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魔王の娘とお花見
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白く積もった雪はぶ厚くて元に戻るのだろうかと不安にもなったりするが、季節が廻り暖かくなれば自然と溶けていく。雪が解けて暖かい春がやってくるのはほっとしたりもするものだけど、初めての冬を体験していたマーナは何処となく寂しそうでもあった。
だから勇者はマーナに春になった花見に行こうねとそう約束していた。
魔界では花を見ると言う行為もないのか言った時のマーナはとても不思議そうにしていたが、すぐに嬉しそうな顔をして約束ですよとそう笑っていた。
あれから時間が経ち、綺麗な花が咲き始めていた。
勇者がマーナに今度花見に行こうと声をかけるとマーナは満面の笑みで頷いていた。雪のひも失敗も思い出しながら勇者は今度はマーナに余計なことは考えずに喜んでもらうといろいろと考えたうえで準備を続けていた。
弁当なども用意したりして万全を記して迎えたその日。勇者はやってきたマーナを見てえっと固まってしまっていた。
マーナはきらきらとした目をしてどうですかなんてそんなことを聞いてきたのだ。
問われた勇者には何がどうなのかなんて全く分からない。何を聞いているのか分からなくて首を傾けるけど、マーナは期待のこもった眼で勇者を見てきていた。きらきらしているが、何処となく不安げでもある。下から見上げてくる目に声が詰まる。
女ごころなんてもの勇者は未だに理解できないが分かってきていることは会って、こんな風に問いかけられた時何がなんて答えるのは不興を買うのだ。
折角楽しんでもらおうと用意したのにこんなところで躓きたくはない。なんとかきりに抜けなければと覚悟を決めてマーナを見る。
どうですかと聞いてくると言う事は何かが違うと言う事だ。何が違うのだと勇者はマーナを下から上、全体見渡してすぐにそこには気づいた。
服が違ったのだ。
今まではマーナは勇者が送った冬服を着ていた。暖かくなり始めとはいえ、マーナが来ていたのは薄かったのでまだ衣替えではないだろうと、もう少ししてから言うつもりだったのだが、今日のマーナは勇者が送った冬服を着てきていない。かといって今まで着ていた服でもなかった
それは勇者が初めて見るマーナの服だ。
なるほどこれかと分かった後、勇者はもう一度固まった。
分かったけどそれでどうしたらいいのかがすぐに出てこなかったのだ。服装が違うからって何なのだろうか。丁度この季節に合ってるねでいいんだろうか。考えて勇者がそう言おうとしたとき、勇者の頭の中には三人の仲間の姿が映った。どれも女性、幼馴染と僧侶、姫の三人だった。
にっこりと笑った三人からはだけど無言の圧力のようなものを感じる。同じような時、同じような言葉を言ってそれぞれが固まったシーンを思い出した。
「良く似合っているね。可愛いよ」
ぱあああとマーナの目が輝いていく。どうやらこちらが正解だったらしい。ほっとすると同時に脳裏の三人は消えていた。
「そうですか。実はこれお父様が服ならば私が買ってやるって買ってきてくれたもので。勇者様にそう言われて幸せです」
マーナはにこにこと笑っていた。ぞくりと勇者の肩が震える。あ、これ
冬服贈ったの魔王気に入らなかったパターンではと思いつつも気にしないことにしていた。似合っているね。とマーナに笑う。
「今日は約束したお花見のひでしたので、このお洋服にしてみたんです。すごく楽しみにしていたので今からワクワクしてます」
「そっか。じゃあ行こうか」
何処からか魔王の怨念が聞こえる気がしたが、勇者はマーナに手を差し出していた。その手は少し震えている。手を取るマーナが気にしなかったことだけが救いだった。
花見の場所は勇者とマーナが雪で遊んだ山の中、人があまり来ない山頂であった。山の中に生える色とりどりの花が見えるほか、そこから見える景色の中にも美しい花が咲き誇り色鮮やかに広がっていた。
マーナは山の中景色を見て飛び跳ねるように喜んで、ありがとうございますと勇者に向けて笑っていた。一通り景色を見てから二人は弁当を広げていた。
弁当を見てマーナが目を輝かせる。美味しそうですとそう笑うマーナ。勇者様が作ってくれたのですかとその目はきらきらと勇者を見つめる。ありがとうございますというマーナ。早く食べようと二人食べ始めた。
日が暮れたころ勇者とマーナの二人は花見を終えて帰ろうと言う事になっていたが、その前にとマーナが花を何本か積んでいた。お土産に持って帰りますとそう言っている。
「例の幼馴染の子に持っていてあげるの」
「はい」
勇者が問えばマーナは笑って答えた。どこか寂しそうな笑み。連れてきていいのにと言ってしまうがマーナは曖昧に笑うだけだった。
遊びに来るたびマーナは雪をお土産に持って帰っていたが、結局一度も幼馴染の子を連れてきたことはなかった。何か事情があるのだろうと言う事は勇者もさしているが、お土産を持っていてあげようとするマーナを見るとつい声を掛けてしまう。
