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Ⅺ:そして、未来へ - in the end... -

〝悲愛の想い唄〟 / 現代

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 その昔。
 神々に導かれし、神の子が、存在したと云う。
 人々を裁き、世に泰平をもたらすために、その身を血に染めた。
 その名を〝アリス〟と呼ぶ。
 数多の伝承。
 だが。
 もっとも名を残したとされる、そのアリスの姿は、金色の髪に紅い眼をした幼い少女であったと云う。
 今もなお、畏れと共に、残り続ける伝承である。

 片や。

 その時代から、少し、後の話。
 冥府にて、魔道を歩いた、怖ろしき者がいたと云う。
 彼の者。
 人を喰らい、魔を喰らい、神々をも喰らったとされる。
 神々の世界を、一手に、たった一人で滅ぼしたとされている。
 〝神々の黄昏ラグナロク〟。
 その名を〝×××〟と云う。
 漆黒を携えし青年。
 憎悪。
 憤怒に燃えた彼の者の姿を、誰もが揃って、こう呼んだ。

 〝〟と。

 その答えは、ただ、愛する者のために。
 ソレだけのために、彼は、世界を滅ぼしたのだと云う。
 切なく、愛しく、想いの溢れた復讐劇。

 この世界は、今、そういう犠牲の果てに、成り立っている。

 誰もが、そう、お伽噺だと思い込んでいる。
 だが――。
 実際、ソレは、どうなのか。

 世界でもっとも有名な戯曲、想い唄、ソレは本当にまやかしの中の出来事だったのか。

 誰もが、ソレを、知ろうとはしない。
 赦されない。
 の平穏を、穢す、その行為は死を以て償う他にない。

 そう、あるじが、決めているのだから。
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