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61.これが最後では無い
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軽くお茶を飲んで休憩した後、俺らは雑木林に向かう事になった。あそこは宇宙船を停めるのに都合がいいらしく、スミノダイもそこに停泊させたのだという。
スミノダイに先に行ってもらい、俺らは街灯が連なる真っ直ぐな道を、横並びに歩いていた。
月初めと比べれば遥かに気温は過ごしやすくなり、薄手のカーディガンを一枚羽織れば十分暖かかった。
「……もう春だな」
俺の呟くと、横からコズハが突っかかってきた。
「とっくに春では無いですか。頭の中まで春一番にさらわれたのですか?」
「そうじゃねえよ釣れねえな。この前俺の家からダウンジャケット持ってったのはどこのどいつだよ」
「うるさいですね。何処の馬の骨とも分からないやつに味方した人から受けた恩なんて、私は知りません。ユーちゃん、ガードです、ブロックです。私の盾となり壁となってください」
コズハはそう言ってユーの後ろに隠れた。
「こらコズハ!ぼくのシャツを掴まないで欲しいゆー!」
「そうだぞ。それにもう夜中だし、騒ぐんじゃねえよ」
「……ノリが悪いですよ、二人とも」
コズハは分かりやすく口を尖らせた。妙に気合いが入っているが、理由は分かりきっている。ユーが居なくなる恐怖を、空元気で乗り切ろうとしているのだ。そして、平気なフリをしていればユーが旅立ちやすいと思っているのだろう。
だから、俺はあえて、ユーに問いかけた。
「なあ、お前が頼まれた技術開発ってどのくらいかかりそうなんだ?」
おそらく、コズハはそれを聞きたいのだ。口に出せないだけで。
「ゆ?」
ユーは豆鉄砲を食らったかのように、目を点にした。そしてしばらく考え込むように腕を組み、俺に視線を落とした。
「どのくらいがいいと思うゆー?」
口元に、余裕そうな笑みを湛えている。
「んなもんできるだけ短ぇ方がいい。だよな?」
俺が問い返すと、コズハはユーの後ろから出てきた。
「はい、もちろんです。十日……いえ、一週間がいいです」
「じゃあ3日……!研究員どもを急かして3日で終わらせて、とっとと帰ってくるゆー!」
ユーは、得意げにそう言い放った。
「出来んのかよ。ほぼメロスだぞ」
「もちろんだゆー!太陽が沈むどころか、光が届くより速く動けるのがぼくだゆー!」
「……そうですよね」
コズハは俺らの手を掴んで引っ張った。
「では、向かいましょう。私の気が変わらないうちに」
そう言って向き直った目の前には、雑木林。相変わらず鬱蒼と雑草が繁っているが、住宅街に繋がる一箇所は踏み分けられることで入口めいたスペースができていた。
そんな雑木林の入口に、棒立ちしているスミノダイの姿があった。スミノダイはこちらに気がつくと、目線だけこちらに向けた。
「来たか。こちらなんだい」
遅れをとがめることもせず、一瞥するなり雑木林の中にひとりで入っていった。草を気にすることなくずんずん進むので、スミノダイの姿はみるみるうちに草に紛れて見えなくなっていった。
このままでは、見失ってしまうことだろう。
「……ああ、もう。協調性ってものがないのでしょうか」
コズハは眉間にシワを寄せつつ俺らの手を引いた。
「コズハが協調性を問うとか、珍しいこともあるもんだゆー」
「明日あたり隕石が降るかもな。……天の川も増水するかもしれねえ」
「一旦メロスから離れてください。真面目に話をしているのですよ。追いかけなくてははぐれてしまいます」
コズハは口をへの字に曲げて、俺らの手を引いた。思えば、コズハもかなり表情豊かになった。ユーが来たこの一ヶ月で、重荷が一つずつ解かれていったのだろうか。
「ちょっと、ナナイ君。明かりを点けてください。ナナイ君が懐中電灯を持つって言ったんじゃないですか」
