こねくとノイズ

68. 力があるなら

「本当、サクラちゃんはこの世界で寝てばかりね。観光の一つも出来なかったのは残念ね」
　施設の仮眠室に連れてこられ眠るサクラを見てソナタがフフッと笑う隣でノイズが少しうつ向きつつもサクラを見ている
「今日お家に帰す予定だったのよ。予定変更であたふたしているわ」
　ソナタがサクラを見つつノイズに話すように呟くと、仮眠室がふと静かになった

「モモはサクラちゃんの術の中に隠れたわ。魔力に負けるあなたが呼んでも無理ね」
　と、またソナタが言うと、ノイズが少し顔を上げ、サクラを見ながら問いかけた
「お母様、サクラをこれからどうするの？」
「日にちは変わるけど、元の世界に必ず戻す予定よ」
　そう返事をするとノイズがソナタを睨むように見る。その視線を見てソナタが、はぁ。と大きなため息をついた
「あのね、これはサクラちゃんのためなのよ。サクラちゃんがもし、この世界にいるとなればどうなるかわかっている？」
　少し言葉強めにノイズに問いただすと、ノイズはゆっくりと小さく首を横に振った
「ここ数日、この近辺の術式が強くなっている。それは術を使う者だけでなく、日常あまり使わない人達の魔力もよ」
「それはサクラが来る前から……」
「最初に会ったのはいつ？」
　ノイズの返事の途中、また言葉強めに問いかけると、返事が出来ず顔を背けるようにまたうつ向いた
「サクラちゃんの存在を色んな人達に知られる前に、帰すのがいいの。元の世界は魔力を使うことさえ大変だから、来ることはないだろうし」
「でも……」
「この世界にいたら、サクラちゃんの力を欲しがる人達からノイズは守れるの？」
　眠るサクラを見ながらソナタが聞くと、ノイズも
まだ起きる気配のないサクラを見て何も言わなくなり、また仮眠室が静かになった。しばらく二人でサクラの様子を見ていると、ソナタが部屋の入り口の方に歩き、ドアノブに手を掛けた時、少し振り向きノイズを見て声をかけた
「ノオトちゃんがそろそろ来るらしいから、二人とも、ちゃんと休んでおくのよ」