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第十三章 聖女の血
3-1 聖銃①
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「ん? この銃、銃弾がないぞ? 何も入ってない。別にあるのか?」
ガチャガチャと、使用法を見ながら聖銃を調べていたリュセルは、そう言ってローウェンを見る。
「ないよ。リュセル兄さんの言う、銃弾っていうのが何だかよくはわからないケド」
「???? 銃は打ち出す弾がなければ武器にならないだろうが。おもちゃのエアーガンだって、BB弾を打ち出すぞ。聖銃って、そもそも何なんだ?」
ローウェンはリュセルの問いに、小首を傾げて説明を始めた。
「イプロス王子の説明書を読む限り、聖銃にて打ち出す弾は、僕らの持つ浄化の力。聖銃は、平たく言えば、女神の子供の力を読み取り、形にする道具でしかないんだ。だから、転移装置みたいに僕らしか使えないよ」
(向こうの世界の銃とは、やはり違うんだな)
リュセルがそう考えていると、アルティスが言った。
「特にこれは、聖銃本体を感知して弾を打ち出すからな。宝主よりも感知能力に優れた宝鍵の方が威力が強うなるようだ。実際、射撃実験をした時、ローよりも我の方が威力が強かったぞ」
つまりは、この聖銃の使用だけで言うなら、レオンハルトよりもリュセルの方が強くいられるという事か。
「基本、邪気にしか効かないケド、物には効くし、普通の人にもあまり威力が大きいと影響あるから気をつけてね。アルなんて、岩を粉砕させちゃったんだから」
二人の話を聞く限り、使い方を間違えれば、結構危険な代物のようだ。
「…………」
(はッ!)
その時、リュセルはレオンハルトの視線を感じて顔を上げる。過保護な兄の事だ。こんな危険な武器、リュセルに持たせるのを良しとしない可能性が高い。
(取り上げられるか?)
恐る恐るレオンハルトの出方を伺うが、兄はリュセルの手の中の聖銃を凝視した後、抑揚のない声で言った。
「貸してみなさい」
「は、はい!」
手を差し出してきたので、持っていたそれを渡してしまった。折角、邪気と戦う為の武器が手に入りそうなのに……。
(やっぱり駄目か?)
レオンハルトからしてみれば、剣でも弓でも槍でもない、未知の武器なのである。危険と判断する可能性が高いだろう。
リュセルが固唾を呑んで見守る先で、聖銃を簡単に調べ終えた兄は、あっさりとそれを弟の手の中に戻す。
「性能もすごいらしいが、細工も見事だね。彫られたこれは、月とアシェイラの紋章か」
銃身に刻まれた彫刻のような紋様を感心しながら見つめるレオンハルトに、アルティスは嬉しそうな顔を向けた。
「あは、やっぱ、レオンハルト兄さんもそう思う!? 修理前は青い薔薇とディエラ王家の紋章が刻まれてたんだケド、リュセル兄さんが使うんじゃ、それは変でしょう? アルが変えてくれたんだよ」
「これ、ロー」
ローウェンが自慢げにそう言うのを、アルティスは照れながらたしなめる。
「ほう。でも、本当に見事な細工だよ。素晴らしい」
芸術方面にも詳しいレオンハルトの手放しの賛美の言葉を聞き、アルティスは更に嬉しそうな顔になる。
「最初、その道のプロに依頼しようかとも思っておったのだが、日頃世話になっておる二人への誕生祭の贈り物だからな。ローと我で作ったものを渡したかったのだ」
「リュセル兄さんの武器だケド、リュセル兄さんを守る道具は、きっとレオンハルト兄さんの為にもなると思って」
健気な少年達の言葉を聞いたレオンハルトは、小さく頷いて礼を言った。
「ありがとう、二人共。礼を言うよ」
そして、動向を見守る弟に視線を向ける。
「大事にするんだよ、リュセル」
兄の真摯な眼差しと真剣な言葉を受け、リュセルは戸惑いながらも頷いた。
「あああ、わかった。ありがとう、二人共」
年上の剣主剣鍵のお礼の言葉に、ローウェンとアルティスは互いに目を合わせ合い、嬉しそうに笑った。
「えへへ、喜んでもらえたね、アル」
「良かったな、ロー」
ちょうど、その時。
「レオンハルト殿下」
部屋の端に控えていたティルが近づいて来て、レオンハルトに耳打ちした。
「どうした、レオン?」
何かあったのかと兄に尋ねたリュセルに対し、レオンハルトは表情を変えぬまま答えた。
