王太子レオールと側近セバス(完結)

にのまえ

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縁日の夜(後)

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近くの村からは笛や太鼓の音色が聞こえてきた。それだけで俺の心が踊り楽しくなる。

去年は浴衣を着たが今年は甚平にした。着心地も良く楽なのがいい。セバスにあの後すぐ弟側近と話をしてくれたようで、その内容を話してくれた。

『アーサー弟王子殿下はリュートのことを、真剣に考えてくださっているみたいです。私たちは行き過ぎた行為には注意しなくてはなりませんが、その他は静かに見守るしかありませんね』

『そうか、あいつなりに側近の事を考えているなら、俺が口出すことではないな。セバスの言う通り、やり過ぎたら俺が注意すればいいだけだ、ありがとうセバス』

『いいえ、私も気になっていました。話す機会をいただきありがとうございました』


その後は――屋台が出る夕暮れまで執務をこなしたり、風呂に入ってゆったりしていた。



時刻は夕方。

「レオール様、砂浜に屋台の準備が終わったみたいです」

今年は別荘の庭ではなく、海辺に魔法で屋台を作ったと聞いた。そのまま今日はコテージに泊まる予定だ。

「今年は塩とソースの焼きそばとかき氷、弓矢を引いて商品を取る射的か――面白そうだな」

海鮮塩焼きそばと、肉と野菜のソース焼きそばか――どちらもいいな。かき氷はレモン味で決まりかな。

「セバスはどっちの焼きそばにする?」

「どちらも食べたいです」

「なら、2つ貰って一緒に食べよう」

塩とソース焼きそば2つと果実水を持って、浜辺に置かれたテーブルに着いた。離れた席にはアーサーとリュート、ミッシェルとハサハ――ミッシェルはジェダ王子も誘ったのか。

「セバス、海鮮塩焼きそばはさっぱりして美味いぞ。ソースはどうだ?」

「オム焼きそばになっていて、甘めのソースとマヨネーズがぴったりでたっぷりかかったハル節(ハルトペス)が最高です」

ソースも美味そうだな。

「セバス、取り皿とかいらないから、そのままちょうだい……うまっ、セバスの言う通り甘めのソースとマヨネーズがいいな」

「塩焼きそばも海鮮のだしが出ていて、美味しいです」

「セバス、焼きそばをおかわりしよう!」

「レオール様、かき氷が食べれなくなりますよ」

ありうる……かき氷も食べたい。

「ソース焼きそばを食べて、かき氷はセバスと半分こにする。何味がいい?」

「私ですか――私は林檎シロップがいいですけど、レモンにしますか?」

林檎? 

「林檎シロップなんてのがあるのか? レモンはいい、かき氷シロップは林檎にしよう、セバス!」

「レオール様……」


――しまった、テンションが高かったか。


「ふふっ、レオール様は林檎お好きですものね」

「……セバス、笑うなよ。俺はソース焼きそばを貰ってくるから、セバスは林檎のかき氷を貰ってきて」

「はい、かしこまりました」








林檎かき氷を持ってきたセバス。

「レオール様、もう直ぐ花火が始まるそうです」

「そうか。もっと俺の近くに来いよ、セバス。一緒に花火を楽しもう」

本物の花火は火薬を使用するらしいが、火薬というものは戦争の火種となる危険な物だと聞いた。モードラー公爵家でも火薬の原料となるものは、見つけても、すぐに魔法で消すと言っていた。

――それほどに、火薬とは恐ろしいものなんだな。

俺たちがいまから見る花火は――空想魔法で作られた花火。たまに面白い変わった形の花火も上がる。

「レオール様、失礼します」

椅子を並べて座り、オム焼きそば半分、林檎シロップかき氷半分にした。

「林檎かき氷、甘酸っぱくて美味しいぞ。ほら、食べてみろ」

「えっ、レオール様」

周りを見て照れながら口を開けた。そんなセバスをエロく感じながらかき氷を食べさせた。シャリシャリ氷を噛み砕く音と綻ぶセバスの唇。

「ほんとうです。すり下ろした林檎と林檎のシロップ、美味しいです」

「なっ、美味いな」

時刻が来て夜空にドォーンと、大きな音を立てて花火が上がる。夜空に大輪の花を咲かせてチラチラ光り消えていく。

「毎年見るが――綺麗だな、セバス」

「はい、レオール様」

俺の隣で花火を楽しむ、セバス。来年もまた隣にいることを願い――しばしの時間、夜空を見上げてその色を楽しんだ。
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