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第一章 漆黒の翼
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強烈な痛みを下腹部に感じ、ティアは意識を取り戻した。
目の前に男の裸体があり、その逸物に貫かれていた。
犯されていた!
(そんな……!)
驚愕のあまり男を振り払おうとしたが、両手を押さえつけられた。
両足を大きく広げられ、仰向けに地面に寝かされているティアの両脇に、タイソンとクリフの顔があった。二人はティアの腕を膝で押さえつけながら、白い乳房を揉みしだいていた。
正面の男がティアの秘唇を貫いた逸物を抜き差しし始めた。柔和な笑みを浮かべたオーガストだった。
「やめ……」
叫ぼうと口を開いた瞬間、硬く反り返った逸物がティアの唇を割って入ってきた。ヘテロクロミアの瞳で睨み付けると、ゲイリーがニヤリと嗤いながら告げた。
「男四人に可愛がられて嬉しいだろう」
「ぐっ……ぐふっ……!」
ゲイリーの逸物が喉に突き刺さった。あまりの苦しさに息が止まり、ティアの目尻に涙が滲んだ。
両胸に痛みが走った。クリフが力任せに左胸を揉み込み、白い乳房がいびつに形を変えた。反対側では、タイソンが右の乳首を引っ張り上げ、捏ね回した。
ろくに濡れてもいない秘唇をオーガストの逸物が貫き、下腹部に激痛が走った。
(ひぃいい! やめてぇ! いやぁあ!)
何故こんなことになっているのかさえ分からずに、ティアは混乱と狂乱に叫び声を上げた。だが、喉を塞いだゲイリーの逸物のため、呻き声が漏れただけだった。
「柔らかいおっぱいだぜ。乳首の色も綺麗だ」
「口も熱くて気持ちいいぞ」
「こっちもいい締まりだ。少しずつ濡れてきた。もっと濡らしてやるか」
オーガストが逸物を抜き差ししている秘唇に右手を伸ばした。肉の突起を探り当てると慣れた手つきで包皮を剥き上げた。
「んひぃっ!」
腰骨を震わせると、ティアは顎を反らして大きく仰け反った。下腹部を襲った凄まじい衝撃に、ヘテロクロミアの瞳が大きく見開かれた。
パンッパンッと腰を打ちつけて逸物で膣壁を抉りながら、オーガストは剥き出した陰核を摘まみ上げながら扱きだした。
「ひっ! んひぃ! んあぁあ!」
腰骨を蕩かすような凄絶な衝撃に、ティアの総身が跳ね上がった。くちゅっという音とともに、ティアの意志を裏切って愛液が溢れ出た。
「こいつ、感じだしたぜ。乳首が硬くなってきた」
硬く自己主張をしてきた右乳首を、タイソンが捻り上げた。
「もっと感じさせてやれ」
クリフが口元を歪めると、左乳房を優しく揉み上げながら尖った乳首をクリクリと捏ね回した。
硬く尖りきった乳首を扱かれながら、真っ赤に充血した陰核を嬲られた。それと同時に、膣壁を擦り上げられながら貫かれた。
いくつもの女の弱点を同時に責められた女体は、鳥肌を沸き立てながらブルブルと痙攣を始めた。
「どんな声で啼くかな?」
ゲイリーが逸物をティアの口から引き抜いた。濡れた唇の端から涎が垂れ落ち、トロリと糸を引いて流れ落ちた。
「あ、ひぃっ……やめ……ひぃっ……いやぁ……あ、やめてぇえ! あっ……あ、ひぃい!」
目尻から溢れた涙で頬を濡らしながら、ティアが激しく首を振った。長い淡紫色の髪が舞うように乱れた。
「こいつ、感じまくってるぞ。腰がブルブル震えて、一気に溢れてきた」
オーガストが嘲るように笑いながら告げた。
望まない官能に蕩けた腰骨を痙攣させると、ティアは全身を激しく震わせ始めた。
「あ、あっああ……だ、だめぇ……や、やめ……あ、あっあああ……」
