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勇者の受難
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「勇者様! 次は此方ですよ」
「勇者! 早く!」
「勇者様、遅いですよ」
「勇者様置いて行かれてしまいますよ」
四人の女の声が響く
自らの前を歩く四人の女たちを見つめて勇者は頭が痛む様な気がしました。キャッキャッと笑う姿は仲睦まじくも見えるのにどうしてだろう。四人の間に火花が散っているのが勇者には見えた。
事の始まりは数時間前
勇者の家に遊びに来ていた魔王の娘マーナがたまにはどこかにお出かけしたいですわと言ったことにある。
(確かに大人びているとはいえ子供なんだしいつも家の中で遊ぶのは不健康だよな。よし。山に行こう)
田舎育ちの子供。勇者のお出掛けと云えば山の中に虫取りや食料を取りに行くことである。昔使っていた虫かごと虫アミを用意してさあ、行こうと勇者は言った。ええといったマーナの笑顔は引きつっていた。内心ではそうじゃなかったのにと思いながらも自分の言葉を聞いて用意してくれた勇者に違いますのとは言えなかったのだ。
そうして山に向かう途中で幼馴染と僧侶、姫の三人娘に出会った。
「初めまして。私、魔王マニャクロランゼ・ユロンの娘マーナ・ユロンと申します。三人は勇者様の幼馴染さんに僧侶さん、それにシャイナ王国の御姫様ですよね。何時も勇者様からお話を聞いております
よろしくお願いします」
初めて顔を合わせる三人にマーナは完璧な挨拶をする。その時あれと勇者は思った。
(何か今一瞬肌がピリッとしたような……って、え)
一瞬どころではないピリピリ感がしだす。何がと勇者が恐る恐る感じるほうを見る。そこにはにこやかに笑う三人の姿が。
「へぇ。君がマーナちゃんか。へぇ」
「勇者様から話だけは聞いてます」
「これからよろしくね」
(え!? こわ! 何これ、こわ!)
笑っているのに三人の背後からはゴゴゴゴゴと地響きにも似た恐ろしい効果音が聞こえてくる。え、どう云う事なのと目を回す勇者。
その前でマーナも笑っているが笑っていない笑顔を浮かべてよろしくですわともう一度口にする。
幼いながらも恋する女の子。他の女に負けたりしないのだ。
「それで今日は何処に行くんですか」
世間話をするように姫が聞く。邪魔してやりますわとその目が語る。
「お山です。お出かけしたいと言ったら勇者様が連れていてくださると言ってくださって」
邪魔できるものなら邪魔してみなさいとマーナが答える。その答えにえっと三人は固まった。そして勇者とマーナを交互に見る。勇者を見て、マーナを見て、勇者を見て、マーナを見る。
マーナはこないだ見たのと変わらないようなもしかしたら同じような服かもしれないが、それでも可愛らしい格好をしている。だが勇者はと言えばデザイン性の欠片もない動きやすさだけに特化した服だった。首には虫かごをかけ、片手には虫網を持っていた。
「馬鹿なの勇者!」
「ありえません!」
「え?」
「勇者様、……流石にそれは可愛そうだと」
「ええ? なにが?」
敵に塩を送るつもりはないけれどもつい口にしてしまう三人娘であった。
「あんたそうう言う所あるよね! 女の子が虫取りとか興味あるわけないじゃん!」
「ええ! だってお前だって昔は」
「ええい! 私の昔の事は良いの!! 私はそうでもほとんどの子は違うんだから! どう見てもこの子は違うから!!」
「そうですよ勇者様。男の子と女の子を一緒にしないでください。全然違いますから」
「ええ!? 嫌でも、マーナちゃんは山に行くかって言ったらうんって」
「折角提案してもらったのに厭だなんて言えるわけないじゃないですか。勇者様、あの子を見てください」
姫がマーナを指さす。すかさず幼馴染が聞く。
「本当に山に行きたい」
「……えっと、それは……」
