こねくとノイズ

4. 忙しく騒がしい朝御飯

　朝、ほんの少し窓が開いていたのか、涼しい風でサクラが目を覚ます。まだ少し眠たいのか頭がボーッとしつつもゆっくりと体を起こした
「……あれ？」
　隣にいたはずのメメやノイズが居ないのを見て、ふぅ。とため息をついた
「朝には帰るって言ってたけど、本当に帰ったんだ。というか、夢だったんじゃ……」
　そう独り言を呟きながらベットから降りようとした時、左手の指にコツンと何かが当たり見ると、枕元に置いていた本が少し移動されて置いていた
「夢じゃなかったんだね」
　その本を見つめまた呟いていると、扉の向こうから何やら騒がしい物音が聞こえてきた
「サクラ、起きてる？朝御飯食べる？」
「食べる！すぐ降りるね！」
　一階からサクラを呼ぶ父親であるリンドウの声に慌てて返事をすると、大急ぎで着替えて、バタバタと足音を立てて階段を降りると、朝御飯の匂いが漂うキッチンに入った



「お父さん、おはよう！……って、ええっ！」
「おはよう。起きるの遅いね」
　キッチンに入ってすぐ目に入ったのは、ご飯を頬張りサクラに話しかけるノイズの姿。帰ったと思っていたサクラは驚いて呆然としていると、リンドウが困った顔でサクラの分の飲み物をテーブルに置いた
「サクラ、お友達が泊まっていたなら言わないとダメだよ」
「あっ、えーっと……。ごめんなさい……」
　ちょっと怒られて、しょんぼりするサクラ。ノイズは、その様子を気にすることなくご飯を食べている
「ほら、サクラも暖かいうちに食べて。僕はもう仕事に行くから後片付けお願いね」
「うん……。行ってらっしゃい」
　ノイズと同じ朝御飯が置かれているのを見て、リンドウに小声で返事をするサクラ。その様子を見てリンドウがサクラの頭を優しく撫で微笑むと、キッチンから出て、急ぐように家を出ていった


「メメー。もう出てきていいよ」
　バタンと玄関の扉が閉まってすぐ、ノイズがメメを呼ぶと、テーブルの上に現れたメメが二人の朝御飯を見て、サクラの朝御飯をクンクンと匂いをかいだ
「あら、美味しそうなご飯ね」
　そう言うと、サクラの朝御飯のおかずを一口食べた
「それはサクラのだよ。メメのはこっち」
「あら、失礼」
　ノイズが残した朝御飯を食べるため、テーブルを移動するメメ。サクラもメメが食べ残したおかずを食べはじめる
「ねえサクラ、今日なにか予定あるの？」
「予定っていうか、今から学校に……」
　ノイズの質問にご飯を食べながら答えると、ノイズがうーんと腕組みをして、何やら考え込みはじめた。その様子をサクラとメメがご飯を食べつつ首をかしげながら見ていると、突然ガタンと椅子の音をたてて立ち上がった
「今日は学校をサボって私とメメと行動しよ！」
　バンッとテーブルを叩き大声で言うノイズに、驚いて呆然とするサクラ。メメは呆れたように、はぁ。と深いため息をついた
「私と今日一日あっちこっち行くよ。良い？」
「えぇ、でも……」
　グイグイと顔を近づけながら言うノイズに返事が出来ず、サクラがメメを見て助けを求めた
「ダメよ、困っているじゃないの」
「でも私達の事とか、本の説明とか早い方が良いでしょ？」
「そうかもしれないけど、サクラはちゃんと本を持つことを良しとはしてないでしょ？」
「えー。サクラ、そうなの？」
　と、ノイズが問いかけながらサクラを見る。その視線に一瞬ビクッとしたサクラが、ゴクンとご飯の塊を飲み込んだ

「さて、私はそろそろノオトの所に戻らないと」
　いつの間にか朝御飯を全て食べ終えていたメメが、サクラの頭の上に乗りながら、そう言うとノイズがちょっと慌てた様子で椅子に座り直し、サクラの食器をグイッと寄せた
「ちょっと待って、私達も一緒に行く。サクラ、ほら早く食べて」
「えっ、う、うん……」
　ノイズに急がされ慌てて食べはじめるサクラ。その間にノイズの頭の上に移動したメメがまた、はぁ。とため息つきながら、軽く頭を叩いた
「後で怒られるわよ」
「ノオトに怒られるのは慣れてるから大丈夫」
　ノイズからの、のんきな返事を聞いてメメがプイッと顔を背けると、カチャンと食器の音が聞こえた
「食べ終わりました！食器を片付けますから、ちょっと待っててください！」
「了解。ちょっとサクラの部屋行くね。メメ、一緒に行こ」
　ノイズの分の食器を持ちガチャガチャと食器の音を立てながら椅子から立ち上がると、洗いはじめたサクラ。ノイズも立ち上がながらサクラに返事をすると、ご機嫌で階段を登りサクラの部屋に入った

「なにか本に異変でもあったの？」
「ううん。むしろ順調過ぎて不安になるくらい」
　と、サクラがベッドに置きっぱなしにしていた本を二人で見ながら話していると、本がふわりと浮かびパッと消えてしまった
「どこに？」
「サクラのところかな。本も気に入ったみたいだね」
　メメの問いかけにクスクスと笑いながら返事をするノイズ。それでもまだ不満そうなメメを抱きしめると、部屋の扉を開けた
「メメの不安も消えたみたいだし、サクラも連れて、そろそろノオトの所に行こっか」