オーガストたちの連携を極めた凄まじい責めは、あっという間に女体の限界を超越した。
ビクンッビクンッと総身を痙攣させると、ティアが大きく仰け反った。
「いったか?」
「すげえ締まりだ。危なく出しちまうとこだった」
そう告げると、オーガストは逸物の抜き差しを再開した。入口を浅く突いたかと思うと、一気に最奥まで貫いた。その緩急自在の動きに、絶頂を極めたばかりの女体はたちまち昂ぶり始めた。
「ひぃっ……だ、だめぇ……やめ……ひぁあ……あ、あっ、あああ!」
ビクビクと細かく痙攣していたティアの躰が、突然大きく跳ね上がった。
歓悦の声を迸りながら、ティアは再び官能の極点を極めさせられた。女の悦びに打ち震えた膣壁が、オーガストの逸物を凄まじい力で締め上げた。
「くっ……出るっ!」
「あ、ひぃいいい!」
熱い迸りが子宮口を叩きつける悦びに、ティアは更なる極みに駆け上った。
大きく仰け反った総身をビックンッビックンッと激しく痙攣させ、ティアは官能の愉悦を噛みしめると、グッタリと弛緩して崩れ落ちた。
「はっ……は、はぁ……はひっ……は、はぁ……」
大悦に蕩けたヘテロクロミアの瞳から随喜の涙を流し、口元からトロリと涎の糸を垂らしながら、ティアは凄まじい喜悦に翻弄された躰をビクンビクンと痙攣させた。その表情は、望まぬ悦楽に狂瀾させられた女の悲哀に溢れていた。
「すげえな、この女。最高だぜ」
欲望の全てを出し切ったオーガストが、満足げにティアを見下ろした。
「早く代われよ。次は俺だ」
ゲイリーがオーガストを押しのけると、今にも暴発しそうなほど反り返った逸物をティアの秘唇に宛がった。
その時、大気を震わせるほどの咆吼が洞窟から響き渡った。
「な、何だ……」
「あ、ああ……」
「お、オーガだぁ!」
「ひぃいい!」
洞窟から飛び出してきた巨大な魔獣の姿を見て、オーガストたちが驚愕の声を上げた。
全長三セグメッツェを優に超える魔獣が、強大な暴威を秘めた眼光でオーガストたちを睨めつけた。
鬼人と呼ばれるオーガは、B級に分類される凶悪な魔獣だった。二セグメッツェを超える身長に、二百ケーゲム近い体重を持ち、全身を凄まじい筋肉の鎧で覆っている。二の腕の太さは成人女性の胴回りほどもあり、その拳は人の頭など一撃で粉砕する。知能もそれなりに高く、群れを成して行動しているため、その数によってはA級に認定されることもあった。
その群れの中でも、ひときわ強力な個体はオーガキングと呼ばれ、単独でA級に認定される最悪の魔獣だった。オーガストたちを睥睨したのは、まさにそのオーガキングであった。
「ぐっがああああ!」
大気を震撼させる雄叫びを放つと、オーガキングが凄まじい速度で走り出した。
「に、逃げろ……!」
「ぎゃああああ!」
オーガストの言葉を無視するかのように、オーガキングが振り上げた拳をクリフに向かって叩きつけた。
風の唸りを撒き散らせながら、オーガキングの拳が呆然と立ち竦んだクリフの胸元に食い込んだ。次の瞬間、断末魔の絶叫とともに、クリフの体は頭部と腰から下を残して粉砕された。血と肉片が飛び散り、ぺちゃっとオーガストの左頬に付着した。
「ひ、ひぃいいい!」
想像を遥かに超えるオーガキングの暴力に、オーガストは尻餅をつき、震えながら後ずさった。股間から湯気が立ち上り、大地に黒い染みが広がった。
「う、うわぁあああ……」
絶叫を放ちながら、タイソンが盾を掴んで自分の前にかざした。その行為をあざ笑うかのごとく、オーガキングが盾ごとタイソンを殴り飛ばした。
その壮絶な破壊力は、鋼鉄製の盾を紙のように突き破り、タイソンの体を粉砕しながら吹き飛ばした。烈風に煽られた木の葉のように、タイソンが凄まじい勢いで大地を転げ回り、二十メッツェほど先で止まった。その四肢は砕けて曲がり、首はあり得ない方向を向いていた。
