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Ⅷ:終わりの足音 - 災禍 -
/ Side Y d e
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まるで、時間がユキトとアリスにだけ流れているような、そんな錯覚を覚えていた。
本当に錯覚なのか、現実か、あるいは、神々が施した最期の悪戯なのか。
分からない。
「ユキト……。ねぇ。ユキト……ッ。起きなさいよ……ッ!!!」
泣き、そして、叫ぶ。
アリス。
ああ、キミも、ボクの最期を理解はしているのか。
良かった。
心の底から、ユキトは、安堵していた。
最期の言葉を交わせる、その事実を、嬉しく思う。
大事な時間だ。
「起きてはいるさ……。ただ、目を開けられないだけで、ね」
そう告げれば、より一層に、アリスはユキトの身体を強く抱きしめる。
逃さない。
そう、主張でもするかのように、力強く。
「馬鹿なコトを言わないでっ!!」
「馬鹿はキミの方だろう。まったく。何度言えばキミは分かるんだい……?」
「え……?」
「駄目なんだよ。アリス。そのままじゃ――……」
閉じた目、それでも、ユキトは小さく微笑んだ。
子どもの間違いを指摘するかのように、ただ、優しい言葉だった。
アリスの手を、力なく、ユキトはそれでも精一杯に包み込んだ。
「〝キミは。その方向へ。振り切っちゃ駄目だ〟」
力強く、美しく、気高い存在で在り続けなければならない。
神々は関係ない。
笑っていれば良い、それが、どんな形でも。
〝スマート〟に、ソレを口酸っぱく言っていたのは、キミが大事だから。
そう言って、ユキトは、笑うのだ。
「貴方がいない。そんな世界になんて。意味がないのよ……ッ!!」
「そうだね。分かってる。だからさ――」
穢れは、ぜんぶ、ボクが引き受ける。
先に逝って、待っている、その先にきっと世界は在るから。
その世界で。
今度は、きっと、幸せに――。
「ユキト……?」
すうっ、と、静かに彼は呼吸を止めていく。
動かない。
眠るように。
安らかに、穏やかに、彼は息を引き取った。
もう、言葉も、色も、熱もない。
ただの、骸、ソレだけ。
慟哭。
「あぁ――……。ああ、ァあああアァ――ッ!!!!」
空気すら震える、その感覚に、悍ましい狂気を覚えた人間が二人いた。
剣王と皇帝。
関係ない。
たった一人、青年のために、涙を流して叫びを上げ続ける。
少女の姿。
その皮を被った魔女である、と、殺戮少女は長らくそう噂されていた。
生ぬるい。
今の彼女は、もはや、人の形をした狂暴な化物、そのものである。
目の前の二人を絶対に殺す。
それだけを考える。
〝殺戮少女〟。
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