デスパレートレアス

シャオえる

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63. 迎えに行くよりこの場所で

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「寝すぎた……」
 レアスが部屋の窓を開けて呟いていた、そのすぐ後目が覚めたツムギがゆっくりと体を起こした
「ルト、ララ。起きて」
 いつの間にか足元で寝ていたルトとララの体を揺らし声をかけても起きない二人に、はぁ。とため息ついてそーっとソファーから降りて、ふと窓を見ると眠る前よりも暗くなった
「レアス、起きてるかな?」
 そう呟くと、スヤスヤ眠るルトとララをソファーに残して、二階にあるレアスの部屋へと足音を立てないようにゆっくりと歩いていく。薄暗い中、階段を登りレアスの部屋の前につくと、コンコンと小さく扉を叩いてすこし待ってみても、レアスからの返事は来ず、ツムギがふぅ。と一つ深呼吸をした

「レアス、開けるよ」
 そーっとレアスの部屋の扉を開けると、部屋には誰もおらず、窓が少し開いていて、ツムギの周りにふわりと風が吹いた
「本もないし、一人で出掛けたんだ……」
 ベッドやテーブル、椅子を見ながら、開いている窓を閉めるついでに、少し窓から顔を出して外を見ていると、急にさっきよりも強い風が吹いて目を閉じた。すぐに風が止み、そーっと目を開けると、ツムギの目の前にメルガがいた
「メルガ!帰ってたんじゃないの?」
 突然現れたメルガに驚くツムギ。一方、メルガはツムギに頬を擦り寄せ甘えると、今度はツムギに背を向け小さく尻尾を振ってツムギを待つように、ちらちらと振り向いている

「私は行かないよ、レアスが帰ってくるまで待ってるから。代わりにメルガがレアスの所に行ってくれる?」
 と、メルガの行動を見てツムギがそう言うと、少し寂しそうに振り向くメルガに、ツムギが両手を伸ばしてメルガを呼ぶ
「レアスに会ったら、美味しいお菓子作って待ってるって伝えてね。メルガの分も作ってるからね」
 伸ばした両手に頭を擦り寄せるメルガをぎゅっと抱きしめそう言うと、メルガがツムギの頬に擦り寄り、ふわりと浮かんで夜の空へと消えていく。見えなくなっていくメルガに手を振り見送ると、ゆっくりと窓を閉め、ルトとララがいるリビングへと向かっていく。まだソファーで隣同士で眠る二人を見て、クスッと笑うとそーっとリビングを出てお菓子を作るために、キッチンへと歩いていく
「ルトもララも寝ているし、今のうちに作っておこう。たくさん作らなきゃだね」








「この術は、私の力では足りない……」
 その頃、レアスの家から大分離れたツムギの知らない森の中にレアスが一人きりで、月明かりの光を頼りに本を読んでいた
「でも、お母様は私が使えない魔術は書かないもの……」
 そう呟くと、パタンと本を閉じ月を見ると、いつもよりも光る満月に本を重ねて、いつもよりも深く深呼吸をした
「私がお母様の代わりに、術を成功させるの……。本はその為にあるもの」
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