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Ⅹ:神判の刻 - judgment -

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     ◇

 アリスは、一人、地獄への道を歩いて行く。
 誰も側にはいない、神様も、誰もいない。
 独りぼっちだった。

「楽しかったわね――。ねぇ。ユキト?」

 紅色の空に向けて、小さく、思いを馳せる。
 思い起こす。
 ユキトと一緒に歩いてきたすべての日々を。

 彼の、暖かい、想いを。

 今は、もう、すべてが夢物語の中の話。
 手は届かない。
 彼の姿を、見る、ソレすらも叶わない。

 堕ちた天使、そんな存在が行き着く場所、〝地獄〟である。
 旅路の果て、その最期に辿り着いた場所が、アリスの行き着く終焉であった。
 役目を果たせなかった、ガラクタが、置き去られる場所へ。

 一滴。

 涙が、静かに、零れ落ちた。
 だが、ソレは、誰に触れるコトもなく消えていく。
 深い、深い、虚空の底へ。

 彼女は、静かに、その身を投じて。
 消える。
 昏い、底、地獄へ。

「待っているから。私は。いつまでも」

 遠い。
 何処かの世界で、彼らの、運命はすれ違った。
 交わるコトは、ない、××では。

 すべてが、そう、終わったのだ。

 報われた人間は、そう、誰もいない。
 そんな――。
 救われない、最悪の、物語である。
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