「いや、神殿より使者が来城したようだ。大した用事ではないから、対応は私一人でも問題ないだろう。リュセルは二人の相手をしておあげ。もし、城外に出るようなら、ユージンを連れて行くようにしなさい」
ローウェンがいる為、街にある黒猫ノンちゃんグッズ専門店、黒猫堂に行きたがるかもしれないという事を考慮してそう告げたレオンハルトにリュセルは頷く。
「分かった。しかし、大した用じゃないっていっても、本当に俺がいなくても大丈夫か? 生誕の儀の打ち合わせに漏れがあったんじゃないのか?」
弟の言葉を聞いたレオンハルトは、苦笑を浮かべながら首を横に振る。
「いや、生誕の儀の準備は完璧だよ。今回、ウインター神官長補佐が来城したのは、私達の衣装の作成についてだからね」
衣装というと、あの、ヒラヒラしたデザインの宝主と宝鍵の正装という奴か!? 一度、創世祭の折、着た経験がある。宝主は男神をイメージした凛々しいデザインになっており、宝鍵は女神をイメージした清楚で麗しいデザインになっていた。
「あの衣装を作り直すのか!?」
「ああ。年に一度、生誕の儀の折に、新たに神子としての正装を作るのが昔からの決まりなのだよ」
そう言って立ち上がりかけた兄の手を、リュセルは咄嗟に掴む。
「待て!」
「?」
力強く自分の手を掴むリュセルを、レオンハルトは訝しげに見下ろす。
「やはり、俺も行く」
「…………」
自分の宝鍵としての正装衣装に不満があるリュセルは、この作成段階にて、衣装デザインを、麗しい宝鍵的なものから自分の凛々しい美貌に合う男らしい衣装にする気満々だったのだ。
弟のそんな内心に気づいていたレオンハルトは、無言のまま無表情になる。そして、掴まれていた手に手を重ねると逆にリュセルの手を取った。
「そんなに私と離れたくないのかい? 困った子だ」
いけしゃあしゃあとそう言った兄の顔を見返し、リュセルは驚きに目を見開く。それと同時に首の裏に手を回され、引き寄せられる。身をかがめてきたレオンハルトに唇を塞がれたリュセルは、いきなりの事に、重なってくる兄の体を引き離そうともがく事になった。
「ふ、ん……、んんんん~~~~ッ」
最初、抗議のような呻き声を上げていたリュセルは、口づけが深くなるにつれて抵抗の手を緩めていく。
頑なな唇を舐められ、吸われ、煽られる。内に潜む自身の舌に兄の柔らかな舌が密着し、なまめかしく蠢いた。情事の前のような、口内を弄り、漁り尽くすような深い口づけに、リュセルの体は途端に熱を持ち始めてしまう。
「ふっ……ん、んぁ……ッ」
レオンハルトの背を覆う、真っすぐな胡桃色の髪の感触を手の平に受けながら、リュセルは自ら顔の角度を大きく変えて、更なる快感を重なる兄の体に縋り強請る。
「は……ぁ、あ、もっと」
卑猥な水音を立てて舌先が引き抜かれる頃には、リュセルの瞳は甘く蕩けきってしまっていた。
口づけの影響で柔らかく弛緩してしまった弟の体を手の平で辿ったレオンハルトは、意地悪くその耳元で低くささやく。
「いい子にして待っていられたら、後で続きをしてあげよう。」
その言葉を最後に、リュセルからあっさりと身を離したレオンハルトは、自分達の行為をじ~~~~っと見守っていた少年二人に目を向ける。
「では、二人共、リュセルを頼むよ」
「うん、分かった」
「承知した」
ローウェンとアルティスの返事に頷き、レオンハルトは、ぐったりとしているリュセルを軽く放置して、そのまま自室を出て行った。
「う……、ううううううう」
説得を面倒くさがった兄によって口内を弄られ尽くされたリュセルは、憐れみに満ちたアルティスの視線を受けて口元を両手で覆う。
「見るな、馬鹿野郎~~~~~~ッ!」
ソファに押し倒された、その姿勢のまま、リュセルはアルティスとローウェンに背を向けて男泣きをする。
「相変わらずすごかったね。レオンハルト兄さん! 一瞬でリュセル兄さんを黙らせたよ!」
「これ、ロー!」
空気を読めない天才少年、ローウェンの口を、アルティスは慌てて両手で塞ぐ。
「リュ、リュセル殿?」
アルティスの気遣うような声を聞き、リュセルは彼らに背を向けたまま呻くように呟いた。
「すまない、しばらく放っておいてくれ」
熱を持ち、疼く体を持て余しているリュセルの状態が分かっているのか、アルティスはそれに頷く事で答えた。
「あい、分かった」
(あの~~、鬼畜馬鹿が~~~~ッ!)