「タイソン、クリフ……くっそー!」
ゲイリーが愛用の槍を掴むと、オーガキングに向かって投げた。
だが、纏わりつく蠅でも振り払うかのように、オーガキングは飛来する槍を簡単に叩き落とした。
「ぐっがあああ!」
「ひっ……」
威圧が込められたオーガキングの咆吼に、ゲイリーは蒼白になって立ち尽くした。十メッツェ以上あった距離をわずか三歩で縮めると、オーガキングがゲイリーの頭部を拳で粉砕した。首から鮮血を噴出させると、ゲイリーの体がゆっくりと地面に倒れ込んだ。
「あわ……あわわ……」
オーガストが両目から涙を流しながら、後ずさりを続けていた。
オーガキングが倒れたゲイリーの足を掴み、オーガスト目がけて凄まじい勢いで投げつけた。
「ぎゃっ……」
回転しながら飛翔してきたゲイリーの体がオーガストの首に激突した。グキッと鈍い音を立ててオーガストの頸椎が粉砕された。自分の死が納得できないかのように、オーガストの両目は呆然と見開かれていた。
あっという間に<炎の虎>四人を殺害したオーガキングの凶行を、ティアはボウッとしながら見ていた。
(次は私の番だわ……)
短期間に二度も凌辱され、ティアはヘテロクロミアの瞳を閉じて襲いかかる死の瞬間を待った。
瞼の裏に、アルバートの笑顔が浮かんだ。彼と初めて交わした口づけの感触と『蒼穹の乙女』の輝きを、幸せの象徴のように思い出した。
その『蒼穹の乙女』も奪われて、今はない。愛しいアルバートもすでにいなかった。
たった数日でめまぐるしく変わり果てた運命を、ティアは諦めの境地で受け入れた。
「復讐を望むのか?」
不意にその言葉がティアの脳裏に響いた。
(復讐……)
復讐どころか、何一つ行動を起こしてさえいない自分に気づき、愕然とした。
「望みます。私の屈辱に対してもそうですが、何よりもアルバートの仇を討ちたい」
そう答えた自分はどこにいるのか?
愛しいアルバートの仇の名前さえも知らずに、死ぬわけにはいかなかった。
「<イルシオン>」
そう呟くと、ティアは右手を天に向かって掲げた。
その手が閃光に包まれた。
光が消え去ると、ティアの右手に白銀の神刀が顕れた。その神刀から溢れた力がティアに流れ込み、全ての細胞を活性化させた。
「……!」
ヘテロクロミアの瞳に強烈な意志を秘めて、ティアは立ち上がった。両手で<イルシオン>を掴み、上段に構えた。
オーガキングがティアに気づいた。
「ぐがぁああ!」
壮絶な威圧を纏った咆吼が、空気を揺さぶり大地を震撼させた。
オーガキングとの距離は約二十メッツェあった。その距離を、オーガキングが凄まじい速度で縮めてきた。
オーガキングが右腕を振りかざした。風の唸りを纏った巨大な拳が、ティアの顔に向かって振り落とされた。盾士のタイソンを、鋼鉄の盾ごと粉砕する破壊力を秘めた拳だった。
「ハァアッ……!」
<イルシオン>を振りかぶると、ティアは全身全霊を込めて一気に振り抜いた。
凄絶な覇気がティアの総身から沸き起こり、<イルシオン>の刀身が直視できない閃光に包まれた。その閃光が神気を伴う衝撃波の奔流となって、螺旋を描きながらオーガキングを席巻した。
次の瞬間、断末魔の絶叫が響き渡り、三メッツェもあるオーガキングの全身が爆散した。
「はあぁ……」
大きく息を吐くと、ティアは虚脱し膝をついた。無意識に限界を超える覇気を放出していたのだ。
(アルバート……)
愛しい幼なじみの名前を呟きながら、ティアの意識が闇に包まれた。
<イルシオン>を取り落とすと、ティアはゆっくりと地面に崩れ落ちた。
目の前に男の裸体があり、その逸物に貫かれていた。
犯されていた!
