王太子レオールと側近セバス(完結)

にのまえ

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縁日の夜(前)

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毎年、五穀豊穣を祈る豊穣祭が近くの村で行われる。その祭りを行う為にモードラー公爵は個人で神様を祀る神社を国のあちこちに建造した。

その神社では豊穣の神を祀っているらしい。まだ俺は国王陛下に任せられていないから、詳しいことは紙面上でしか知らない。

(お正月には国民がお参りするんだよな)

そして、今日。祭りが開催されていることは知っている。村人たちは神輿というものを担ぎ村を回る。夜には盆踊りお踊り、食べ物などを売る出店が神社の周りに並ぶ。

村人、1人1人に代金の代わりに2000バル券が配布されると聞いた。

(その券は国民から納められた、税金から出されているんだよな)

人々はその券を持ち屋台で食べ物と交換する。前モードラー公爵は無料でと言ったが、前国王はそれでは、国民たちの物の価値が分からなくなる。

(モードラー公爵のおかげで、食べ物が安く手に入り、国民は困らなくなった)

2000バルの券を握り子供たちは友達と計算しながら、食べ物を交換したりゲームで遊んで学ぶのも楽しみだ、と前国王に言われて。前モードラー公爵は素晴らしいと手を叩き、絶賛したと父上に話を聞いた。

一屋台50バルから高くても200バル。皆は2000バルあれば、大人から子供まで腹いっぱい食べられるだろう。

メニューは、たこ焼き、モンスター焼き、リンゴ飴、イチゴ飴、綿菓子まだまだあるらしい。

(俺も行ってみたいが、セバスと2人で行けば目立つな)

行けない俺たちの為に別荘にも、出張屋台が毎年来てくれる。去年はたこ焼きと果実水の屋台だった。今年はどんな屋台が来るか楽しみだ。そして、祭りの終わりに夜空に上がる花火も楽しみの一つだ。

「レオール様、戻りました。食堂で空間魔法(ドーム)を覚えてきました」

「お疲れさん、セバス。魔力を使ったのだろう? ゆっくり休んでくれ……、……ん? どうした? セバス、何かあったのか?」

俺に何か言いたそうなセバス。

「それが、2人はさっそく別荘の庭にドームを作り、その中で……何かやっているようです」

(アーサー、はやいな)

「そうか、想定内だ」

体力が余り、やりたい盛りなのか。しかし、相手のリュートの体のケアー出来ているのだろうか? 無理をさせていないだろうな。

(……心配だな)

「セバス、アーサーの側近に体は平気かと聞いてやってくれ。あと何か悩みがないかも聞いてくれ」

「はい、昼食の後にでも聞いてみます」

「そうしてくれ、セバスも体調が悪い時には俺にすぐ言えよ」

「ありがとうございます、レオール様」







「リュート・いま話せますか。」



向こうも忙しくて、すぐに返事は返って来ないと思って。紙を見える位置に置き部屋のミニキッチンで、明日の果実水の仕込みを始めた。

(レオール様のお好きなオレンジの果実水と、苺の果実水を作りましょう)

美味いセバスと彼の喜ぶ顔を思い浮かべて、愛を込めて作る果実水。少し愛が重すぎでしょうか。

「いいえ、私の好きな人ですからいいんです」

明日のお昼はサラダと食べる、パンケーキを焼きましょうか? だとするとスープもいりますね。


「セバス兄・話ってなに?。」


リュートから返信が返ってきた。作ったばかりの果実水を冷やし庫にしまい、机に移動した。


「リュート・アーサー弟王子殿下との交接で疲れていないか、体は平気か聞いて欲しいと言われましたね。」

「セバス兄・レオール王太子殿下が? 俺を心配してくださった? セバス兄、体は平気だよ、それにアーサー様は前よりガツガツしなくなって優しいし、触り合いっこで終わる日もある。」


(2人の関係も変わった?)


「リュート・そうレオール様に伝えますね、他に悩み事もないか聞いておられました。」

「セバス兄・悩み事ですか……アーサー様に婚約者様ではなく、愛する、俺と一生暮らしたいと告白されました。」


(私と同様!)


「リュート・アーサー弟王子殿下はリュートを愛したのですね、この話は月末に屋敷に帰ったときに当主に相談いたしましょう。」

「セバス兄・俺はアーサー様と婚約者様が結婚しても……最後まで尽くそうと決めていた、なのに、アーサー様に告白されてその気持ちが揺らぎ、アーサー様の全てが欲しくなった。」

「リュート・私と同じですね、私もレオール様の全てが欲しい、王族に支えるだけで幸せなのに私たちは欲張りですね。」

「セバス兄・欲張りか……そうだな、俺とセバス兄は欲張りだ。」


アーサー弟王子殿下に呼ばれたからと、リュートとの話は終わった。
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