「……ああ、悪かったな。山賊出るかもしれねえもんな」
「離れてください」
俺が懐中電灯を点け、もはや慣れ始めた草むらに足を踏み入れた。一か月前までは歩くことすら難しい草原だったが、俺らが何度か往復した甲斐あって獣道が出来ていた。
そのため、最奥まで容易に到達できた。
「……ここなんだい」
スミノダイは一足先に到着して立ち止まっていた。後ろに何かがある、懐中電灯の光が反射しているのだ。
そこには見あげんばかりの三角錐が鎮座していた。例えるなら、鬼の持っている金棒のトゲ。表面は鉄色で凹凸はなく、光を当てると極彩色のマーブル模様が浮き上がった。材質はユーが持ってきたものと酷似しているが、二回りほど大きい。
「……はぁ、相変わらず不可思議ですね。旋盤で削り出したかのような形をしていますが、入口はどこにあるので?」
「ちょっと待っているんだい」
スミノダイがスーツのツマミを捻ると、三角錐の横側に円形のハッチがせり上った。入口は綺麗に格納されていたようだ。
「凹凸が無ければステルス迷彩を搭載しやすいんだい。無論、外部からの刺激でフレームが歪む恐れはあるが……」
「時間遡行機があれば即座に直せるので、故障のことを考えずに機能面だけ追求できる……と。変態的な技術の尖り方ですね」
スミノダイとコズハは、揃ってユーの方を見た。
「……その、ぼくに目線を向けると、ぼくが変態みたいじゃないかゆー。こっちを二人揃って見ないで欲しいゆー」
「実際、変態ではあるんだい。物理法則を曲げるなんて普通考えないんだい」
「なんてことを言うんだゆー!?」
声を荒らげるユーをよそに、スミノダイはハッチを開いた。宇宙船の中は真昼のように明るいらしい。
俺は急に飛び込んできた眩しさに、思わず顔をしかめた。
「さて、いくら浮遊式離陸とステルスの二段構えとはいえ、日が出てからでは視認される恐れもあるんだい。そろそろ準備をするんだい」
スミノダイはそう言って船の中へ入っていく。このまま離陸準備までするつもりかもしれない。
「おい、スミノダイ!」
気がつけば俺はやつを呼び止めていた。スミノダイは何も言わずに、ハッチに繋がる階段に足を乗せて振り返る。
「ユーを無事に連れて帰せよ。必ずだからな」
「……」
スミノダイはしばらく固まった後、一度頷いて見せた。そして何も言わずに光の中へと消えていく。
やや明るくなった雑木林で、俺とコズハとユーが残された。
「それじゃあ、3日で戻るから心配しないで欲しいゆー」
手を振って宇宙船に向かうユーを、コズハが引き止めた。
「ど、どうしたんだゆー?」
「……我々にとっては3日でも、ユーちゃんにとっては相当長い時間になるのでしょう?でしたら、ちゃんと残しませんと。スマホを出してください」
「ゆ、ゆ?」
「ほら、ナナイ君も。ぼさっとしてないで肩を寄せてください」
「お、おう」
俺らは宇宙船の光が逆光にならないよう、雑木林をバックに並んだ。コズハがユーのスマホを持ちセルフィーの構えを取ったので、狭い画面に身を寄せる。
「ナナイ君、もっと右です。行き過ぎ、左です」
「ユー、もっとしゃがめ。コズハの背丈に合わせねえと入り切らねえ」
「あ、確かにそうだゆー。やっぱりぼくの触手で撮った方がいいんじゃないかゆー?」
「ああ、もううるさいですね。撮りますよ、撮りますからね。仮に白目剥いてても取り直してあげませんからね」
コズハはスマホをタップし、俺らの顔にピントを合わせた。
「はい……チーズ」
眩いフラッシュがたかれ、視界がぼやけた。
「やべえ、目え瞑ったかも知れねぇ。もう一回いいか?」
「ぼくもあんまり自信ないゆー……あれ光ると思ってなかったゆー……」
「ええい、なしですなし。そんなにリテイクしたければ早く帰ってきてください」
コズハはユーにスマホを握らせた。
「……戻ってきたら、一緒にお買い物ですから」
