愛とオルゴール

夜宮

文字の大きさ
9 / 36
愛とオルゴール

07. 家族の話し合い

 アンソニーに送ってもらって屋敷に戻るとお祖父様が私を待っていると言われた。

 慌てて支度をして指定された部屋へ入るとそこには祖父母とネイサンと父が待っていた。

「お待たせして申し訳ありません」

「いや、いいんだ、ジェシカも座りなさい」

 祖父の言葉を受け、私はネイサンの隣に腰掛けた。ネイサンは私を見ると笑顔を見せた。

 私はその落ちついた様子に安堵し、微笑み返した。

 私たちの遣り取りをみていたのだろう、私が座ると祖父が軽く咳払いをして話し始めた。

「今回、エヴァンがネイサンを他家に婿養子にしたいなどと言い出したこと、更に、ネイサンの代わりにリカルドを跡取りにすると言っていること、これらを私はロートレック侯爵として認めない」

 祖父の言葉に父が反応した。

「父上、ですがこれには事情があるのです。ネイサンにとっても決して悪い話ではないのですから、私の考えを聞いてください」

「事情とはなんだ、エヴァン」

「それは……この場では言えません。ですが」

「……ここで言えないような事情か。だが、お前はなぜこの家の跡取りについて、侯爵である私にはなんの相談もせずにまるで決定事項のように子供たちやニュートン伯爵に言ったのだ?」

「それは……」

「子供たちやダニエルを説得できれば私が許すと思ったんだな?」

「……」

 祖父は吐息をついた。

「エヴァン、まず初めに言っておく。リカルドにロートレック侯爵家を継承させることはない。確かにあの子はお前の息子だ」

「ならば」

「聞きなさい。私は平民の血をひくリカルドを侯爵家の跡取りにはしないと言っている。

リカルドを跡取りにすることは万に一つもない。あの子供には最初から権利がないと言っているのだ。

 ロートレック侯爵家はネイサンに継がせる。万一、ネイサンに何かあったとしたら次はジェシカが産む子が権利をもち、それも難しければ私の弟の子や孫から跡取りをえらぶつもりだ。

 このことはお前がナターリアと婚姻を結ぶ際にはっきりさせたはずだぞ、忘れたことは言わせない。

 お前は取り決めを破ってリカルドを生ませた。私たちはその事に目を瞑りはしたが、跡取りについて、契約を違えることはない。

 ここまで言われなければわからなかったのか?

 なぜた。お前は何を……。お前は……子供達だけでなく、死んだナターリアに申し訳が立たないと思わないのか?」

「父上……」

「とにかく、話はそれだけだ。この件についてこれ以上話す必要はない。それでいいな?」

「待ってください、それでは」

 祖父の言葉に尚も食い下がろうとする父に今度は祖母が鋭い声をあげた。

「いい加減にしなさい、エヴァン。見苦しいわ。貴方は父親なのよ。ジェシカとネイサンの父親なの。わかっているの?」

「ですから私は父親として考えた末に」

「やめて、エヴァン、うんざりよ。いったいどうして……そもそもなぜ今更こんなことを……」

 祖母は俯いて片手で顔を覆ってそう言った。

 私とネイサンは祖母の言葉に同事に違和感を感じたようでお互い顔を見合わせた。

 でも、祖母はもちろん、祖父も父も祖母の発言について何もおかしいとは思わなかったようだった。

 私がそのことを問いただそうとしたとき、祖父が言った。

「とにかく、私たちの意見は変わらない。

 ジェシカ、ネイサン、お前達は何も心配しなくてよい。ロートレックはネイサン、お前のものだ。

 エヴァン、お前は責任を持ってこの馬鹿げた騒ぎを終わらせなさい。わかったな」

 そう言って祖父母は退室した。

 私とネイサンも頭を抱えて座る父親を置いて部屋を後にした。

 なぜ今更といった祖母の言葉の意味を誰かに問いただすべきか考えながら。



    

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

上手に騙してくださらなかった伯爵様へ

しきど
恋愛
 アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。  文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。  彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。  貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。  メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

心の中にあなたはいない

ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。 一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。

あなたの愛が正しいわ

来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~  夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。  一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。 「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。