そして、ソファの上に涙の川を作るリュセルを不思議そうに見ていたローウェンは、テーブルの上に放置されていた聖銃を手に持ってある提案をした。
「ねえねえ、どうせなら、これの試し撃ちしてみない?」
射撃実験は散々アルティスと二人でしてきたが、自分達以外の者に使ってもらった事がないのだ。ローウェンの提案に目を見開いたリュセルは、ゆっくりと起き上がり、二人の方に視線を向ける。楽しそうな提案だ。
「どこか障害物のない広い場所、リュセル兄さん知らない?」
無邪気なローウェンの声を聞き、リュセルは少し考える。
「王族専用の訓練場なら……。王宮からも後宮からも他の建物からも離れてるから、ちょうどいいかもな」
王族が専任の教師から武術の手ほどきを受けたり、自己鍛練をする時に使う場所。高い石垣に囲まれた、無駄に広い場所だ。リュセルはユージンより剣術や護身術を教えてもらう時によく使用している。
「じゃ、早速行く?」
楽しそうに言って立ち上がるローウェンに、リュセルはキランと眩しく輝く、正統派王子の頬笑みを向ける。
「少し、待て」
「? なんで????」
出鼻をくじかれたローウェンは、不服そうに頬を膨らました。
「腰が立たん」
「…………」
レオンハルトの口づけの影響を引きずるリュセルの台詞に、ローウェンとアルティスは目を見合わせため息をついたのだった。
ガチャガチャと、使用法を見ながら聖銃を調べていたリュセルは、そう言ってローウェンを見る。
「ないよ。リュセル兄さんの言う、銃弾っていうのが何だかよくはわからないケド」
「???? 銃は打ち出す弾がなければ武器にならないだろうが。おもちゃのエアーガンだって、BB弾を打ち出すぞ。聖銃って、そもそも何なんだ?」
ローウェンはリュセルの問いに、小首を傾げて説明を始めた。
「イプロス王子の説明書を読む限り、聖銃にて打ち出す弾は、僕らの持つ浄化の力。聖銃は、平たく言えば、女神の子供の力を読み取り、形にする道具でしかないんだ。だから、転移装置みたいに僕らしか使えないよ」
(向こうの世界の銃とは、やはり違うんだな)
リュセルがそう考えていると、アルティスが言った。
「特にこれは、聖銃本体を感知して弾を打ち出すからな。宝主よりも感知能力に優れた宝鍵の方が威力が強うなるようだ。実際、射撃実験をした時、ローよりも我の方が威力が強かったぞ」
つまりは、この聖銃の使用だけで言うなら、レオンハルトよりもリュセルの方が強くいられるという事か。
「基本、邪気にしか効かないケド、物には効くし、普通の人にもあまり威力が大きいと影響あるから気をつけてね。アルなんて、岩を粉砕させちゃったんだから」
二人の話を聞く限り、使い方を間違えれば、結構危険な代物のようだ。
「…………」
(はッ!)
その時、リュセルはレオンハルトの視線を感じて顔を上げる。過保護な兄の事だ。こんな危険な武器、リュセルに持たせるのを良しとしない可能性が高い。
(取り上げられるか?)
恐る恐るレオンハルトの出方を伺うが、兄はリュセルの手の中の聖銃を凝視した後、抑揚のない声で言った。
「貸してみなさい」
「は、はい!」
手を差し出してきたので、持っていたそれを渡してしまった。折角、邪気と戦う為の武器が手に入りそうなのに……。
(やっぱり駄目か?)
