デスパレートレアス

88. 思い出を呼び戻して

「ヒカリは、一体何をしようと……」
「本を全て消し去るつもりだ。ヒカリの魔力とこの本の数なら、まあ不可能ではないな」
　ノスカがリンの呟いた言葉に答えるようにそう言うと、リンが不思議そうに首をかしげた
「本を？なぜ……」
「娘のためらしいが、深くは知らんな」
　と、二人が話しているとクロウが床にペタンと倒れてしまった
「だいぶ疲れてたようだ。クロウを休ませないと……」
　クロウの頭を撫でながらミナモがそう言うと、リンがふぅ。とため息つきながら、ヒカリの魔方陣を見た
「仕方ない。メルガだけでも呼び戻してみよう。本が雨に濡れては助けようにも出来なくなる……」
　そう言うと、メルガを呼ぶため深呼吸をするリン。すると、リンの足元に現れた魔方陣をはばかるように、リンやミナモと、クロウの周りに更に雨粒が強く降り注ぎだした
「クロウが危ない。早く、メルガを呼べ！」
　雨にやられて息も絶え絶えのクロウを抱きしめ、ミナモがリンに叫ぶ。雨に負けじとメルガを呼ぶために、術を詠み続けるリン。魔方陣の光が強くなり、大粒の雨がほんの少し弱まりだした





「凄い本の数……。あの本に、レアスのことが書いているの？」
　その頃、ヒカリの周りに次々と現れる本に、驚き呆然としていたツムギが、レアスに恐る恐る声をかけると、それに答えるようにレアスがゆっくりと頷いた
「多分そうだと思う」
「でもなんで……」
　と、またレアスに問いかけるとツムギの側でぐったりと倒れていたメルガが、ゆっくりと立ち上がりだした
「メルガ、大丈夫？」
　慌ててメルガを支えるツムギ。少し辛そうに立ち上がると、ツムギの顔を一瞬見た後、ふと姿が消えてしまった
「あらあら、リンが呼んだのね。メルガの力も必要だったのに……。残念ね、もう本は集まったのにね」
　メルガが居なくなり呆然とするツムギとレアスに対し、ヒカリが残念そうにそう言うと、床に落ちている本を二冊手に取ると、ふわりと本が浮かびレアスとツムギの所に飛んできた
「レアス、ツムギちゃん、その本を読んで」
　ヒカリが微笑みながらそう言うと、本が二人の前にゆっくりと床に落ちた
「読めません。ルトもララもこんな状態じゃ魔術なんて……」
　ツムギがルトをぎゅっと抱きしめ、何度も首を横に振りながら答えると、レアスもララを抱きしめ、側にある本を見つめていると、ヒカリが困ったように、はぁ。とため息をつくと、ヒカリの周りにあった本達が次々に浮かびだした
「仕方ないわね。面倒だし、不本意だけど私一人で術を成功させないといけないのね。でも、それもあなたのためだものね、レアス」