デスパレートレアス

シャオえる

文字の大きさ
47 / 98

47. 苛立ちを押さえたまま

しおりを挟む
「ほらほら、帰るんだ。あの本にはまた会えるから」
 リンに渡された本を見つめ動かないレアスを諭すリン。状況が読めないツムギは、リンに帰るように言われて、ルトと一緒に戸惑っている
「リン。あまり、余計なことを言わないでくれる?」
 勝手に本棚にあった本をレアスに渡されて、苛立ったリンに声で話しかけるミナモ。その声に、ただニコッと笑うリン。三人の不穏な様子にツムギが戸惑いうろたえながら、恐る恐るリンに話しかけた
「あの、リン先生……」
「ツムギ君。レアス君を無理やり引っ張ってでも連れて帰ってくれるかい?」
 リンがそう言うと、本を抱きしめうつ向いているレアスに気づいたツムギが、慌ててレアスに声をかけた

「レアス、なんかよく分かんないけど帰ろう。ララも帰ろう。ねっ!」
 ぎゅっと強く手をつかんで帰ろうと引っ張るが、ミナモが持つ本に目を向けたまま動かないレアス。そのせいで、ツムギの引っ張る力がどんどん強くなりレアスの腕が赤くなっていく
「帰る前に、あの本を……」
「君では今はミナモからあの本を取り返すなんて無理だ。だから、ここは一旦帰って、これからを考えるんだ」
 と、リンの言葉を聞いたツムギが、レアスの腕を離して、ミナモもじーっと見つめだした
「ミナモ?あの子、ミナモって言うの?」
「そうだよ。君達よりもかなり年上のお兄さんだよ。ミナモさんが正しいかもね」
「へぇー。ミナモさん……」
 ツムギやレアス達に見られて、顔を背けたミナモ。すると、リンがクスッと笑ってメルガを呼んだ

「ほら、ミナモの紹介も済んだことだし、急いで帰りなさい」
「レアス。帰ろう」
 リンの言葉にまた慌ててレアスの腕を引っ張ると、今度は抵抗するでもなく、頷いたレアス。それにホッと胸を撫で下ろしたツムギの隣に、メルガが二人の体に寄り添い甘えだした
「けど、その本を返さないと許さないから」
 リンに少し睨みながらそう言うが、リンは返事をすることなくニコニコ笑っている。不満がありそうでも、ツムギの手を繋ぎ引っ張られるようにふわりと空を飛び、暗闇の中、ツムギ達の姿が消えていった。その後ろ姿を寂しそうにメルガが見つめていると、リンが頭を撫でてあやしていると、今度はミナモが不満げな顔をして、リンに話しかけた

「あの本は、僕の本棚にあった本。なぜ持ってきた」
「たまには持ち主に返そうかなって思ってね」
 メルガの方を向いたまま、フフッと微笑み答えるリンにムッとするミナモ。レアスの本を開いて書いてある魔術を読み出し、クロウを呼ぶと、本をパタンと閉じ、クロウと一緒にリンに向かって飛んできた
「前の時なら本棚の管理人として、良いだろうけど、今は僕だ。勝手なことは許されない」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...