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1章 王都ルーデリー 出会い編
1‐29 ダンジョン2
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ダンジョンを進み、三層まで来ていた俺とミーシャは戦闘にも大分慣れていた。
「すごいね、聖水のおかけで疲れも回復するし、体も軽いし。」
ミーシャは聖水の効果に驚いているが、俺自身は効果を得られない為何とも言えない。
「匂いさえ何とかなればいいんだけど。」
やはり匂いにはなれないようだ。
兎人族は、人間族より鼻が利くらしいので余計そうだろう。
「ミーシャ、わがまま言って困らせないで。
その効果だけで充分じゃない。」
俺をフォローするためか、ナツキがたしなめる。
「そうだね、ごめん!」
「いいよ、気にしてないよ。」
ミーシャにはそういったが、ナツキには小さく
「ありがとね。」
とそんなやり取りをしていると、
グルォォォォオォオオオオオ!
奥のほうから唸り声が聞こえる。
この先に何かいる。
ドシッ ドシッ ドシッ ドシッ
その足音は少しずつ大きくなっていく。
こちらへ向かってきているようだ。
グルルルルルルル
姿が見える、高さだけで2mはあるだろう大きな狼のような魔物だ。
「戦闘態勢!
気を付けてください、初めて見る魔物です。」
ナツキの声で、俺が前に出る。
ミーシャがそのすぐ後ろに着き、ナツキは背後を警戒する。
このダンジョンに入って続けてきた形だ。
グルラァッ!
狼は巨大な体を思わせない程のスピードで迫ってくる。
冷静に動きを見る。
唸り声が聞こえた時から「温度干渉」で少しずつ熱した刀は湯気を上げ始めている。
突進してきた狼の噛みつきを、少し余裕をもってよける。
動きは速いが、見切れないほどじゃない。
そのまますれ違いながら足を切りつける。
グギャーーーーーーー!
痛みでひるんだ狼の顔目掛けて、ミーシャが跳び上がり蹴りを入れる。
ドスンッ!
巨体が倒れ、切りつけた足が痛いのかうまく立ち上がれないようだ。
態勢を立て直される前に今度は腹部に刀を入れる。
ッッッギュァアアアア!
さらに悲鳴を上げもがき始める。
その足に蹴飛ばされ、壁に衝突するがそれほど痛くはない。
「カズ君っ!」
「大丈夫!
とどめを!」
「はぁぁぁぁっ、せいっ!」
ミーシャが走りこみ、全力の蹴りを傷口に入れる。
メキッ、そう音が鳴ったと錯覚する程くの字に曲がった狼は壁に激突し、ピクピクと痙攣したまま動かなくなる。
俺は立ち上がると狼の前に行き、その首に刀を当てる。
ーーーーーーーーー
「やったね!
あんなに強そうなの二人でやっつけちゃった!」
ミーシャはとてもうれしそうだ。
「二人とも、さすがです。」
ナツキがほめてくれる。
「コレ、どうやって持って帰ろっか?」
こんなに強そうな魔物を倒せたことはうれしいが、こいつが食べられるのかが気になる。
「私はほとんど何もしていないので、体力が有り余ってます。
この程度なら引っ張って帰れるので、心配しないでください。」
なんとも男前な返事だ。
とはいえ、バテバテなのには違いないため、素直に好意に甘えてナツキに運んでもらう。
ーーーーーーーーー
外に出ると、日が暮れ始めていた。
「おい、なんだそりゃ、大丈夫か?」
入り口の衛兵が声をかけてくる。
「はい、大した強さではないですが、出現したのが三層なのです。」
「そうか、分かった。
上に報告しておこう。
それに…」
そういって指さした場所には、運搬用の馬車や荷車が有る。
「お前たちは運がいい、ちょうど街に戻るところだ。
空きがあってよかったな。」
ダンジョン管理用の衛兵たちの駐屯地に食料配達をしに来た馬車がちょうど帰るところだったらしい。
タイミングよく人員交代の日でもあったらしく、乗せてもらう事にする。
「すごいね、聖水のおかけで疲れも回復するし、体も軽いし。」
ミーシャは聖水の効果に驚いているが、俺自身は効果を得られない為何とも言えない。
「匂いさえ何とかなればいいんだけど。」
やはり匂いにはなれないようだ。
兎人族は、人間族より鼻が利くらしいので余計そうだろう。
「ミーシャ、わがまま言って困らせないで。
その効果だけで充分じゃない。」
俺をフォローするためか、ナツキがたしなめる。
「そうだね、ごめん!」
「いいよ、気にしてないよ。」
ミーシャにはそういったが、ナツキには小さく
「ありがとね。」
とそんなやり取りをしていると、
グルォォォォオォオオオオオ!