レオンハルトからしてみれば、剣でも弓でも槍でもない、未知の武器なのである。危険と判断する可能性が高いだろう。
リュセルが固唾を呑んで見守る先で、聖銃を簡単に調べ終えた兄は、あっさりとそれを弟の手の中に戻す。
「性能もすごいらしいが、細工も見事だね。彫られたこれは、月とアシェイラの紋章か」
銃身に刻まれた彫刻のような紋様を感心しながら見つめるレオンハルトに、アルティスは嬉しそうな顔を向けた。
「あは、やっぱ、レオンハルト兄さんもそう思う!? 修理前は青い薔薇とディエラ王家の紋章が刻まれてたんだケド、リュセル兄さんが使うんじゃ、それは変でしょう? アルが変えてくれたんだよ」
「これ、ロー」
ローウェンが自慢げにそう言うのを、アルティスは照れながらたしなめる。
「ほう。でも、本当に見事な細工だよ。素晴らしい」
芸術方面にも詳しいレオンハルトの手放しの賛美の言葉を聞き、アルティスは更に嬉しそうな顔になる。
「最初、その道のプロに依頼しようかとも思っておったのだが、日頃世話になっておる二人への誕生祭の贈り物だからな。ローと我で作ったものを渡したかったのだ」
「リュセル兄さんの武器だケド、リュセル兄さんを守る道具は、きっとレオンハルト兄さんの為にもなると思って」
健気な少年達の言葉を聞いたレオンハルトは、小さく頷いて礼を言った。
「ありがとう、二人共。礼を言うよ」
そして、動向を見守る弟に視線を向ける。
「大事にするんだよ、リュセル」
兄の真摯な眼差しと真剣な言葉を受け、リュセルは戸惑いながらも頷いた。
「あああ、わかった。ありがとう、二人共」
年上の剣主剣鍵のお礼の言葉に、ローウェンとアルティスは互いに目を合わせ合い、嬉しそうに笑った。
「えへへ、喜んでもらえたね、アル」
「良かったな、ロー」
ちょうど、その時。
「レオンハルト殿下」
部屋の端に控えていたティルが近づいて来て、レオンハルトに耳打ちした。
「どうした、レオン?」
何かあったのかと兄に尋ねたリュセルに対し、レオンハルトは表情を変えぬまま答えた。
「いや、神殿より使者が来城したようだ。大した用事ではないから、対応は私一人でも問題ないだろう。リュセルは二人の相手をしておあげ。もし、城外に出るようなら、ユージンを連れて行くようにしなさい」
ローウェンがいる為、街にある黒猫ノンちゃんグッズ専門店、黒猫堂に行きたがるかもしれないという事を考慮してそう告げたレオンハルトにリュセルは頷く。
「分かった。しかし、大した用じゃないっていっても、本当に俺がいなくても大丈夫か? 生誕の儀の打ち合わせに漏れがあったんじゃないのか?」
弟の言葉を聞いたレオンハルトは、苦笑を浮かべながら首を横に振る。
「いや、生誕の儀の準備は完璧だよ。今回、ウインター神官長補佐が来城したのは、私達の衣装の作成についてだからね」
衣装というと、あの、ヒラヒラしたデザインの宝主と宝鍵の正装という奴か!? 一度、創世祭の折、着た経験がある。宝主は男神をイメージした凛々しいデザインになっており、宝鍵は女神をイメージした清楚で麗しいデザインになっていた。
「あの衣装を作り直すのか!?」
「ああ。年に一度、生誕の儀の折に、新たに神子としての正装を作るのが昔からの決まりなのだよ」
そう言って立ち上がりかけた兄の手を、リュセルは咄嗟に掴む。
「待て!」
「?」
力強く自分の手を掴むリュセルを、レオンハルトは訝しげに見下ろす。
「やはり、俺も行く」
「…………」
自分の宝鍵としての正装衣装に不満があるリュセルは、この作成段階にて、衣装デザインを、麗しい宝鍵的なものから自分の凛々しい美貌に合う男らしい衣装にする気満々だったのだ。
弟のそんな内心に気づいていたレオンハルトは、無言のまま無表情になる。そして、掴まれていた手に手を重ねると逆にリュセルの手を取った。
「そんなに私と離れたくないのかい? 困った子だ」
