大学の図書館で手に取った本が何故か異世界への扉でした

山下レ央

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第1章:エルフの国編

第10話 模擬戦①

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 演習場に入った大和達は演習場の中心部に向かっていった。
 大和たちが使う第2演習場は、大和がいた世界で例えると、東京ドーム8個分の大きさだ。
 なので中心部に到達するのにも時間がかかり、もう昼前の時間帯だった。

「ではヴォルド、大和に模擬戦で稽古をつけてあげなさい」

「え?私がですか?」

「そうよ。私が相手をしてもいいのだけど、まずはあなたに勝てるようにならないと」

「わかりました・・・」

 中心部に着くと、セーナはヴォルドに大和に修行をつけるように促した。

(あれ?訓練じゃなかったの?てかいきなり模擬戦!?)

 大和は心の中でそう思ったが、それはセーナにとっては結果として大和が強くなればいい、ただそれだけであるが故、訓練でも修行でも模擬戦でも何でもいいのだ。
 大和は訓練を受けることを最終的には自分で決めたので、この状況を受け入れることにした。

「んじゃ、よろしくな大和」
 
「おう、よろしくなヴォルド。でもやる前にお手本を見せてくれると嬉しいんだが」

 大和はこの世界の戦いを知らない。
 それなのに今朝いきなり宿屋に来て、街を一緒に歩きたいと言われそして突然模擬戦をやれと言われているのだ。
 さすがに手本の一つはお願いしてもいいだろうと思い、ヴォルドにお願いしてみた。
 演習場に来る途中、一応セーナに歩きながら魔法の属性とその魔法の理屈について教わったが、《火属性》《水属性》《風属性》《雷属性》《地属性》《光属性》《闇属性》《創造属性》《破壊属性》の計9属性と、《混合魔法》という技術があるということしか今の大和には理解出来なかった上、理解出来てもすぐに使えるわけがないと大和は何となく思った。
 さらに大和は一応小学校6年間は空手をやっていて黒帯までいったが、特別強かったわけではない。
 それにここは異世界であり、自分の今の身体能力がこの人達とどれくらい差があるのかわからない。
 なのでここは一度お手本を見ることが大和にとって正解なのだ。

「手本か?まあいいけど」

「なるほどね、確かにお手本は必要ね。部下の方々に手伝って頂いたら?」

「そうですね。リン!ギャットマン!出て来い!」

「「はっ!ここに!」」

 ヴォルドに呼ばれると、リンとギャットマンはどこからともなく現れた。

(リンとギャットマン?確か俺が連行される時に合流してきた奴らか)

「多分聞いてただろうが、大和に模擬戦を観せてやってくれ。今後の大和のために本気で頼む」

「「了解」」

 2人は声と同時に大和達から離れ、お互いの間に距離を取り、武器を手にして構える。
 リンは二刀流で、雷属性の剣と水属性の剣を構えるに対し、ギャットマンは火属性の太刀を構える。
 2人はいつでもいける、というような真剣な目で睨み合っている。
 審判役としてヴォルドが2人の間に立った。
 そして─────

「始め!」

 ヴォルドの声がすると同時に、リンとギャットマンの剣がぶつかり合う。
 こうして両者本気の模擬戦たたかいが始まった。

□□□□□

 リンとギャットマンが繰り広げる戦いは大和の想像を絶するものだった。
 それはアクション映画やアニメとかで観るような戦いだが、一番大事なのはこれがであるということだ。

(マジかよ。これ、現実なのか・・・実は夢でしたって言われた方が納得できるぐらいだぞ)

 大和は現実逃避したくなった。自分はとんでもない世界に来てしまったと。
 そして、何より恐ろしいのはセーナとヴォルドが大和にこれくらい出来るようになって欲しいと考えてることだ。
 その証拠に一切「やりすぎだ」などと注意をする様子がないどころか、2人はリンとギャットマンの戦いを楽しんでるように見える。
 それにヴォルドがリンとギャットマンに本気で戦うように指示した時も、セーナは止めなかった。

(こんなの俺に出来んのかよ!?)

 大和がそう考えていると、リンとギャットマンが大技を発動させようとしていた。

双・雷水龍斬ツイン・サンダースプラッシュ!!」

炎斬撃閃ボルケーノクラッシュ!!」

(おいちょっとまて!あの2人がぶつかったら大爆発が起きるぞ・・・ってあれ?何で俺にわかるんだ!?もしかして帝王眼エンペラーアイの力なのか?)

 大和がそう考えてる間に2人の大技が激突しそうになる。
 あと少し、というところでヴォルドが剣に手をかけ、一瞬のうちに2人の間に割って入った。

「抜刀術・魔法物崩壊斬マジッククラッシュ

 次の瞬間、2人の技は解除されていた。

「両者そこまで!この勝負、引き分けとする。2人とも、ご苦労であった。」 

「「はっ!」」

 ヴォルドがリンとギャットマンにそう言うと、戦っていた2人はお互いに礼をし、自分の持ち場へ戻っていった。

「で、どうだった?あの2人の本気の戦いは」

「え?ああ。2人ともすごく速くて一撃一撃をお互いに読み会いながら自分の攻撃を当てているのがよくわかった。あと、あの大技は2人がぶつかり合ってたらやばかったな」

「ほーう、そこまで見えてたのか。やっぱ凄いな大和は」

「え?なんで?」

「最初は俺がお前に一から戦闘技術を叩き込もうと思ったんだがお前が手本を見たいって言ったからよ、ひとつ思いついたんだよ」

「思いついた?」

「ああ。過去の書物によると、帝王眼エンペラーアイの能力の中に学習能力と観察能力があるらしい。だから俺はあの2人に本気で戦うように命じてお前に学習させようとしたんだよ。つまり、帝王眼を使うのに慣れて貰いたかったわけ。だけどお前は想像以上に使いこなしてるみたいだから凄いと思ったんだ」

「なんだそういう事か」

 どうやらヴォルドは大和の帝王眼エンペラーアイの能力を試していたようだ。
 危うく大惨事になるところだったが、いい結果は得られたようだ。
 
「あとは学習したことを上手く実戦に活かせるかといったところだな」

「そうだな、頑張るよ」

「魔法の仕組みは理解出来ただろ?」

「ああ、自分でも驚くくらいにな。でもまだ頭で理解するっていうよりかは感覚の方が近いのかな?」

「まあ最初はそれでいいだろう。とりあえず昼飯食ったら今度は俺らの番だぞ」

「おっけー」

 大和は嬉しそうに返事をした。
 自分が少し成長出来たことが嬉しかったのだ。
 少し離れたところから大和とヴォルドのやり取りを笑みを浮かべながら見ていたセーナも、リンとギャットマンの戦いと、大和が2人の戦いを見ただけで成長したことに満足していた。

「ふふっ、大和、ヴォルド、早くお昼ご飯食べに行きましょ」

「そうですね」

「そうだな」

 こうして3人は午後の大和とヴォルドの模擬戦に対する英気を養うために演習場の食堂で昼食を食べに行ったのだった。

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