(そんな……!)
驚愕のあまり男を振り払おうとしたが、両手を押さえつけられた。
両足を大きく広げられ、仰向けに地面に寝かされているティアの両脇に、タイソンとクリフの顔があった。二人はティアの腕を膝で押さえつけながら、白い乳房を揉みしだいていた。
正面の男がティアの秘唇を貫いた逸物を抜き差しし始めた。柔和な笑みを浮かべたオーガストだった。
「やめ……」
叫ぼうと口を開いた瞬間、硬く反り返った逸物がティアの唇を割って入ってきた。ヘテロクロミアの瞳で睨み付けると、ゲイリーがニヤリと嗤いながら告げた。
「男四人に可愛がられて嬉しいだろう」
「ぐっ……ぐふっ……!」
ゲイリーの逸物が喉に突き刺さった。あまりの苦しさに息が止まり、ティアの目尻に涙が滲んだ。
両胸に痛みが走った。クリフが力任せに左胸を揉み込み、白い乳房がいびつに形を変えた。反対側では、タイソンが右の乳首を引っ張り上げ、捏ね回した。
ろくに濡れてもいない秘唇をオーガストの逸物が貫き、下腹部に激痛が走った。
(ひぃいい! やめてぇ! いやぁあ!)
何故こんなことになっているのかさえ分からずに、ティアは混乱と狂乱に叫び声を上げた。だが、喉を塞いだゲイリーの逸物のため、呻き声が漏れただけだった。
「柔らかいおっぱいだぜ。乳首の色も綺麗だ」
「口も熱くて気持ちいいぞ」
「こっちもいい締まりだ。少しずつ濡れてきた。もっと濡らしてやるか」
オーガストが逸物を抜き差ししている秘唇に右手を伸ばした。肉の突起を探り当てると慣れた手つきで包皮を剥き上げた。
「んひぃっ!」
腰骨を震わせると、ティアは顎を反らして大きく仰け反った。下腹部を襲った凄まじい衝撃に、ヘテロクロミアの瞳が大きく見開かれた。
パンッパンッと腰を打ちつけて逸物で膣壁を抉りながら、オーガストは剥き出した陰核を摘まみ上げながら扱きだした。
「ひっ! んひぃ! んあぁあ!」
腰骨を蕩かすような凄絶な衝撃に、ティアの総身が跳ね上がった。くちゅっという音とともに、ティアの意志を裏切って愛液が溢れ出た。
「こいつ、感じだしたぜ。乳首が硬くなってきた」
硬く自己主張をしてきた右乳首を、タイソンが捻り上げた。
「もっと感じさせてやれ」
クリフが口元を歪めると、左乳房を優しく揉み上げながら尖った乳首をクリクリと捏ね回した。
硬く尖りきった乳首を扱かれながら、真っ赤に充血した陰核を嬲られた。それと同時に、膣壁を擦り上げられながら貫かれた。
いくつもの女の弱点を同時に責められた女体は、鳥肌を沸き立てながらブルブルと痙攣を始めた。
「どんな声で啼くかな?」
ゲイリーが逸物をティアの口から引き抜いた。濡れた唇の端から涎が垂れ落ち、トロリと糸を引いて流れ落ちた。
「あ、ひぃっ……やめ……ひぃっ……いやぁ……あ、やめてぇえ! あっ……あ、ひぃい!」
目尻から溢れた涙で頬を濡らしながら、ティアが激しく首を振った。長い淡紫色の髪が舞うように乱れた。
「こいつ、感じまくってるぞ。腰がブルブル震えて、一気に溢れてきた」
オーガストが嘲るように笑いながら告げた。
望まない官能に蕩けた腰骨を痙攣させると、ティアは全身を激しく震わせ始めた。
「あ、あっああ……だ、だめぇ……や、やめ……あ、あっあああ……」
オーガストたちの連携を極めた凄まじい責めは、あっという間に女体の限界を超越した。
ビクンッビクンッと総身を痙攣させると、ティアが大きく仰け反った。
「いったか?」
「すげえ締まりだ。危なく出しちまうとこだった」
