異世界で愛され幸せに生きる話【改訂版】

かな

文字の大きさ
2 / 6
本編

しおりを挟む

この世界では――数百年に一度、“神子”が送られてくる。

もっとも、「神子」といっても特別な義務や祈祷の役目があるわけではない

ただ、その存在が世界に“祝福”をもたらすとされている

神子は常に一人。どの国に降臨されるかも神の意志次第で、誰にも予測できない

そして、今朝

神殿に“神託”が下されたのだ
――『神子が降臨する』と

王城は一瞬にして騒然となった

だが、それは混乱ではなく、喜びに満ちたざわめきだった

数百年ぶりの神子

それが、我が国フランベルジェに現れる――その奇跡を、誰もが待ち望んでいたのだ

……そして、俺も

その報せを聞いた瞬間、胸の奥が熱くなった

いつも冷静なはずの自分が、まるで子どものように浮き立つなんて

何故だろう――胸の奥で何かがざわめく

ただ“会いたい”と、そう思った

そんな想いを抱え、俺は神殿へと足を向けた


***


神殿の中は厳かな光に包まれていた

長い回廊の先には神台があり、その両脇には無数の神官たちが並び立っている

皆、固唾をのんで“その瞬間”を待っていた

「殿下もお越しになられたのですね。この歴史的瞬間に立ち会えるとは、まこと光栄です。」

声をかけてきたのは、神殿の長――ローガン

フランベルジェ王国の神官長であり、六十五歳になる老賢人だ

「あぁ。……楽しみだな。」

「おや、殿下がそのような表情をなさるとは。よほどお心が動かれたのですな。」

「……不思議なんだ。こんなにも胸が高鳴るのは、初めてかもしれない。」

ローガンは微笑み、静かにうなずいた
まるで“それこそが神意だ”とでも言うように

――その時、神殿が震えた

天井から一筋の光が降り注ぎ、次の瞬間、眩い輝きが空間を満たした

空気が震え、神官たちが息を呑む
光の中心から、ゆっくりと“人影”が現れたのだ

「……あれは……っ!」

あまりの神々しさに、誰もが息を忘れた

あれは……っ、神か!?

神が現れるなど聞いた事がない…

その腕には、小さな黒髪の少年が抱かれていた

静寂が落ちる

神は周囲をゆっくりと見渡し、やがて真っ直ぐに俺の方へと歩み寄ってきた

その歩みは、迷いなく、確信に満ちていた

俺も息を呑みながら、差し出されたその小さな命を受け取った

「この子は“モモ”。
貴方に託します。必ず、大切にしなさい。」

腕に抱いた瞬間、モモはかすかに身じろぎをして、俺の胸元に顔を寄せてきた

その温もりが、胸の奥まで沁みていく

言葉にできないほど、愛おしい感情がこみ上げてきた

「……この子は、生まれながらにして体が弱い。
そして、精神的にも不安定なところがある。
だからこそ、愛し、護りなさい。」

神の声は穏やかだったが、その一言一言が重く響いた

「……感謝致します、神よ。」

俺が深く頭を垂れると、神はどこか安心したように微笑んだ

そして、静かに光へと溶けるように姿を消した。

残されたのは、温もりだけ

神殿の中は、しんと静まり返っていた

誰もがその神々しい光景に、言葉を失っていたのだ

腕の中のモモを見下ろすと、彼は小さく息をしていた
あどけない寝顔

けれどその顔は、どこか儚くて――

「……モモ、様。」

名を呼ぶと、不思議と胸が温かくなった

この小さな存在を、絶対に守ろう


俺はそう静かに誓った

しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。 その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。 王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...