神様のあったかご飯。

にのまえ

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スープパスタと、お孫さんのお雑煮

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 シロウさんが作ってくれたスープパスタは、文句なしの絶品だった。量を多めにしてもらったはずなのに、気づけばあっという間に完食している。

「なかなか、美味しくできましたね」
「うん、ほんと美味しかったぁ。あの本のレシピ通りに作ったの?」

 今日のスープパスタは、本屋で買ってきた料理本に載っていた一品だ。シロウさんが選んでくれた、僕にもできる《簡単基礎料理》の本。

 その中で、僕が「これ、美味しそう」と指を止めた料理を、シロウさんは作ってくれたのだった。

「九さん、夕飯はどうしますか?」

「うーん……ハンバーグが食べたい。僕も手伝うから一緒に作らない?」

 料理の本をめくったときに見たハンバーグ。このハンバーグという料理は前に花シゲで、一度だけ食べたことがある。確か、ひき肉にパン粉、みじん切り玉ねぎ、卵などを混ぜて成形し、焼いた肉料理だったかな。

「ハンバーグですか? いいですね。材料は妖冷庫の中にあったと思います。お孫さんが帰ってきたら、作りにいきましょう」

「うん」

 食事の後、神ラインに呼ばれて報告会が始まった。なぜか今日は特別に、シロウさんも一緒だ。

「みんな、こんにちは」
「こんにちは」

「おお、九とシロウか。元気にしていたか?」

 大神様の声が響くと、参加している神様たちの声も次々と聞こえてくる。

「九ちゃん、やっほぉ。毎日楽しんでるぅ?」
「困ったことはありませんか?」

「うん。楽しんでいるし、元気にしてるよ」
「俺がそばにいますから。大丈夫ですよ」

 困っていることはないか、必要なものはないか。そう尋ねられるたびに、シロウさんが「自分が準備しますから」と穏やかに答えてくれる。

「うむ。シロウがいるなら安心だな」
「ほんと、安心」
「えぇ、安心しました」

 僕が一人じゃないと分かったからか、みんな安堵した声で「またね」と帰って行った。

「大神様。他の神様は、優しい方ばかりですね」
「そうだね。みんな優しい」

 みんなは、僕が二度と腐れ神にならないよう、気にかけてくれている。大丈夫。もう、ならない。今度は僕が誰かを助ける番だ。

「九さん、こちらに誰か来ますね」
「あ、ほんとうだ」

 シロウさんは額に葉を乗せ、妖術でテントを消し、自分の姿も隠した。僕もお社の中へと身を移す。

 ここは、滅多に人が来ない神社。現れたのは、シゲさんとお花さんのお孫だった。彼女は手にお盆を抱え、その上には湯気の立つお椀が乗っている。

「神様。私が作ったお雑煮、食べてください」

 九はお社の中で、そっと布をひらいた。すると、その上に彼女が持ってきたお雑煮が現れる。

 本来、お供え物は“食べる”ものではない。けれど、その想いは確かに受け取れる。

〈いただきます〉

 人には聞こえない声で手を合わせ、お椀を手に取って汁を飲む。

 あの日と、同じ味がした。

 ぽつり、と涙がひと滴落ちる。すると神社の周りだけ、喜びの雨が静かに降りはじめた。

〈おいしいよ。ありがとう〉

 その言葉に応えるように、空にはやわらかな虹がかかった。
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