「もちろんだゆー!カレーだけじゃなく、もっと作らなきゃだゆー!」
そう言って、ユーはコズハに触手を伸ばす。コズハはそれを右手の小指で絡めとった。
微笑ましく思いつつも、俺の肝は冷える。またあれができる前に、コズハとユーには後で言わなければならない。隠し味は隠れる程度に入れるものだと。
「ナナイ」
呼びかけたユーは、もう一本の触手を俺に伸ばした。
「ああ」
なので、俺も左手の小指に絡めた。
「色々巻き込まれたし大変だったけどよ。すぐ戻れよ、みんな心配するからな」
「……うん!もちろんだゆー!」
ユーは俺に笑い返した。
「素直じゃありませんね。『俺は心配だ』くらい言ったらどうなのですか?」
「うるせえな、伝わるだろ!あ、あとちゃんと飯食えよ!?体壊すからな!」
「分かってるゆー。コズハもナナイも、ぼくが戻るまでちゃんと待ってて欲しいゆー!」
「もちろんですよ」
「当たり前だ」
白い触手が離れる。ユーは何度も振り返りながら手を振った。
「じゃあ!二人がびっくりするくらいすぐ戻るゆー!!」
「急いで転ぶんじゃねえぞ!」
「そうですよユーちゃん。急いては事を仕損じますからね」
俺らが手を振り返すと、宇宙船の重々しいハッチが閉まった。
宇宙船は静かに、ゆっくりと浮上していく。ブースターの光も、エンジンの音もしない。スルスルと、夜闇に溶け込んで俺らの頭上から居なくなった。
まるで最初から何も居なかったかのようだ。今思えば、最初に居なくなった時のユーもこうして姿を消したのかもしれない。
「なんか、すぐ戻ってきそうだな」
俺が呟くと、コズハが俺に寄ってきた。
「……強いですね、ナナイ君は」
「別に強くはねえよ。信じてるだけだ」
「なるほど。そうですか」
コズハはすかさず俺の腕を掴むと、えげつない力で引っ張ってきた。
「何だ何だ何だ!?!?なんの意図があって急に引っ張ってきた!?」
「ナナイ君さえ良ければ、この後ちょっと出かけませんか?」
「有無も言わせねえ気だな!?どこ行くつもりだお前!」
「河川敷まで、着いてきてくださいますね?」
コズハは、気の抜けたような笑顔を見せてきた。
スミノダイに先に行ってもらい、俺らは街灯が連なる真っ直ぐな道を、横並びに歩いていた。
月初めと比べれば遥かに気温は過ごしやすくなり、薄手のカーディガンを一枚羽織れば十分暖かかった。
「……もう春だな」
俺の呟くと、横からコズハが突っかかってきた。
「とっくに春では無いですか。頭の中まで春一番にさらわれたのですか?」
「そうじゃねえよ釣れねえな。この前俺の家からダウンジャケット持ってったのはどこのどいつだよ」
「うるさいですね。何処の馬の骨とも分からないやつに味方した人から受けた恩なんて、私は知りません。ユーちゃん、ガードです、ブロックです。私の盾となり壁となってください」
コズハはそう言ってユーの後ろに隠れた。
「こらコズハ!ぼくのシャツを掴まないで欲しいゆー!」
「そうだぞ。それにもう夜中だし、騒ぐんじゃねえよ」
「……ノリが悪いですよ、二人とも」
コズハは分かりやすく口を尖らせた。妙に気合いが入っているが、理由は分かりきっている。ユーが居なくなる恐怖を、空元気で乗り切ろうとしているのだ。そして、平気なフリをしていればユーが旅立ちやすいと思っているのだろう。
だから、俺はあえて、ユーに問いかけた。
「なあ、お前が頼まれた技術開発ってどのくらいかかりそうなんだ?」
おそらく、コズハはそれを聞きたいのだ。口に出せないだけで。
「ゆ?」
ユーは豆鉄砲を食らったかのように、目を点にした。そしてしばらく考え込むように腕を組み、俺に視線を落とした。
「どのくらいがいいと思うゆー?」
口元に、余裕そうな笑みを湛えている。
「んなもんできるだけ短ぇ方がいい。だよな?」
俺が問い返すと、コズハはユーの後ろから出てきた。
「はい、もちろんです。十日……いえ、一週間がいいです」
