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虎太郎side
第一話~虎太郎目線~女の子になりたい
しおりを挟む心の中は女の子なのに
身体は男の子だった。
女の子のスカートが羨ましかった。
女の子のポーチが欲しかった。
女の子色のランドセルを背負いたくて泣いた。
男の子と野原を駆け回るよりも
女の子とお人形さん遊びがしたかった。
サンタクロースにお願いしても
私の枕元にはグローブが置かれていた。
好きな人はずっと
幼なじみの「紗季くん」だった。
私は私だったはずなのに
いつの間にか着なさいと押し付けられた、
男の子の鎧をかぶるようになった。
私は私だったはずなのに
いつの日か間違った常識が当たり前になって
「俺」…そんな一人称を使うようになった。
きっと、ずっと、素直になれない。
そんな星のもとに私は生まれたんだろう。
死ぬまで偽り続けて
生きていくんだろう。
そう、思っていた。
ある日、高校に入ってから
友達になったあかねが
思い詰めたように私の名を口にした。
「ねえ、虎太郎」
「うん、なに」
「あたしさ、変かも」
「何がぁ?」
「……女の子にドキドキするんだ」
ドキンと心臓が跳ねた。
「そなの?」
平常を装いながら
あかねの話に耳を傾ける。
「ずっと怖かったんだよ」
「うん」
「あたし本当は男なんじゃないかって」
「うん」
「ずっと羨ましかったんだよ」
「うん」
「立ちションがしてみたかったんだ」
「うん」
あかねの中で
それは確信めいたものなんだろう。
あかねは小さくまるまって
大きくため息をつきつつ、言った。
「こんな事、ママには絶対言えない…」
私だって、言えないよ。
「泣くのがわかっているから」
つい、声に出た言葉が
あかねの呟いた言葉と重なった。
あかねは、皿のような目を私に向ける。
私は居たたまれなくなって、目を泳がせた。
「よく、わかるね…」
「わかる、よ」
「変なこと聞いていい?」
「…うん」
「虎太郎は…男?」
虎太郎は、男?
頷きかけてためらった。
怖かった。
目の前にいるあかねが
例え私と同じ悩みを
抱えているとしても。
でも…
ここで偽ったら
私は一生男のままだ。
「……俺は、女だよ」
目をぎゅっと瞑って
本当の自分を晒した。
うまれてはじめて
女だと、名乗った。
あかねの反応はない。
恐る恐る目を開くと
あかねは泣いていた。
涙を落としながら
「はじめて、同じような人に出逢えた」
そう、呟いた。
その言葉が心に安らぎを落としていく。
気がついたら私も泣いていた。
二人で肩を抱き合って
おいおいと声をあげて泣いた。
当たり前を押し付けられる日々が
私たち、こんなにも苦しかったんだね。
「ねえ、虎太郎」
空高くにあったお日様が
海の向こうに沈む頃
あかねは、私に話しかけた。
「何?」
「明日、出かけようか」
「明日?」
「うん」
「何をしに行くの?」
「あのさ」
翌日、私はMサイズのB系服を買った。
「あかね」
あかねとの待ち合わせへ行くと
あかねも私が憧れていた、
可愛いブランドの袋を持っていた。
「買えた?」
「買ったよ、フリフリのいっぱいついたワンピース」
「……ありがとう、これあかねのだよ」
「ありがとう」
そう言うと、私たちは
互いの手の中にあった、
憧れの自分になる為のアイテムを
チェンジしたんだ。
まだ、外に着ていく勇気はない。
人にだって言えない。
人に見せられない涙もきっとある。
それでも私たちは
自分を諦めないでいようって
互いに誓い合ったから…。
打ち明けられた勇気を育てて
いつか、一人称も
あかねと私
俺を私に、私を俺に
チェンジしたい。
それが当面の私の夢。
頑張ろう、いっぽいっぽ
不器用でもふたり手を繋いで
生きていきたい。
あかね
打ち明けてくれてありがとう
私に勇気を、ありがとう。
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