「嘘言わなくていいんですよ。本当のことを言ってあげてください」
僧侶が援護射撃をした。マーナが固まりそれからおずおずと口を開く。
「ほんとうは、ちょっとやです」
がーーーんと勇者は地面に手をついた。そんなまさかと呟き沈んだ。沈んだ勇者は放っておいて三人娘は話す。
「そう言えば近くの町でバザーをしていたよな」
「あら、それはいいですね」
「近くの町ならすぐに行けますし、お店もたくさんありますからきっと楽しめます。そこにしましょう。勇者様」
え? と勇者が顔を上げる。茫然としながらも三人を見つめて問いかける。
「あれ? 三人も行くことになってない」
「「「当然です」」」
響く声にマーナは不機嫌そうに頬を膨らませて、それが誰にも見られないうちに元に戻す。彼女たちがいなければ山に行くことになっていたのだ。しかも虫嫌いなのに虫を取る羽目になる所だった。
ここは感謝して今回ぐらいは一緒に居ても許してやろうと笑顔を浮かべて勇者に行こうと言った。
そして現在。
勇者の腕には荷物が山積み。四人の買い物に付き合わされてへとへと。なのに四人はまだまだ元気。どんな屈強なものでも買い物をする女子のパワーには負けるというがその通りだと勇者は思った。しかも楽しげにしながらも四人の間では火花が飛び続けるからそれを感じて余計に精神力が削られていく。
もう帰りたいと勇者は思った。
おまけ
「いろいろ買い物してしまいましたわ。お父様に怒られそう」
そう云うマーナはちっとも悪びれず恐れているようにも見えなかった。
「魔王がお前を怒ることあるのか」
「あると思いますか」
質問が質問で返されて勇者はう~~んと数秒考える。そしてすぐに口にする。
「いや、ないな」
くすくすとマーナが笑った。
ふっとその口が止まり、あ、と声を上げた。ん、と勇者はマーナが見ているものをみる。そこには何やら美味しそうなドーナツのお店。
「食べたいのか?」
聞けばハッとした顔をマーナはする。
「あ、いえ、私甘いものは苦手ですから」
「そっか」
美味しいのになと言いながら勇者は首を傾げる。その割にはキラキラとした目をしていたように思うんだけどと……。
勇者二十歳以上。乙女心にはとことん疎い
「勇者! 早く!」
「勇者様、遅いですよ」
「勇者様置いて行かれてしまいますよ」
四人の女の声が響く
自らの前を歩く四人の女たちを見つめて勇者は頭が痛む様な気がしました。キャッキャッと笑う姿は仲睦まじくも見えるのにどうしてだろう。四人の間に火花が散っているのが勇者には見えた。
事の始まりは数時間前
勇者の家に遊びに来ていた魔王の娘マーナがたまにはどこかにお出かけしたいですわと言ったことにある。
(確かに大人びているとはいえ子供なんだしいつも家の中で遊ぶのは不健康だよな。よし。山に行こう)
田舎育ちの子供。勇者のお出掛けと云えば山の中に虫取りや食料を取りに行くことである。昔使っていた虫かごと虫アミを用意してさあ、行こうと勇者は言った。ええといったマーナの笑顔は引きつっていた。内心ではそうじゃなかったのにと思いながらも自分の言葉を聞いて用意してくれた勇者に違いますのとは言えなかったのだ。
そうして山に向かう途中で幼馴染と僧侶、姫の三人娘に出会った。
「初めまして。私、魔王マニャクロランゼ・ユロンの娘マーナ・ユロンと申します。三人は勇者様の幼馴染さんに僧侶さん、それにシャイナ王国の御姫様ですよね。何時も勇者様からお話を聞いております
よろしくお願いします」
初めて顔を合わせる三人にマーナは完璧な挨拶をする。その時あれと勇者は思った。
(何か今一瞬肌がピリッとしたような……って、え)
一瞬どころではないピリピリ感がしだす。何がと勇者が恐る恐る感じるほうを見る。そこにはにこやかに笑う三人の姿が。
「へぇ。君がマーナちゃんか。へぇ」
「勇者様から話だけは聞いてます」
「これからよろしくね」
(え!? こわ! 何これ、こわ!)