「じゃあ3日……!研究員どもを急かして3日で終わらせて、とっとと帰ってくるゆー!」
ユーは、得意げにそう言い放った。
「出来んのかよ。ほぼメロスだぞ」
「もちろんだゆー!太陽が沈むどころか、光が届くより速く動けるのがぼくだゆー!」
「……そうですよね」
コズハは俺らの手を掴んで引っ張った。
「では、向かいましょう。私の気が変わらないうちに」
そう言って向き直った目の前には、雑木林。相変わらず鬱蒼と雑草が繁っているが、住宅街に繋がる一箇所は踏み分けられることで入口めいたスペースができていた。
そんな雑木林の入口に、棒立ちしているスミノダイの姿があった。スミノダイはこちらに気がつくと、目線だけこちらに向けた。
「来たか。こちらなんだい」
遅れをとがめることもせず、一瞥するなり雑木林の中にひとりで入っていった。草を気にすることなくずんずん進むので、スミノダイの姿はみるみるうちに草に紛れて見えなくなっていった。
このままでは、見失ってしまうことだろう。
「……ああ、もう。協調性ってものがないのでしょうか」
コズハは眉間にシワを寄せつつ俺らの手を引いた。
「コズハが協調性を問うとか、珍しいこともあるもんだゆー」
「明日あたり隕石が降るかもな。……天の川も増水するかもしれねえ」
「一旦メロスから離れてください。真面目に話をしているのですよ。追いかけなくてははぐれてしまいます」
コズハは口をへの字に曲げて、俺らの手を引いた。思えば、コズハもかなり表情豊かになった。ユーが来たこの一ヶ月で、重荷が一つずつ解かれていったのだろうか。
「ちょっと、ナナイ君。明かりを点けてください。ナナイ君が懐中電灯を持つって言ったんじゃないですか」
「……ああ、悪かったな。山賊出るかもしれねえもんな」
「離れてください」
俺が懐中電灯を点け、もはや慣れ始めた草むらに足を踏み入れた。一か月前までは歩くことすら難しい草原だったが、俺らが何度か往復した甲斐あって獣道が出来ていた。
そのため、最奥まで容易に到達できた。
「……ここなんだい」
スミノダイは一足先に到着して立ち止まっていた。後ろに何かがある、懐中電灯の光が反射しているのだ。
そこには見あげんばかりの三角錐が鎮座していた。例えるなら、鬼の持っている金棒のトゲ。表面は鉄色で凹凸はなく、光を当てると極彩色のマーブル模様が浮き上がった。材質はユーが持ってきたものと酷似しているが、二回りほど大きい。
「……はぁ、相変わらず不可思議ですね。旋盤で削り出したかのような形をしていますが、入口はどこにあるので?」
「ちょっと待っているんだい」
スミノダイがスーツのツマミを捻ると、三角錐の横側に円形のハッチがせり上った。入口は綺麗に格納されていたようだ。
「凹凸が無ければステルス迷彩を搭載しやすいんだい。無論、外部からの刺激でフレームが歪む恐れはあるが……」
「時間遡行機があれば即座に直せるので、故障のことを考えずに機能面だけ追求できる……と。変態的な技術の尖り方ですね」
スミノダイとコズハは、揃ってユーの方を見た。
「……その、ぼくに目線を向けると、ぼくが変態みたいじゃないかゆー。こっちを二人揃って見ないで欲しいゆー」
「実際、変態ではあるんだい。物理法則を曲げるなんて普通考えないんだい」
「なんてことを言うんだゆー!?」
声を荒らげるユーをよそに、スミノダイはハッチを開いた。宇宙船の中は真昼のように明るいらしい。
俺は急に飛び込んできた眩しさに、思わず顔をしかめた。
「さて、いくら浮遊式離陸とステルスの二段構えとはいえ、日が出てからでは視認される恐れもあるんだい。そろそろ準備をするんだい」
スミノダイはそう言って船の中へ入っていく。このまま離陸準備までするつもりかもしれない。
「おい、スミノダイ!」
気がつけば俺はやつを呼び止めていた。スミノダイは何も言わずに、ハッチに繋がる階段に足を乗せて振り返る。
「ユーを無事に連れて帰せよ。必ずだからな」
