗するリュセルの体を抑え込んで言いなりにしているレオンハルトを見て、当然のように頷いたのだった。
「いや~~、今日もいい天気だねぇ」
ジュリナはそんな事を言いながら、窓を開け放つ。
「んっふ……は」
「おいで、ティア。気持ちいいよ」
「はい、お姉様」
姉に導かれるがまま窓辺に立ったティアラは、頬に触れる気持ちの良いさわやかな風に、うっとりと目を細めた。
「本当に……」
ジュリナが肩を抱き寄せてくれるので、ティアラはその温かい腕の中でほっと息を吐く。
「レオン、ちょっ、もう止め……っ」
ほのぼのとしている姉妹の後ろでは、寝台の上に縫い付けられたリュセルが、兄のもたらす口づけから逃れようと躍起になっていた。
「もうすぐ、私は二十五、お前は十六か。あんなに小さくて可愛いかったティアが、十六歳だなんてねぇ」
「うふふ。わたくしも、もう立派な大人の仲間入りですわね」
「色々と教えてあげるから、楽しみにしておいで。うふふふふ」
「あんっ、いけませんわ、お姉様」
柔らかな曲線を描く肩から腰にかけてのラインを撫でさすられながら、ティアラはその不埒な手を止めようとする。
「いいじゃないか、誰も見てやしないよ」
「そうですけれど……」
この美しき姉妹の目には、後ろの寝台でレオンハルトの腕から逃れようと奮闘中のリュセルの姿は映っていないらしい。
「ティアラ姫もジュリナ殿もいるんだ! 頼むから、もう……、ん、んん~~~っ」
言葉の途中で再び唇を塞がれ、リュセルは口内を弄られながら、自分の身に覆いかぶさるレオンハルトの腕に縋った。
「はっふ……」
息継ぎの為に翻弄していた弟の唇からわずかに己が唇をずらし、レオンハルトは低く笑う。
「何を抵抗する必要がある。好きだろう? 口を弄られるのは…………」
目の前にある琥珀の瞳をぼんやりと見返しながら、リュセルは素直に頷いた。その様子にレオンハルトは満足そうに唇に刻んだ笑みを深くすると、誘うように開かれた弟の唇を再び塞いだ。
「ん……んっん」
レオンハルトの甘い唾液を無意識の内に嚥下しながら、リュセルはわずかな水音を響かせて、深く長い口づけに酔う。
正気で考えれば、婚約者である可憐な朱金の妹姫がいる同じ室内で、このような行為に及ぶのは、死んでも嫌なはずだったのだが、残念な事に、リュセルの正気は段々と失われつつあったのである。
「ティア」
「お姉様」
しかし、もう一方の麗しき花姉妹も次第にその接触を濃厚にしていき、リュセル達のように深い口づけを交わし合い始めたので、彼女達を気にする心配も実はなかったのだ。
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