デスパレートレアス

シャオえる

文字の大きさ
79 / 98

79. 呼ぶその人は意外な人

しおりを挟む
「はい、どちら様ですか……」
 家の呼び鈴が鳴り続ける中、そーっと玄関の扉を開けると、目の前に尻尾を降りツムギを見つめるメルガと呼び鈴を押し続けるルトとララがいた
「ルト、ララ!メルガも!」
 三人を交互にぎゅっと抱きしめるツムギ。メルガを抱きしめていると、ルトとララがツムギの腕に強くつかんで、腕に少し赤く後がついた
「良かった!心配したよ!」
 元気そうな三人を見て、ホッと胸を撫で下ろしていると、ルトが泣きそうな顔でツムギの頬に抱きついた
「お家入って、休も。みんな疲れたでしょ」
 ルトを抱きしめて、くるりと振り向くとさっきまであったはずのレアスの家が無くなり、辺りはまた真っ白な世界に変わっていた
「あれ?お家は?」
 キョロキョロと辺りを見渡してみても、見当たらないレアスの家。ルトとララも一瞬の間に消えたレアスの家に驚き戸惑っている一方、メルガは家のあった場所の反対側をジーッと見つめている
「メルガ、どうしたの?」
 と、ツムギが不思議そうに声をかけると、少し振り向いてすぐ、ジーッと見つめていた先へと走りだした
「はぐれちゃうよ、待って!」
 声をかけても止まらず、どんどんツムギ達から離れていく。姿が少しずつ見えなくなって、慌てて後を追いかけていくツムギ。ルトとララも慌ててツムギの肩に乗り振り落とされないように、ぎゅっとつかんでいると、突然メルガの姿が消えてしまった。慌てて走り続けていたツムギが足を止めると、勢い余って倒れてしまった


「痛い……。ルト、ララ。大丈夫?」
 ゆっくりと体を起こし座るツムギ。肩に乗っていたルトとララも床に落ちて、少し痛そうに体を起こした
「お帰り。大分豪快に転けたみたいだけど、どこか痛むかい?」
「リン先生……。えーっと、大丈夫と思います」
 と、リンに返事をしながら辺りを見渡すと見覚えのある本棚のたくさんある場所に、ちょっとホッとするツムギ。その返事を聞いて、少し年季の入った本を持ったリンがニコッと笑うその側で、ミナモが少し機嫌の悪そうな顔をしてツムギを見ていた

「あれ?君たちだけかい?レアス君は?」
 しばらく待ってみても戻ってくる気配がなく、ツムギに問いかけていると、ツムギより少し先に帰っていたメルガが、ツムギの側に駆け寄り甘えるように体を擦り寄せだした
「えっ。レアス、ここにいないんですか?」
 リンの言葉を聞いて、メルガの頭を撫でながらまた辺りをレアスを探すように辺りを見渡すツムギ。ルトとララも同じく本棚の周りを見渡しはじめた
「困ったな。本の中にまだ残っているのか」
「いや、どうやら、本人が望んでいるようだ」
 本棚を見つめ、ため息まじりに答えるミナモの言葉にリンが困った顔をしていると、突然ツムギがミナモの所に走り出した

「あの……。私、レアスに会いに行きたいんです……無理ですか?」
 ツムギからの突然の提案に、リンがまた困った顔になった
「うーん。帰りはメルガと一緒からどうにかなるだろうけど……」
「行きはクロウに任せよう。メルガには、帰りの体力を残してもらわねばならないからな」
 リンにそう言うとミナモがクロウを呼ぶ。すると、バサッと大きな翼の音を立てたクロウの羽がヒラヒラと本棚の周りに落ちて、それと同時にクロウもミナモの隣にふわりと舞い降りてきた
「意外ですね。ミナモが面倒なことをするなんて」
 ミナモからの予想外の言葉にリンがクスッと笑うと、それに気づいたミナモがまた機嫌の悪そうにリンの言葉に答えた
「本の中と本棚が変わってしまっては困るからな。これ以上、面倒なことになる前に、あの娘を呼び戻そう」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...