異世界で愛され幸せに生きる話【改訂版】

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この世界では――数百年に一度、“神子”が送られてくる。

もっとも、「神子」といっても特別な義務や祈祷の役目があるわけではない

ただ、その存在が世界に“祝福”をもたらすとされている

神子は常に一人。どの国に降臨されるかも神の意志次第で、誰にも予測できない

そして、今朝

神殿に“神託”が下されたのだ
――『神子が降臨する』と

王城は一瞬にして騒然となった

だが、それは混乱ではなく、喜びに満ちたざわめきだった

数百年ぶりの神子

それが、我が国フランベルジェに現れる――その奇跡を、誰もが待ち望んでいたのだ

……そして、俺も

その報せを聞いた瞬間、胸の奥が熱くなった

いつも冷静なはずの自分が、まるで子どものように浮き立つなんて

何故だろう――胸の奥で何かがざわめく

ただ“会いたい”と、そう思った

そんな想いを抱え、俺は神殿へと足を向けた


***


神殿の中は厳かな光に包まれていた

長い回廊の先には神台があり、その両脇には無数の神官たちが並び立っている

皆、固唾をのんで“その瞬間”を待っていた

「殿下もお越しになられたのですね。この歴史的瞬間に立ち会えるとは、まこと光栄です。」

声をかけてきたのは、神殿の長――ローガン

フランベルジェ王国の神官長であり、六十五歳になる老賢人だ

「あぁ。……楽しみだな。」

「おや、殿下がそのような表情をなさるとは。よほどお心が動かれたのですな。」

「……不思議なんだ。こんなにも胸が高鳴るのは、初めてかもしれない。」

ローガンは微笑み、静かにうなずいた
まるで“それこそが神意だ”とでも言うように

――その時、神殿が震えた

天井から一筋の光が降り注ぎ、次の瞬間、眩い輝きが空間を満たした

空気が震え、神官たちが息を呑む
光の中心から、ゆっくりと“人影”が現れたのだ

「……あれは……っ!」

あまりの神々しさに、誰もが息を忘れた

あれは……っ、神か!?

神が現れるなど聞いた事がない…

その腕には、小さな黒髪の少年が抱かれていた

静寂が落ちる

神は周囲をゆっくりと見渡し、やがて真っ直ぐに俺の方へと歩み寄ってきた

その歩みは、迷いなく、確信に満ちていた

俺も息を呑みながら、差し出されたその小さな命を受け取った

「この子は“モモ”。
貴方に託します。必ず、大切にしなさい。」

腕に抱いた瞬間、モモはかすかに身じろぎをして、俺の胸元に顔を寄せてきた

その温もりが、胸の奥まで沁みていく

言葉にできないほど、愛おしい感情がこみ上げてきた

「……この子は、生まれながらにして体が弱い。
そして、精神的にも不安定なところがある。
だからこそ、愛し、護りなさい。」

神の声は穏やかだったが、その一言一言が重く響いた

「……感謝致します、神よ。」

俺が深く頭を垂れると、神はどこか安心したように微笑んだ

そして、静かに光へと溶けるように姿を消した。

残されたのは、温もりだけ

神殿の中は、しんと静まり返っていた

誰もがその神々しい光景に、言葉を失っていたのだ

腕の中のモモを見下ろすと、彼は小さく息をしていた
あどけない寝顔

けれどその顔は、どこか儚くて――

「……モモ、様。」

名を呼ぶと、不思議と胸が温かくなった

この小さな存在を、絶対に守ろう


俺はそう静かに誓った

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