今度ちゃんと聞かなければなとそんな事をいつも考えていた。ただ中々機会は訪れず、ずっと何もできないでいた。
でもそれはある日いきなり変わるのだった。
だから勇者はマーナに春になった花見に行こうねとそう約束していた。
魔界では花を見ると言う行為もないのか言った時のマーナはとても不思議そうにしていたが、すぐに嬉しそうな顔をして約束ですよとそう笑っていた。
あれから時間が経ち、綺麗な花が咲き始めていた。
勇者がマーナに今度花見に行こうと声をかけるとマーナは満面の笑みで頷いていた。雪のひも失敗も思い出しながら勇者は今度はマーナに余計なことは考えずに喜んでもらうといろいろと考えたうえで準備を続けていた。
弁当なども用意したりして万全を記して迎えたその日。勇者はやってきたマーナを見てえっと固まってしまっていた。
マーナはきらきらとした目をしてどうですかなんてそんなことを聞いてきたのだ。
問われた勇者には何がどうなのかなんて全く分からない。何を聞いているのか分からなくて首を傾けるけど、マーナは期待のこもった眼で勇者を見てきていた。きらきらしているが、何処となく不安げでもある。下から見上げてくる目に声が詰まる。
女ごころなんてもの勇者は未だに理解できないが分かってきていることは会って、こんな風に問いかけられた時何がなんて答えるのは不興を買うのだ。
折角楽しんでもらおうと用意したのにこんなところで躓きたくはない。なんとかきりに抜けなければと覚悟を決めてマーナを見る。
どうですかと聞いてくると言う事は何かが違うと言う事だ。何が違うのだと勇者はマーナを下から上、全体見渡してすぐにそこには気づいた。
服が違ったのだ。
今まではマーナは勇者が送った冬服を着ていた。暖かくなり始めとはいえ、マーナが来ていたのは薄かったのでまだ衣替えではないだろうと、もう少ししてから言うつもりだったのだが、今日のマーナは勇者が送った冬服を着てきていない。かといって今まで着ていた服でもなかった
それは勇者が初めて見るマーナの服だ。
なるほどこれかと分かった後、勇者はもう一度固まった。
分かったけどそれでどうしたらいいのかがすぐに出てこなかったのだ。服装が違うからって何なのだろうか。丁度この季節に合ってるねでいいんだろうか。考えて勇者がそう言おうとしたとき、勇者の頭の中には三人の仲間の姿が映った。どれも女性、幼馴染と僧侶、姫の三人だった。
にっこりと笑った三人からはだけど無言の圧力のようなものを感じる。同じような時、同じような言葉を言ってそれぞれが固まったシーンを思い出した。
「良く似合っているね。可愛いよ」
ぱあああとマーナの目が輝いていく。どうやらこちらが正解だったらしい。ほっとすると同時に脳裏の三人は消えていた。
「そうですか。実はこれお父様が服ならば私が買ってやるって買ってきてくれたもので。勇者様にそう言われて幸せです」
マーナはにこにこと笑っていた。ぞくりと勇者の肩が震える。あ、これ
冬服贈ったの魔王気に入らなかったパターンではと思いつつも気にしないことにしていた。似合っているね。とマーナに笑う。
「今日は約束したお花見のひでしたので、このお洋服にしてみたんです。すごく楽しみにしていたので今からワクワクしてます」
「そっか。じゃあ行こうか」
何処からか魔王の怨念が聞こえる気がしたが、勇者はマーナに手を差し出していた。その手は少し震えている。手を取るマーナが気にしなかったことだけが救いだった。
花見の場所は勇者とマーナが雪で遊んだ山の中、人があまり来ない山頂であった。山の中に生える色とりどりの花が見えるほか、そこから見える景色の中にも美しい花が咲き誇り色鮮やかに広がっていた。
マーナは山の中景色を見て飛び跳ねるように喜んで、ありがとうございますと勇者に向けて笑っていた。一通り景色を見てから二人は弁当を広げていた。
弁当を見てマーナが目を輝かせる。美味しそうですとそう笑うマーナ。勇者様が作ってくれたのですかとその目はきらきらと勇者を見つめる。ありがとうございますというマーナ。早く食べようと二人食べ始めた。
日が暮れたころ勇者とマーナの二人は花見を終えて帰ろうと言う事になっていたが、その前にとマーナが花を何本か積んでいた。お土産に持って帰りますとそう言っている。
「例の幼馴染の子に持っていてあげるの」
「はい」
勇者が問えばマーナは笑って答えた。どこか寂しそうな笑み。連れてきていいのにと言ってしまうがマーナは曖昧に笑うだけだった。
遊びに来るたびマーナは雪をお土産に持って帰っていたが、結局一度も幼馴染の子を連れてきたことはなかった。何か事情があるのだろうと言う事は勇者もさしているが、お土産を持っていてあげようとするマーナを見るとつい声を掛けてしまう。
今度ちゃんと聞かなければなとそんな事をいつも考えていた。ただ中々機会は訪れず、ずっと何もできないでいた。
でもそれはある日いきなり変わるのだった。
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