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17.これが初めてでは無い
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「つまりどういうことだゆー?君の幼馴染はめちゃめちゃな食欲、フルパワーのぼくを易々と押しのける臂力、さらにはそれらを容赦なく君にぶつけてるんだゆー!?」
「ああ。でもまあ、あれでも容赦はしてると思うぞ」
「骨折られたやつが適当言うなゆー!!説得力が全然ないゆー!」
「まあまあ、落ち着けって。多分あいつも悪意があって、お前に飯を食わせようとしたんじゃねえよ」
二人っきりの教室。荒ぶるユーをなだめながら、俺は食い終えた弁当を保冷バッグの中にしまっていた。
「もう、なんであんなことをしてるのか分からないゆー!実際にナナイを危険な目に合わせてるし何から何までめちゃくちゃだゆー!」
憤慨しながらパーカーの袖を振り回すユー。言い過ぎな気はするが、たしかにこいつの言い分ももっともだ。
「そうだな、コズハは俺が見てきた中で一番めちゃくちゃな女だ」
「そうだゆー!かと思えば照れながら弁明するとかほんと訳分からないゆー!!」
「……別にあいつは微塵も照れてねぇぞ」
「ゆ!?ど、どういうことだゆー!?」
驚きのあまり、ユーは席から立ち上がった。
「俺が思うに、あれは打算のもとに行ってる。
お前が俺を担ぎ上げて校内を走り回ったのと同じだ」
「……!」
俺が見あげる先、ユーは目を見開いて息を飲んだ。口の端が震えている。
「おそらく、俺と距離が近いことを周りにアピールしてコズハと距離を置かせようとしたんだろう。図星だな?」
「ゆうぅぅぅぅっ……」
ユーは唸りながら机に突っ伏した。そして頭を抱えたまま、小さな声で呟く。
「……なんで気付いたんだゆー」
「俺はありとあらゆる交友をコズハに制限されてきた。その手口のひとつがコレだったんだよ。
ちなみに小中で三回ずつくらいこれをやられた」
「嘘っ!?仮にも幼馴染がそんなやるとかありなのかゆー!?」
「嘘じゃねえ、アイツはやる女だ」
「……た、確かに。これまでのことを考えるとやりかねないゆー」
上には上がいる。すっかり大人しくなったユーは、しょぼんと肩を落とす。色も相まって、一本だけ引き抜いたエノキタケみたいな頼りなさだ。
「で、コズハの実際の意図について俺は分からねえから推測にはなるが……。
あいつはお前のことを疑っている」
「ゆ!?!?どういうことだゆー!?」
「あいつはだいぶ記憶の途切れを気にしていたからな。直前まで何をしていたか分からないのに、目を覚ました瞬間お前がいたことをちゃんと覚えていたんだろう。
それに交友関係の全てを管理していたコズハが知らない俺と親交のある人間ときたもんだ。疑いたくもなるだろ」
「そ、そんな……じゃあご飯を口に突っ込もうとしたのも……」
「おそらく飯を食う素振りとかから疑ってかかろうとしたんだろう。お前がフロリダ州生まれかをな」
「……ここまで来ると心配とかそういうのじゃ説明がつかないゆー。神経が恐ろしいゆー……」
絶句したユーは眉間に皺を寄せた。おそらく、怒っている。それも、凄まじいほどにだ。
険しい顔で俺に聞いてきた。
「ナナイは……そんな生活に不満は無いのかゆー?」
「ねぇけど?」
「即答だゆー!?」
ユーは俺の両肩を掴むと、前後に振り回してきた。
「正気かゆー!?!?ド束縛女だゆー!!ヤンデレとかストーカーってやつじゃないのかゆー!そもそも洗脳されてるんじゃねえのかゆー!?」
「いやーどうだろうな」
「ヘラヘラ笑ってる場合じゃねえゆー!!それでナナイを振り回して怪我させてるだなんて……」
