神様のあったかご飯。

にのまえ

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朝ごはん

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 シロウさんはテーブルにカセットコンロを置き、火をつけると油をひいたフライパンをのせた。じゅっと音を立てて、まずは目玉焼きとソーセージを焼いていく。

 いつもは静まり返っている神社の外に、ソーセージの弾ける音と香ばしい匂いが漂った。その匂いに誘われるように、自然とお腹が鳴る。

「お腹、空きましたね。ここだと焚き火はできないから、パンは目玉焼きとソーセージを焼き終わってから焼きますね」

「うんうん」

 頷きながら楽しそうに見つめる僕を見て、シロウさんは一瞬だけ、どこか寂しそうな目をした。けれどすぐに、いつものように優しく微笑む。

「目玉焼きとソーセージが焼き上がりましたよ」
「うわぁ、美味しそう」

 焼き上がった目玉焼きとソーセージを皿に移すと、シロウさんは別のフライパンを用意し、今度はバターを落とした。じゅうっと音を立てて溶けたバターの香りが立ちのぼり、フライパンに置いた食パンがこんがりと色づいていく。

「早く食べたいね」
「もうすぐできますよ。食後のコーヒーは、下の店で淹れますね」

「ありがとう。……僕も、何かしたい」

「ではコーヒーのあと、お昼ご飯は下で一緒に作りましょう。親子丼を作ろうと思うのですが、どうですか?」

 親子丼?
 ああ、鳥と卵を出汁で煮込んで、ご飯にかけるやつだ。シゲさんの親子丼はあたたかくて、とても美味しかった。

「僕も手伝うよ」

「お願いしますね。それと、二日後の土曜日に、昨日いらしたお孫さんが店を使いたいそうです。早朝に鍵を渡しますので、この合鍵に許可印をお願いします」

「いいよ」

 シロウさんが差し出した鍵に、僕は許可印を施す。

 いま、あの店は僕が借りている。仮許可書に僕が名前を書いたから、形式上は僕の持ち物だ。彼女に鍋など必要なものを持ってきてもらうように頼んだのも、そのためだった。

 店のものは、僕――神の持ち物。
 人間に直接触れさせるわけにはいかないし、彼女には匂いはわかっても、色々と見えないかもしれない。

「パンが焼けましたよ。朝食にしましょう」

「いただきます。……んん、パンがサクサクで、ソーセージがぷりぷり。目玉焼きは、僕の好きな半熟だ!」

 黄身に醤油をかけ、パンにのせてかじる。半熟の黄身がはじけて、口元が汚れてしまったけれど、気にしない。

 シロウさんは苦笑いをしながら、ティッシュで口元を拭いてくれた。

(こんなに甘えていいのかわからないけど……シロウさんは優しくて、ずっと一緒に……いたい)

 ――あれ?
 前にも僕は、同じことを誰かに言った気がする。

「どうしたんですか?」

「あのね。僕、シロウさんとずっといたいって思ったの。それで……その言葉を昔、誰かにも言ったような気がして。いきなりごめんね」

 シロウさんは目を見開き、そして、とても嬉しそうに笑った。

「九さんがそう言うのなら、ずっと一緒にいましょうね。これは、神と俺との約束です」
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