笑っているのに三人の背後からはゴゴゴゴゴと地響きにも似た恐ろしい効果音が聞こえてくる。え、どう云う事なのと目を回す勇者。
その前でマーナも笑っているが笑っていない笑顔を浮かべてよろしくですわともう一度口にする。
幼いながらも恋する女の子。他の女に負けたりしないのだ。
「それで今日は何処に行くんですか」
世間話をするように姫が聞く。邪魔してやりますわとその目が語る。
「お山です。お出かけしたいと言ったら勇者様が連れていてくださると言ってくださって」
邪魔できるものなら邪魔してみなさいとマーナが答える。その答えにえっと三人は固まった。そして勇者とマーナを交互に見る。勇者を見て、マーナを見て、勇者を見て、マーナを見る。
マーナはこないだ見たのと変わらないようなもしかしたら同じような服かもしれないが、それでも可愛らしい格好をしている。だが勇者はと言えばデザイン性の欠片もない動きやすさだけに特化した服だった。首には虫かごをかけ、片手には虫網を持っていた。
「馬鹿なの勇者!」
「ありえません!」
「え?」
「勇者様、……流石にそれは可愛そうだと」
「ええ? なにが?」
敵に塩を送るつもりはないけれどもつい口にしてしまう三人娘であった。
「あんたそうう言う所あるよね! 女の子が虫取りとか興味あるわけないじゃん!」
「ええ! だってお前だって昔は」
「ええい! 私の昔の事は良いの!! 私はそうでもほとんどの子は違うんだから! どう見てもこの子は違うから!!」
「そうですよ勇者様。男の子と女の子を一緒にしないでください。全然違いますから」
「ええ!? 嫌でも、マーナちゃんは山に行くかって言ったらうんって」
「折角提案してもらったのに厭だなんて言えるわけないじゃないですか。勇者様、あの子を見てください」
姫がマーナを指さす。すかさず幼馴染が聞く。
「本当に山に行きたい」
「……えっと、それは……」
「嘘言わなくていいんですよ。本当のことを言ってあげてください」
僧侶が援護射撃をした。マーナが固まりそれからおずおずと口を開く。
「ほんとうは、ちょっとやです」
がーーーんと勇者は地面に手をついた。そんなまさかと呟き沈んだ。沈んだ勇者は放っておいて三人娘は話す。
「そう言えば近くの町でバザーをしていたよな」
「あら、それはいいですね」
「近くの町ならすぐに行けますし、お店もたくさんありますからきっと楽しめます。そこにしましょう。勇者様」
え? と勇者が顔を上げる。茫然としながらも三人を見つめて問いかける。
「あれ? 三人も行くことになってない」
「「「当然です」」」
響く声にマーナは不機嫌そうに頬を膨らませて、それが誰にも見られないうちに元に戻す。彼女たちがいなければ山に行くことになっていたのだ。しかも虫嫌いなのに虫を取る羽目になる所だった。
ここは感謝して今回ぐらいは一緒に居ても許してやろうと笑顔を浮かべて勇者に行こうと言った。
そして現在。
勇者の腕には荷物が山積み。四人の買い物に付き合わされてへとへと。なのに四人はまだまだ元気。どんな屈強なものでも買い物をする女子のパワーには負けるというがその通りだと勇者は思った。しかも楽しげにしながらも四人の間では火花が飛び続けるからそれを感じて余計に精神力が削られていく。
もう帰りたいと勇者は思った。
おまけ
「いろいろ買い物してしまいましたわ。お父様に怒られそう」
そう云うマーナはちっとも悪びれず恐れているようにも見えなかった。
「魔王がお前を怒ることあるのか」
「あると思いますか」
質問が質問で返されて勇者はう~~んと数秒考える。そしてすぐに口にする。
「いや、ないな」
くすくすとマーナが笑った。
ふっとその口が止まり、あ、と声を上げた。ん、と勇者はマーナが見ているものをみる。そこには何やら美味しそうなドーナツのお店。
「食べたいのか?」
聞けばハッとした顔をマーナはする。
「あ、いえ、私甘いものは苦手ですから」
「そっか」
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