「……」
スミノダイはしばらく固まった後、一度頷いて見せた。そして何も言わずに光の中へと消えていく。
やや明るくなった雑木林で、俺とコズハとユーが残された。
「それじゃあ、3日で戻るから心配しないで欲しいゆー」
手を振って宇宙船に向かうユーを、コズハが引き止めた。
「ど、どうしたんだゆー?」
「……我々にとっては3日でも、ユーちゃんにとっては相当長い時間になるのでしょう?でしたら、ちゃんと残しませんと。スマホを出してください」
「ゆ、ゆ?」
「ほら、ナナイ君も。ぼさっとしてないで肩を寄せてください」
「お、おう」
俺らは宇宙船の光が逆光にならないよう、雑木林をバックに並んだ。コズハがユーのスマホを持ちセルフィーの構えを取ったので、狭い画面に身を寄せる。
「ナナイ君、もっと右です。行き過ぎ、左です」
「ユー、もっとしゃがめ。コズハの背丈に合わせねえと入り切らねえ」
「あ、確かにそうだゆー。やっぱりぼくの触手で撮った方がいいんじゃないかゆー?」
「ああ、もううるさいですね。撮りますよ、撮りますからね。仮に白目剥いてても取り直してあげませんからね」
コズハはスマホをタップし、俺らの顔にピントを合わせた。
「はい……チーズ」
眩いフラッシュがたかれ、視界がぼやけた。
「やべえ、目え瞑ったかも知れねぇ。もう一回いいか?」
「ぼくもあんまり自信ないゆー……あれ光ると思ってなかったゆー……」
「ええい、なしですなし。そんなにリテイクしたければ早く帰ってきてください」
コズハはユーにスマホを握らせた。
「……戻ってきたら、一緒にお買い物ですから」
「もちろんだゆー!カレーだけじゃなく、もっと作らなきゃだゆー!」
そう言って、ユーはコズハに触手を伸ばす。コズハはそれを右手の小指で絡めとった。
微笑ましく思いつつも、俺の肝は冷える。またあれができる前に、コズハとユーには後で言わなければならない。隠し味は隠れる程度に入れるものだと。
「ナナイ」
呼びかけたユーは、もう一本の触手を俺に伸ばした。
「ああ」
なので、俺も左手の小指に絡めた。
「色々巻き込まれたし大変だったけどよ。すぐ戻れよ、みんな心配するからな」
「……うん!もちろんだゆー!」
ユーは俺に笑い返した。
「素直じゃありませんね。『俺は心配だ』くらい言ったらどうなのですか?」
「うるせえな、伝わるだろ!あ、あとちゃんと飯食えよ!?体壊すからな!」
「分かってるゆー。コズハもナナイも、ぼくが戻るまでちゃんと待ってて欲しいゆー!」
「もちろんですよ」
「当たり前だ」
白い触手が離れる。ユーは何度も振り返りながら手を振った。
「じゃあ!二人がびっくりするくらいすぐ戻るゆー!!」
「急いで転ぶんじゃねえぞ!」
「そうですよユーちゃん。急いては事を仕損じますからね」
俺らが手を振り返すと、宇宙船の重々しいハッチが閉まった。
宇宙船は静かに、ゆっくりと浮上していく。ブースターの光も、エンジンの音もしない。スルスルと、夜闇に溶け込んで俺らの頭上から居なくなった。
まるで最初から何も居なかったかのようだ。今思えば、最初に居なくなった時のユーもこうして姿を消したのかもしれない。
「なんか、すぐ戻ってきそうだな」
俺が呟くと、コズハが俺に寄ってきた。
「……強いですね、ナナイ君は」
「別に強くはねえよ。信じてるだけだ」
「なるほど。そうですか」
コズハはすかさず俺の腕を掴むと、えげつない力で引っ張ってきた。
「何だ何だ何だ!?!?なんの意図があって急に引っ張ってきた!?」
「ナナイ君さえ良ければ、この後ちょっと出かけませんか?」
「有無も言わせねえ気だな!?どこ行くつもりだお前!」
「河川敷まで、着いてきてくださいますね?」
コズハは、気の抜けたような笑顔を見せてきた。
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