王子とヒロインに騙された私を救ったのは、優しいもふもふの王子様でした。

にのまえ

文字の大きさ
14 / 20

十四

しおりを挟む
 恥ずかしいけど彼を求めてしまう。
 リュート様の私の呼び名が、屋敷の中だけリリアに変わった。

「リリア、今日は何を作る?」

 彼に呼ばれるたびに心が躍る。
 それに、あの時の香りが忘れれず、私はそれを求めて、夜に彼の部屋に訪れてしまう。

 まだ、王子の婚約者の立場なのに。


 私の専属のメイドカーリー、屋敷のみんなだって、気付いていても何も言わず温かく見守ってくれてる。

 
「リュート様、お父様から手紙が返ってきました」

 リュート様と庭先のテーブルで、その届いた手紙を開いた。


「リリア、その話はまだ出来ない。一緒に同封した紙の右下に、一枚はリリアお前の名前と判、もう一枚にはリュート王子とリリアお前の名前と、判を押して送り返してくれ、悪いようにはしない。しばし待ってくれ」


 手紙と一緒に入っていた、何も書いていない羊皮紙、二枚。リュート様はそれを手に取り。

「この羊皮紙の右下に、名前と判を押せばいいのか?」
「そうお父様の手紙には書いてありました」

 お父様の言う通り、名前を書いて送り返した。

「リュート様、今日はスコーンを焼いて苺のジャムで食べましょう」
「いいね、焼こう」


 お父様に送り返した手紙が何なのか、聞いてみたのだけど、詳しい話は教えてはくれない。

『悪いようにはならない』


 お父様はそうおっしゃっただけだった。


 その日は満月の夜だった。

 薔薇の見頃が終えた庭の薔薇が、一夜の間に満開に咲いたのだ。

「見頃が終わったのに、何故かしら?」

「そうだね……リリア、どこか体に変化はないかい?」

「ありませんけど?」

 リュート様は何か知っているのか、考えるそぶりを見せた。



 ♢


 満月の夜。

 薔薇を咲かせたのはリリアだ。彼女は精霊獣なのかもしれない。

 夜遅く足音に目を覚ました。

「リリア?」

 夜になると、たびたび俺の部屋に照れながら、訪れる彼女。
 この日は違った、満月の光りの下で彼女は銀色に輝く耳に尻尾をなびかせて、庭先で歌をっていた。

 彼女が踊り、歌うたびに、季節外れの薔薇が庭に咲いて行く。
 それは父上や母上から聞いた、言い伝えではなく、実際に僕の目の前で起こっている。


 なんで綺麗なんだ。

「リリア……君を」

 僕は守らなくてはならない。
 彼女が精霊獣だと知られたら、この国だけでなく他国まで動き出す。

 リリアはしばらく歌い、躍ると、眠るように、その場にパタリと倒れた。

 僕はその場に走り彼女を抱き抱えた。
 愛しい僕の番さん。

 
 次の日僕のベッドの中で目覚めた、彼女は驚きを隠せないでいた。


「どうしましょう、リュート様の香りを求めて無意識にここまできてしまうなんて、恥ずかしいわ」

 なんて、可愛いこと言ったんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?

しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。 王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。 恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!! ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。 この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。 孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。 なんちゃって異世界のお話です。 時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。 HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24) 数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。 *国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
 やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。  王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。  教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。  惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。  簡単に裏切る人になんてもう未練はない。  むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

処理中です...