奥のほうから唸り声が聞こえる。
この先に何かいる。
ドシッ ドシッ ドシッ ドシッ
その足音は少しずつ大きくなっていく。
こちらへ向かってきているようだ。
グルルルルルルル
姿が見える、高さだけで2mはあるだろう大きな狼のような魔物だ。
「戦闘態勢!
気を付けてください、初めて見る魔物です。」
ナツキの声で、俺が前に出る。
ミーシャがそのすぐ後ろに着き、ナツキは背後を警戒する。
このダンジョンに入って続けてきた形だ。
グルラァッ!
狼は巨大な体を思わせない程のスピードで迫ってくる。
冷静に動きを見る。
唸り声が聞こえた時から「温度干渉」で少しずつ熱した刀は湯気を上げ始めている。
突進してきた狼の噛みつきを、少し余裕をもってよける。
動きは速いが、見切れないほどじゃない。
そのまますれ違いながら足を切りつける。
グギャーーーーーーー!
痛みでひるんだ狼の顔目掛けて、ミーシャが跳び上がり蹴りを入れる。
ドスンッ!
巨体が倒れ、切りつけた足が痛いのかうまく立ち上がれないようだ。
態勢を立て直される前に今度は腹部に刀を入れる。
ッッッギュァアアアア!
さらに悲鳴を上げもがき始める。
その足に蹴飛ばされ、壁に衝突するがそれほど痛くはない。
「カズ君っ!」
「大丈夫!
とどめを!」
「はぁぁぁぁっ、せいっ!」
ミーシャが走りこみ、全力の蹴りを傷口に入れる。
メキッ、そう音が鳴ったと錯覚する程くの字に曲がった狼は壁に激突し、ピクピクと痙攣したまま動かなくなる。
俺は立ち上がると狼の前に行き、その首に刀を当てる。
ーーーーーーーーー
「やったね!
あんなに強そうなの二人でやっつけちゃった!」
ミーシャはとてもうれしそうだ。
「二人とも、さすがです。」
ナツキがほめてくれる。
「コレ、どうやって持って帰ろっか?」
こんなに強そうな魔物を倒せたことはうれしいが、こいつが食べられるのかが気になる。
「私はほとんど何もしていないので、体力が有り余ってます。
この程度なら引っ張って帰れるので、心配しないでください。」
なんとも男前な返事だ。
とはいえ、バテバテなのには違いないため、素直に好意に甘えてナツキに運んでもらう。
ーーーーーーーーー
外に出ると、日が暮れ始めていた。
「おい、なんだそりゃ、大丈夫か?」
入り口の衛兵が声をかけてくる。
「はい、大した強さではないですが、出現したのが三層なのです。」
「そうか、分かった。
上に報告しておこう。
それに…」
そういって指さした場所には、運搬用の馬車や荷車が有る。
「お前たちは運がいい、ちょうど街に戻るところだ。
空きがあってよかったな。」
ダンジョン管理用の衛兵たちの駐屯地に食料配達をしに来た馬車がちょうど帰るところだったらしい。
タイミングよく人員交代の日でもあったらしく、乗せてもらう事にする。
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