「まあまあ、ちょっと落ち着けユー」
「落ち着けるわけないゆー!何が目的でそんなことしてるかも……!」
俺はユーの次の言葉を遮るように、教室の窓の外を指さした。
「な、なんだゆー!そっちがどうしたのかゆー!?」
「いるから」
俺は極めて端的に答えた。
目を見開いて、ユーはそちらを向いた。しかしただ窓を見ても、グラウンドと真っ黒な空しか見えないはずである。
「……う、嘘だゆー!」
「俺は無意味に嘘なんかつかねえよ。ちょっとそこで待ってな」
俺はユーが見守る中、教室の窓の鍵を開けた。
「おーい出てこい。分かってんだぞ、コズハ」
数秒してお下げ髪の眼鏡っ娘が、ひょっこりと顔を出した。
「呼ばれて飛び出て西上コズハです」
「いぎゃあああああああああっ!!!!!」
ユーは驚きのあまり叫びながら飛び退き、後ろに置かれていた机と椅子十数脚を巻き込みながら転がった。
崩れた机の山にユーの白い手だけが顔を出していた。
「……そんなに驚かなくてもいいだろ」
「驚かねえはずがないゆー!!どうやって窓の外からこっちに出てきたんだゆー!?っていうかなんでナナイは知ってたんだゆー!?!?」
ユーの腕は握りこぶしを振り回している。よっぽど驚かせてしまったらしい。
俺はコズハの腋に手を入れて引っ張り上げながら、ユーの方に振り返った。
「この教室、実はベランダがあってな。コズハが横になったら、中からは見えねえんだ……よく考えたなお前も」
「ええ。照れた振りをして外に出て、隣の教室のベランダから侵入したという訳です。まあ、鍵を開けることをすっかり忘れていたのですがね。私もナナイ君のことを笑えません」
「こ、こいつら……狂ってるゆー……」
ユーの手はだらんと垂れ下がった。
「おい、ユー!大丈夫か!?
コズハ!とりあえず上から寄せてくぞ!」
「ええ、無論です。今机を片付けますからね、ユースティンさん」
その後、どうにか机の山からユーを助け出したはいいが、どこが誰の机だったか分からず途方に暮れる俺らなのだった。
「ああ。でもまあ、あれでも容赦はしてると思うぞ」
「骨折られたやつが適当言うなゆー!!説得力が全然ないゆー!」
「まあまあ、落ち着けって。多分あいつも悪意があって、お前に飯を食わせようとしたんじゃねえよ」
二人っきりの教室。荒ぶるユーをなだめながら、俺は食い終えた弁当を保冷バッグの中にしまっていた。
「もう、なんであんなことをしてるのか分からないゆー!実際にナナイを危険な目に合わせてるし何から何までめちゃくちゃだゆー!」
憤慨しながらパーカーの袖を振り回すユー。言い過ぎな気はするが、たしかにこいつの言い分ももっともだ。
「そうだな、コズハは俺が見てきた中で一番めちゃくちゃな女だ」
「そうだゆー!かと思えば照れながら弁明するとかほんと訳分からないゆー!!」
「……別にあいつは微塵も照れてねぇぞ」
「ゆ!?ど、どういうことだゆー!?」
驚きのあまり、ユーは席から立ち上がった。
「俺が思うに、あれは打算のもとに行ってる。
お前が俺を担ぎ上げて校内を走り回ったのと同じだ」
「……!」
俺が見あげる先、ユーは目を見開いて息を飲んだ。口の端が震えている。
「おそらく、俺と距離が近いことを周りにアピールしてコズハと距離を置かせようとしたんだろう。図星だな?」
「ゆうぅぅぅぅっ……」
ユーは唸りながら机に突っ伏した。そして頭を抱えたまま、小さな声で呟く。
「……なんで気付いたんだゆー」
「俺はありとあらゆる交友をコズハに制限されてきた。その手口のひとつがコレだったんだよ。
ちなみに小中で三回ずつくらいこれをやられた」
「嘘っ!?仮にも幼馴染がそんなやるとかありなのかゆー!?」
「嘘じゃねえ、アイツはやる女だ」