そう告げると、オーガストは逸物の抜き差しを再開した。入口を浅く突いたかと思うと、一気に最奥まで貫いた。その緩急自在の動きに、絶頂を極めたばかりの女体はたちまち昂ぶり始めた。
「ひぃっ……だ、だめぇ……やめ……ひぁあ……あ、あっ、あああ!」
ビクビクと細かく痙攣していたティアの躰が、突然大きく跳ね上がった。
歓悦の声を迸りながら、ティアは再び官能の極点を極めさせられた。女の悦びに打ち震えた膣壁が、オーガストの逸物を凄まじい力で締め上げた。
「くっ……出るっ!」
「あ、ひぃいいい!」
熱い迸りが子宮口を叩きつける悦びに、ティアは更なる極みに駆け上った。
大きく仰け反った総身をビックンッビックンッと激しく痙攣させ、ティアは官能の愉悦を噛みしめると、グッタリと弛緩して崩れ落ちた。
「はっ……は、はぁ……はひっ……は、はぁ……」
大悦に蕩けたヘテロクロミアの瞳から随喜の涙を流し、口元からトロリと涎の糸を垂らしながら、ティアは凄まじい喜悦に翻弄された躰をビクンビクンと痙攣させた。その表情は、望まぬ悦楽に狂瀾させられた女の悲哀に溢れていた。
「すげえな、この女。最高だぜ」
欲望の全てを出し切ったオーガストが、満足げにティアを見下ろした。
「早く代われよ。次は俺だ」
ゲイリーがオーガストを押しのけると、今にも暴発しそうなほど反り返った逸物をティアの秘唇に宛がった。
その時、大気を震わせるほどの咆吼が洞窟から響き渡った。
「な、何だ……」
「あ、ああ……」
「お、オーガだぁ!」
「ひぃいい!」
洞窟から飛び出してきた巨大な魔獣の姿を見て、オーガストたちが驚愕の声を上げた。
全長三セグメッツェを優に超える魔獣が、強大な暴威を秘めた眼光でオーガストたちを睨めつけた。
鬼人と呼ばれるオーガは、B級に分類される凶悪な魔獣だった。二セグメッツェを超える身長に、二百ケーゲム近い体重を持ち、全身を凄まじい筋肉の鎧で覆っている。二の腕の太さは成人女性の胴回りほどもあり、その拳は人の頭など一撃で粉砕する。知能もそれなりに高く、群れを成して行動しているため、その数によってはA級に認定されることもあった。
その群れの中でも、ひときわ強力な個体はオーガキングと呼ばれ、単独でA級に認定される最悪の魔獣だった。オーガストたちを睥睨したのは、まさにそのオーガキングであった。
「ぐっがああああ!」
大気を震撼させる雄叫びを放つと、オーガキングが凄まじい速度で走り出した。
「に、逃げろ……!」
「ぎゃああああ!」
オーガストの言葉を無視するかのように、オーガキングが振り上げた拳をクリフに向かって叩きつけた。
風の唸りを撒き散らせながら、オーガキングの拳が呆然と立ち竦んだクリフの胸元に食い込んだ。次の瞬間、断末魔の絶叫とともに、クリフの体は頭部と腰から下を残して粉砕された。血と肉片が飛び散り、ぺちゃっとオーガストの左頬に付着した。
「ひ、ひぃいいい!」
想像を遥かに超えるオーガキングの暴力に、オーガストは尻餅をつき、震えながら後ずさった。股間から湯気が立ち上り、大地に黒い染みが広がった。
「う、うわぁあああ……」
絶叫を放ちながら、タイソンが盾を掴んで自分の前にかざした。その行為をあざ笑うかのごとく、オーガキングが盾ごとタイソンを殴り飛ばした。
その壮絶な破壊力は、鋼鉄製の盾を紙のように突き破り、タイソンの体を粉砕しながら吹き飛ばした。烈風に煽られた木の葉のように、タイソンが凄まじい勢いで大地を転げ回り、二十メッツェほど先で止まった。その四肢は砕けて曲がり、首はあり得ない方向を向いていた。
「タイソン、クリフ……くっそー!」
