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空森島
十二
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俺シャツを着る彼女はヤバイ、可愛い……しかし、この状態はよくない。着る物がなく、下に降りるまで一週間のあいだ彼女を帰せない。下着とかもろもろ困るだろうし。
――サン先生、もっと考えてぇ!
彼女が湯冷めしないように温かいお茶をいれた。
「菓子と温かいお茶どうぞ。お腹空いていない? なにか作るけど食べる?」
「ありがとう、お腹はいま大丈夫です」
俺のシャツがよく似合う。ほどよい胸、ショートまでいかない白い髪と、耳と尻尾がすごくタイプだ。俺が陰キャの奥手でよかったな、陽キャのオオカミだったら遠慮なく襲っていたぞ。
「あー、寝るとき俺のベッド使って、俺は外にいるから……」
彼女に気の利いた言葉を言えればいいんだが――なにせ経験不足でなにも浮かばない。
外にこうとした俺を彼女は止めた。
「待って、あの、私……あなたを癒しに」
「無理すんなって、誰に何を言われたのか知らないけど。さっきから手が震えてるぞ――自分を大切にしろよ」
「…………!」
――は、いっ?
彼女の大きな瞳からポタポタと涙が落ちる。え、ええ、俺は泣かせるようなこと言ったのか? いや、いや、いや、言っていないはず……女の子に泣かれる経験のない俺はどうすればいい。
…………っ! そうだ、謝ろう、謝るしかない。
前世でもなにが悪いのかわからないが、謝らされていたよなぁ。場の空気を悪くしたとか、俺がいるだけで悪いってさぁ。
「ごめん、俺が悪い……変なバナナ見せたし」
「えっ、バナナ?」
彼女はキョトンとした。そして、バナナの意味が変わったのか……みるみる顔を真っ赤にして「違うの、あなたのせいではなくて」……と言った。
それだったらどうして泣くんだと聞くと、おずおず彼女は話しはじめた。
「ハァ? 俺を癒さないと妹を探してもらえない? なんだよそれ――それ、サン先生が言ったの」
コクンと頷いたので。それは酷いとサン先生を空森島に呼んだ。仕事中だったのかいつもの格好で現れた先生は、俺と彼女をみて微笑んだ。
「ヌヌちゃんと、仲良くなれましたか?」
「ヌヌちゃん? 仲良くもなるも……あの格好で男一人しかいない、ここに寄越すのは彼女がかわいそうだ」
「そうですか? この前の宴会の時、ローリス君があの子にそばにいて欲しいと言っていたので、嫁に欲しいのかと思いました」
「よめ!」
――酔っ払って、そんなことを口走ったか。
「だからって、彼女の気持ちを無視するのはダメですよ。彼女だって選ぶ権利はあります」
同族の子がいいに決まってる。
「そうですか。私的にローリス君はいい子なのでアリですよ」
――アリ?
ガシッとサン先生に両手をつかまれた。
えっええ、先生?
「ローリス君が望めば、いつでも癒して差し上げますよ――いつも手をつないでいますし」
「そ、それは俺が迷子になるからでって、先生はそっち! いや、先生は尊敬してる……俺も先生のようになりたいと思ってる……から、そのな、先生?」
焦る俺を楽しげに、しばらくながめて。
「フフッ、冗談です」
先生、冗談に聞こえない。先生と俺のやりとりに小さな笑い声が聞こえた。彼女は泣きやんで俺たちをみて笑っていた。
――ホッ、よかった泣き止んだか。笑うと、さらに可愛いなぁ。
――サン先生、もっと考えてぇ!
彼女が湯冷めしないように温かいお茶をいれた。
「菓子と温かいお茶どうぞ。お腹空いていない? なにか作るけど食べる?」
「ありがとう、お腹はいま大丈夫です」
俺のシャツがよく似合う。ほどよい胸、ショートまでいかない白い髪と、耳と尻尾がすごくタイプだ。俺が陰キャの奥手でよかったな、陽キャのオオカミだったら遠慮なく襲っていたぞ。
「あー、寝るとき俺のベッド使って、俺は外にいるから……」
彼女に気の利いた言葉を言えればいいんだが――なにせ経験不足でなにも浮かばない。
外にこうとした俺を彼女は止めた。
「待って、あの、私……あなたを癒しに」
「無理すんなって、誰に何を言われたのか知らないけど。さっきから手が震えてるぞ――自分を大切にしろよ」
「…………!」
――は、いっ?
彼女の大きな瞳からポタポタと涙が落ちる。え、ええ、俺は泣かせるようなこと言ったのか? いや、いや、いや、言っていないはず……女の子に泣かれる経験のない俺はどうすればいい。
…………っ! そうだ、謝ろう、謝るしかない。
前世でもなにが悪いのかわからないが、謝らされていたよなぁ。場の空気を悪くしたとか、俺がいるだけで悪いってさぁ。
「ごめん、俺が悪い……変なバナナ見せたし」
「えっ、バナナ?」
彼女はキョトンとした。そして、バナナの意味が変わったのか……みるみる顔を真っ赤にして「違うの、あなたのせいではなくて」……と言った。
それだったらどうして泣くんだと聞くと、おずおず彼女は話しはじめた。
「ハァ? 俺を癒さないと妹を探してもらえない? なんだよそれ――それ、サン先生が言ったの」
コクンと頷いたので。それは酷いとサン先生を空森島に呼んだ。仕事中だったのかいつもの格好で現れた先生は、俺と彼女をみて微笑んだ。
「ヌヌちゃんと、仲良くなれましたか?」
「ヌヌちゃん? 仲良くもなるも……あの格好で男一人しかいない、ここに寄越すのは彼女がかわいそうだ」
「そうですか? この前の宴会の時、ローリス君があの子にそばにいて欲しいと言っていたので、嫁に欲しいのかと思いました」
「よめ!」
――酔っ払って、そんなことを口走ったか。
「だからって、彼女の気持ちを無視するのはダメですよ。彼女だって選ぶ権利はあります」
同族の子がいいに決まってる。
「そうですか。私的にローリス君はいい子なのでアリですよ」
――アリ?
ガシッとサン先生に両手をつかまれた。
えっええ、先生?
「ローリス君が望めば、いつでも癒して差し上げますよ――いつも手をつないでいますし」
「そ、それは俺が迷子になるからでって、先生はそっち! いや、先生は尊敬してる……俺も先生のようになりたいと思ってる……から、そのな、先生?」
焦る俺を楽しげに、しばらくながめて。
「フフッ、冗談です」
先生、冗談に聞こえない。先生と俺のやりとりに小さな笑い声が聞こえた。彼女は泣きやんで俺たちをみて笑っていた。
――ホッ、よかった泣き止んだか。笑うと、さらに可愛いなぁ。
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