「……た、確かに。これまでのことを考えるとやりかねないゆー」
上には上がいる。すっかり大人しくなったユーは、しょぼんと肩を落とす。色も相まって、一本だけ引き抜いたエノキタケみたいな頼りなさだ。
「で、コズハの実際の意図について俺は分からねえから推測にはなるが……。
あいつはお前のことを疑っている」
「ゆ!?!?どういうことだゆー!?」
「あいつはだいぶ記憶の途切れを気にしていたからな。直前まで何をしていたか分からないのに、目を覚ました瞬間お前がいたことをちゃんと覚えていたんだろう。
それに交友関係の全てを管理していたコズハが知らない俺と親交のある人間ときたもんだ。疑いたくもなるだろ」
「そ、そんな……じゃあご飯を口に突っ込もうとしたのも……」
「おそらく飯を食う素振りとかから疑ってかかろうとしたんだろう。お前がフロリダ州生まれかをな」
「……ここまで来ると心配とかそういうのじゃ説明がつかないゆー。神経が恐ろしいゆー……」
絶句したユーは眉間に皺を寄せた。おそらく、怒っている。それも、凄まじいほどにだ。
険しい顔で俺に聞いてきた。
「ナナイは……そんな生活に不満は無いのかゆー?」
「ねぇけど?」
「即答だゆー!?」
ユーは俺の両肩を掴むと、前後に振り回してきた。
「正気かゆー!?!?ド束縛女だゆー!!ヤンデレとかストーカーってやつじゃないのかゆー!そもそも洗脳されてるんじゃねえのかゆー!?」
「いやーどうだろうな」
「ヘラヘラ笑ってる場合じゃねえゆー!!それでナナイを振り回して怪我させてるだなんて……」
「まあまあ、ちょっと落ち着けユー」
「落ち着けるわけないゆー!何が目的でそんなことしてるかも……!」
俺はユーの次の言葉を遮るように、教室の窓の外を指さした。
「な、なんだゆー!そっちがどうしたのかゆー!?」
「いるから」
俺は極めて端的に答えた。
目を見開いて、ユーはそちらを向いた。しかしただ窓を見ても、グラウンドと真っ黒な空しか見えないはずである。
「……う、嘘だゆー!」
「俺は無意味に嘘なんかつかねえよ。ちょっとそこで待ってな」
俺はユーが見守る中、教室の窓の鍵を開けた。
「おーい出てこい。分かってんだぞ、コズハ」
数秒してお下げ髪の眼鏡っ娘が、ひょっこりと顔を出した。
「呼ばれて飛び出て西上コズハです」
「いぎゃあああああああああっ!!!!!」
ユーは驚きのあまり叫びながら飛び退き、後ろに置かれていた机と椅子十数脚を巻き込みながら転がった。
崩れた机の山にユーの白い手だけが顔を出していた。
「……そんなに驚かなくてもいいだろ」
「驚かねえはずがないゆー!!どうやって窓の外からこっちに出てきたんだゆー!?っていうかなんでナナイは知ってたんだゆー!?!?」
ユーの腕は握りこぶしを振り回している。よっぽど驚かせてしまったらしい。
俺はコズハの腋に手を入れて引っ張り上げながら、ユーの方に振り返った。
「この教室、実はベランダがあってな。コズハが横になったら、中からは見えねえんだ……よく考えたなお前も」
「ええ。照れた振りをして外に出て、隣の教室のベランダから侵入したという訳です。まあ、鍵を開けることをすっかり忘れていたのですがね。私もナナイ君のことを笑えません」
「こ、こいつら……狂ってるゆー……」
ユーの手はだらんと垂れ下がった。
「おい、ユー!大丈夫か!?
コズハ!とりあえず上から寄せてくぞ!」
「ええ、無論です。今机を片付けますからね、ユースティンさん」
その後、どうにか机の山からユーを助け出したはいいが、どこが誰の机だったか分からず途方に暮れる俺らなのだった。
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