ゲイリーが愛用の槍を掴むと、オーガキングに向かって投げた。
だが、纏わりつく蠅でも振り払うかのように、オーガキングは飛来する槍を簡単に叩き落とした。
「ぐっがあああ!」
「ひっ……」
威圧が込められたオーガキングの咆吼に、ゲイリーは蒼白になって立ち尽くした。十メッツェ以上あった距離をわずか三歩で縮めると、オーガキングがゲイリーの頭部を拳で粉砕した。首から鮮血を噴出させると、ゲイリーの体がゆっくりと地面に倒れ込んだ。
「あわ……あわわ……」
オーガストが両目から涙を流しながら、後ずさりを続けていた。
オーガキングが倒れたゲイリーの足を掴み、オーガスト目がけて凄まじい勢いで投げつけた。
「ぎゃっ……」
回転しながら飛翔してきたゲイリーの体がオーガストの首に激突した。グキッと鈍い音を立ててオーガストの頸椎が粉砕された。自分の死が納得できないかのように、オーガストの両目は呆然と見開かれていた。
あっという間に<炎の虎>四人を殺害したオーガキングの凶行を、ティアはボウッとしながら見ていた。
(次は私の番だわ……)
短期間に二度も凌辱され、ティアはヘテロクロミアの瞳を閉じて襲いかかる死の瞬間を待った。
瞼の裏に、アルバートの笑顔が浮かんだ。彼と初めて交わした口づけの感触と『蒼穹の乙女』の輝きを、幸せの象徴のように思い出した。
その『蒼穹の乙女』も奪われて、今はない。愛しいアルバートもすでにいなかった。
たった数日でめまぐるしく変わり果てた運命を、ティアは諦めの境地で受け入れた。
「復讐を望むのか?」
不意にその言葉がティアの脳裏に響いた。
(復讐……)
復讐どころか、何一つ行動を起こしてさえいない自分に気づき、愕然とした。
「望みます。私の屈辱に対してもそうですが、何よりもアルバートの仇を討ちたい」
そう答えた自分はどこにいるのか?
愛しいアルバートの仇の名前さえも知らずに、死ぬわけにはいかなかった。
「<イルシオン>」
そう呟くと、ティアは右手を天に向かって掲げた。
その手が閃光に包まれた。
光が消え去ると、ティアの右手に白銀の神刀が顕れた。その神刀から溢れた力がティアに流れ込み、全ての細胞を活性化させた。
「……!」
ヘテロクロミアの瞳に強烈な意志を秘めて、ティアは立ち上がった。両手で<イルシオン>を掴み、上段に構えた。
オーガキングがティアに気づいた。
「ぐがぁああ!」
壮絶な威圧を纏った咆吼が、空気を揺さぶり大地を震撼させた。
オーガキングとの距離は約二十メッツェあった。その距離を、オーガキングが凄まじい速度で縮めてきた。
オーガキングが右腕を振りかざした。風の唸りを纏った巨大な拳が、ティアの顔に向かって振り落とされた。盾士のタイソンを、鋼鉄の盾ごと粉砕する破壊力を秘めた拳だった。
「ハァアッ……!」
<イルシオン>を振りかぶると、ティアは全身全霊を込めて一気に振り抜いた。
凄絶な覇気がティアの総身から沸き起こり、<イルシオン>の刀身が直視できない閃光に包まれた。その閃光が神気を伴う衝撃波の奔流となって、螺旋を描きながらオーガキングを席巻した。
次の瞬間、断末魔の絶叫が響き渡り、三メッツェもあるオーガキングの全身が爆散した。
「はあぁ……」
大きく息を吐くと、ティアは虚脱し膝をついた。無意識に限界を超える覇気を放出していたのだ。
(アルバート……)
愛しい幼なじみの名前を呟きながら、ティアの意識が闇に包まれた。
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