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Ⅲ:フローレスの終焉 - 追憶 / 始まりの物語 -
苦悩
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「くだらないね。――本当に」
たった一人、静かに、佇んでいる。
場所は、フローレス公爵邸の、ダンスホールである。
その場に飾られていた、宝飾豊かな刀剣を眺めつつ、青少年は、小さな声で呟いた。
握るコトが叶わない代物だ。
ならば。
この才能は、いったいなんのために、存在するのだろうか。
ユキトは、いつも、満たされない自分の心を考える。
殺すコトは、そう、良くないコト。
言われなくとも、そんなコトは、よく分かっているのだ。
だが、剣の本質とは、人を殺すコトにあるのだと、ユキトはそう考えていた。
そう。
殺す才能を持って生まれ、且つ、殺すコトを禁じられる立場に自分は生まれた。
己の存在意義とは、いったい、何処にあるのだろうか?
フローレス家の、嫡子、公爵家の継ぎ手。
だが、きっと、この場所から見える物にユキトを満足させるモノはない。
分かっている。
ただ。
境遇がソレを許さない、逃れられない運命が、ユキトの将来を固定して離さない。
そうだ。
苦痛以外の何物でもなかった。
……――消えてしまえば、良い、ぜんぶ。
そうすれば、人生をやり直すコトも、可能だろう。
考える。
嗤う。
十五にもなって、ユキトはありもしない現実に、夢想していたのだ。
己の思考に、小さく冷笑しながら、ユキトは宝刀の前から姿を消す。
役目に、努める、務めるのだ。
さあ。今日も変わらない。いつも通りの操り人形となろう。
そう思っていたのだ。
あの日。
一人の少女が世界を壊す、あの瞬間が、訪れるまでは。
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