上 下
30 / 56
Ⅵ:躊躇いと失敗 - doomsday -

〝天を仰ぐ〟 / Dark clouds.

しおりを挟む

 xx hours ago...
 Dark clouds.
 Over.

『〝どうして、こう、なったんだ――……?〟』

 そう、ユキトは静かに、心の中で独り言つ。
 黒い空。
 今、彼は地面に背を付けながら、大きな空を眺めている。
 動けない。
 ただ。
 頭の後ろにはとて暖かな、柔らかな、そんな感触が広がっている。

「ユキト。おはよう」
「馬鹿アリス。本当に。キミはどうしてくれるんだ――……」
「…………」

 ばつが悪そうな表情を浮かべ、笑っているような困っているような、戸惑いに近い感情を覗かせている。
 膝枕だ。
 今、ユキトは、アリスの膝の上に倒れ込んでいる。
 仰向けのまま、アリスの顔を、空を眺めている。
 本当に、どうして、こうなったのだろう。
 記憶の底を起こして、そう、反芻する。

 ……――そうだ。アレは。いつも通りの殺人だったんだ。

 変わらない。
 あるとすれば、今立っているこの地が、〝ローナ〟という因縁の土地であったというコト。
 それだけのコトであった。
 否。
 それだけのコトが、アリスにとっては、きっと〝大問題〟であったのか。

「キミがそこまで――……。ボクのコトを気に病んでいたなんて。思わなかったんだ」
「違う。ユキト。それは違うのよ」
「?」
「私が気に病んでいたのは。貴方のコトではなく。ただ。私自身のコトについてだもの」

 様子がおかしい。
 その兆候は確かにあったものの、ユキトはそれを『時間が解決する』と軽く考えて、その結果がである。
 言葉にできない、ただ、最悪の状況であった。

 すり切れそうなくらい、少女アリスはずっと、悩んでいたのだろう。

「ああ――。馬鹿はどっちだって。ね」
「え?」
「キミを一番側で支えるハズのボクが。この様じゃ。当然の結末だよ」
「違う。ぜんぶ。私が悪いの」

 懺悔。
 アリスの瞳が微かに揺れ動いているのを、目の当たりにした上で、ああ、と、ユキトは自らの過ちを確信した。

 〝失敗〟。

 そこから発生する結末、二人は、いったい何処へ行くのだろうか?
しおりを挟む

処理中です...