いけしゃあしゃあとそう言った兄の顔を見返し、リュセルは驚きに目を見開く。それと同時に首の裏に手を回され、引き寄せられる。身をかがめてきたレオンハルトに唇を塞がれたリュセルは、いきなりの事に、重なってくる兄の体を引き離そうともがく事になった。
「ふ、ん……、んんんん~~~~ッ」
最初、抗議のような呻き声を上げていたリュセルは、口づけが深くなるにつれて抵抗の手を緩めていく。
頑なな唇を舐められ、吸われ、煽られる。内に潜む自身の舌に兄の柔らかな舌が密着し、なまめかしく蠢いた。情事の前のような、口内を弄り、漁り尽くすような深い口づけに、リュセルの体は途端に熱を持ち始めてしまう。
「ふっ……ん、んぁ……ッ」
レオンハルトの背を覆う、真っすぐな胡桃色の髪の感触を手の平に受けながら、リュセルは自ら顔の角度を大きく変えて、更なる快感を重なる兄の体に縋り強請る。
「は……ぁ、あ、もっと」
卑猥な水音を立てて舌先が引き抜かれる頃には、リュセルの瞳は甘く蕩けきってしまっていた。
口づけの影響で柔らかく弛緩してしまった弟の体を手の平で辿ったレオンハルトは、意地悪くその耳元で低くささやく。
「いい子にして待っていられたら、後で続きをしてあげよう。」
その言葉を最後に、リュセルからあっさりと身を離したレオンハルトは、自分達の行為をじ~~~~っと見守っていた少年二人に目を向ける。
「では、二人共、リュセルを頼むよ」
「うん、分かった」
「承知した」
ローウェンとアルティスの返事に頷き、レオンハルトは、ぐったりとしているリュセルを軽く放置して、そのまま自室を出て行った。
「う……、ううううううう」
説得を面倒くさがった兄によって口内を弄られ尽くされたリュセルは、憐れみに満ちたアルティスの視線を受けて口元を両手で覆う。
「見るな、馬鹿野郎~~~~~~ッ!」
ソファに押し倒された、その姿勢のまま、リュセルはアルティスとローウェンに背を向けて男泣きをする。
「相変わらずすごかったね。レオンハルト兄さん! 一瞬でリュセル兄さんを黙らせたよ!」
「これ、ロー!」
空気を読めない天才少年、ローウェンの口を、アルティスは慌てて両手で塞ぐ。
「リュ、リュセル殿?」
アルティスの気遣うような声を聞き、リュセルは彼らに背を向けたまま呻くように呟いた。
「すまない、しばらく放っておいてくれ」
熱を持ち、疼く体を持て余しているリュセルの状態が分かっているのか、アルティスはそれに頷く事で答えた。
「あい、分かった」
(あの~~、鬼畜馬鹿が~~~~ッ!)
そして、ソファの上に涙の川を作るリュセルを不思議そうに見ていたローウェンは、テーブルの上に放置されていた聖銃を手に持ってある提案をした。
「ねえねえ、どうせなら、これの試し撃ちしてみない?」
射撃実験は散々アルティスと二人でしてきたが、自分達以外の者に使ってもらった事がないのだ。ローウェンの提案に目を見開いたリュセルは、ゆっくりと起き上がり、二人の方に視線を向ける。楽しそうな提案だ。
「どこか障害物のない広い場所、リュセル兄さん知らない?」
無邪気なローウェンの声を聞き、リュセルは少し考える。
「王族専用の訓練場なら……。王宮からも後宮からも他の建物からも離れてるから、ちょうどいいかもな」
王族が専任の教師から武術の手ほどきを受けたり、自己鍛練をする時に使う場所。高い石垣に囲まれた、無駄に広い場所だ。リュセルはユージンより剣術や護身術を教えてもらう時によく使用している。
「じゃ、早速行く?」
楽しそうに言って立ち上がるローウェンに、リュセルはキランと眩しく輝く、正統派王子の頬笑みを向ける。
「少し、待て」
「? なんで????」
出鼻をくじかれたローウェンは、不服そうに頬を膨らました。
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「…………」
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