王子とヒロインに騙された私を救ったのは、優しいもふもふの王子様でした。

にのまえ

文字の大きさ
7 / 20

しおりを挟む
 昼食はカイとハヤが作ってくれるので、私は甘いお菓子を作っている。

「今日は何がいいかしら? リュート様、昼食のあとに食べたい甘い物はありますか?」

「昼食の後ですか? 僕はパンケーキ、クッキー、スイートポテトがいいですね……リリア嬢?」

 呼ばれても、ずーっと甘い物を考える最中、パタパタ楽しげに動くリュート様の尻尾に釘付け、だった。

「リリア嬢?」
「は、はい。では、一口パンケーキにしましょう」

 目線を外して、キッチンのジャム棚を覗く、苺とオレンジか……バターと蜂蜜もいいわね。小麦粉に卵の黄身と牛乳、お砂糖をボールで混ぜ合わせた。

 次に、ほんの少し塩を入れた、卵白の入ったボール。

「ここでリュート様の出番です、卵白をメレンゲにしてください」

 と、リュート様に渡した。

「わかった、まかせて」

 いつもメレンゲにするときは、屋敷のみんな呼んで順番に混ぜたのだけど、リュート様は上手いのか、すぐにメレンゲになっていく。

「はあ、疲れた。次はリリア嬢の番ね」

 リュート様に泡立て器とボールを渡される。回しだすと隣で楽しそうに見つめた。

「僕の国だと母上と妹も料理をするんだ。手伝いたいと言っても、男はキッチンに入ってはダメですって母上に言われていたから、リリア嬢の手伝いができて楽しい」

 彼は本当に楽しそうに笑う。

「じゃ、次はリュート様の番ですわ」

 すでに出来上がったメレンゲのボールは、しばらく、私達の間を行ったり来たりした。

 出来上がった、ふわふわメレンゲを生地に混ぜて、バターを引いたフライパンに流して焼く。
 その間、リュート様は隣に立ったり、カイとハヤの料理する姿を楽しげに見ていた。

 今日のお昼は、トマトたっぷりの冷製パスタと、サラダ。デザートはパンケーキ。
 小さい庭だけと、そこにテーブルを出してリュート様と向かい合わせに座った。

「いただきす」

 カイとハヤの作る冷製パスタは絶品だわ。甘いトマトとニンニクの風味で、あっという間に食べてしまう。

 リュート様のお皿もすでに空っぽ。でも彼にはまだ余裕がありそう、メイドを呼んで紅茶とさっき作った、パンケーキを運んでもらった。


 二人で混ぜたメレンゲのお陰で、ふわふわに焼けたパンケーキ。苺とオレンジジャム、蜂蜜をかけてもいい。

「美味い……この小麦は俺の国の物だ。香ばしくてパンケーキはふわふわで、苺かオレンジのジャムを付けるとさらに美味しい」

「この小麦って、リュート様の国の小麦だったの?」

「あぁ、この味はそうだ。俺の国では国民に混ざり、父上、母上、兄上は僕とで畑を耕して小麦や野菜をたくさん畑で作り、隣国に輸出をしていた。精霊獣の加護のおかげで、多く実る畑。果物に野菜どれを取っても美味しかった」

 その実り多き大地を隣の人間の国が狙った。隣国も貧乏ではないはずなのに、隣の芝生は青く見えたのかな。


「最初、父上は隣国と話し合いで解決したかったと申した……しかし、そうはいかなかった」

 悲しげにリュート様の瞳が揺れた。長きに渡る戦争。多くの畑が潰れて、人々は傷付き、愛しい者を亡くした。

 その間も、私達は守られていた。

「リュート様の国のお陰で、私達は傷を負うことがなかった。リュート様のお父様、国王陛下や皆様が私達の国を守ってくださったのです」

「いや、僕も守られていたよ。あなたのお兄さん達に幾度となく僕は助けてもらった。だから学ぶ国を選ぶときにこの国に来たいと、ナノーカ公爵のところに行きたいと我がままを言ってしまったんだ」

「そう言っていただくと、カーラお兄様とジュンクお兄様が喜びますわ」

 でも、リュート様にごめんねと謝られた言われた。


 それは私がレオーン殿下の婚約者だからかな。でも、お父様の手紙での話では国王陛下から、直属に頼まれたのだと書いてあった。

「リュート様は気にしなくていいのですよ。レオーン殿下には私ではなく、他に想う人がおりますから」


 その一言で、リュート様はテーブルを叩き、怒りを表した。


「有り得ない! 婚約者がいながら他の女性を想う? 王子の婚約者は学ぶことが多い。僕の兄上は婚約者を支えながら、共に歩んでいる。あの王子はリリア嬢を支えないなんて……」

「リュート様、落ち着いてください。私は平気ですわ」

 怒りに震えるリュート様を止めようとして、出した手を掴まれた。

 リュート様の強い瞳。

「僕だったら君を…… ! ……あ、ああ、いや」

 言葉を濁して、目を伏せてしまった。

 僕だったらのあとに続くリュート様の言葉を、私は聞きたいと思ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?

しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。 王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。 恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!! ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。 この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。 孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。 なんちゃって異世界のお話です。 時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。 HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24) 数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。 *国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
 やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。  王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。  教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。  惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。  簡単に裏切る人になんてもう未練はない。  むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

処理中です...