神様のあったかご飯。

にのまえ

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華やかになった僕の日常

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 ひとりぼっちだと思っていた僕に、友達ができた。妖狐の不動産屋・シロウさんと、旅狐のミズキさん。

 ミズキさんは月に一度、旅先で見つけた土産を抱えて訪ねてきては、決まってこう言う。

「九のおかげで、毎日が楽しいよ。ありがとう」

 けれど、その言葉の意味はまだよくわからない。どうして僕なんかに、そんなふうに言ってくれるのか。首をかしげると、ミズキさんはくすりと笑う。

「そうか、そうだったね。九、今回はあんこの餅を買ってきた。一緒に食べよう」

「わぁ、美味しそう。……いただきます。ん、甘くて、本当に美味しいね」

 ふたり、石段に並んで餅を食べるだけで、胸の奥がじんわりあたたかくなる。きっとこれが“友達”というものなんだ。

「前にくれた、バターを挟んだクッキーも美味しかったよ」

「それはよかった。私にはこれくらいしかできないからね」

「僕はお土産がもらえてラッキーだけどね」

 記憶をなくしてから、こうして友達と呼べる存在ができた。
 ……シロウさんも、友達なのだろうか?

 そう思った瞬間、石段からスーツ姿のシロウさんの姿が見えた。彼は階段を登り終えると、手に持った風呂敷を掲げた。

「九さん……たこ焼き。てめぇ、また来ていたのか!」

 シロウさんは姿を見るなり、ミズキさんに詰め寄り、いつもの落ち着きが吹き飛んでしまう。

「ごめん。こうなるなんて思わなかったんだ。でも九だって、いいと言ってくれたし」

「あぁ? 殆ど騙し討ちみたいなもんだ! ……こいつは全部、俺といた日々も全部、忘れてしまったんだぞ……」

 その声は怒鳴り声のはずなのに、どこか苦しげで。ミズキさんは責め返すこともできず、困ったように肩をすくめた。

「それを言われると、何も言えないね」

 僕の失われた記憶は戻らない。大神様はそう言っていた。それでもふたりは、こうして僕のそばにいてくれる。

「喧嘩はやめてくれよ。僕は二人が来てくれて嬉しいよ」

 シロウさんが持って来た、たこ焼きを頂戴と手を出すと、彼はブスッとした表情のまま、僕の手に温かいたこ焼きを置いた。

 そして

「前に気に入ったと言ったから買って来ました。それと明後日、店の鍵を渡します」

 と、丁寧な話し方で話す。

「店の鍵? あの店を使っていいの?」

 聞き直すとシロウさんはうなずく。

「はい、持ち主の方とお話がつきました。ご自由にお使いください、とのことです。ただ──たまに持ち主さんの娘さんがいらっしゃるそうで。その時は、彼女にも場所を使わせてあげてほしい、とお願いされました」

「わかりました。……ねえシロウさん、まだ時間ある? 一緒にたこ焼き食べようよ」

「食べる」

 シロウさん、僕、ミズキさんの順で石段に腰を下ろし、紙舟のたこ焼きを受け取る。湯気がほわりと立ちのぼり、ソースの香りが夜気に混ざった。

「はふっ、はふ……あつ、でも美味しいね」

 舌を火傷しそうになりながら笑うと、隣でシロウさんが無言ですくって食べ、ミズキさんは「ん~幸せ」と目を細める。

 風が少し冷たい。けれど、三人で並んで食べるたこ焼きは、それだけで胸の奥まで温かかった。
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