大学の図書館で手に取った本が何故か異世界への扉でした

山下レ央

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第1章:エルフの国編

第18話 大和&ヴォルドVSナズエル&エルザ②

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 ヴォルドがエルザと戦闘を始めたころ、大和とナズエルも戦闘が始まった。
 怒り狂っているナズエルは異空間から槍を取り出し、大和のに襲いかかる。
 大和はそれを冷静に剣で捌きつつ、攻撃の機会をうかがっている。

「防御ばっかじゃつまらねぇんだよ!灼熱強風バーニングハリケーン!」

 ナズエルは大和に向かって超高温の風を放った。

冷爆風コールドストーム

 大和は超高温の強風に超低音の爆風をぶつけ、大爆発を起こした。
 その大爆発の中を大和は突っ切り、ナズエルに向かって斬りかかる。

「抜刀術・吹雪斬ふぶきぎり!」

 大和はまるで吹雪の如く、ナズエルの腹部を切り裂いた。
 切り裂かれた部分はどんどん凍っていく。

「な!?バカな!!《氷属性》だと!?」

 腹を切り裂かれたナズエルは、何故か腹を切り裂かれたことではなく、大和が使った技に驚いている。

そもそもこの世界には
《火属性》
《水属性》
《風属性》
《雷属性》
《地属性》
《光属性》
《闇属性》
《創造属性》
《破壊属性》の9つしかないのだ。
 ナズエルが先程攻撃に用いたのは、火属性と風属性の混合魔法である。
 それに対して大和が用いたのは混合魔法でもなければ、存在する9つの単一魔法属性ではないのだ。
しかし大和は何となく頭に浮かんだ魔法を使っただけなので、この時はまだナズエルの傷が凍っていくことに驚いていると思っていた。

「ふふふふふ、よくわかったわ。あんたはだの異世界人じゃないみたいね」

「は?なんの事だ?」

「さっきのあんたの攻撃よ。まさか自分で意識せず使ったわけじゃないでしょうね?」
 
「何言ってるかわからんが続きやるぞ」

 大和の想定外の技に驚き、ナズエルは少し落ち着きを取り戻してきた。
 大和にはよく分からなかったが、ナズエル自身は大和の異常さに気づいて、冷静にならないと勝てない相手だと悟ったのだ。

「いいわ。来なさい」

壊転冷脚かいてんれいきゃく!!」
 
 大和は先程の攻撃の感覚が自分にあっていると感じて、同じように蹴り技を放ってみた。

爆炎槍突撃ばくえんそうとつげき!」

 ナズエルは自分に近づいてくる大和に向かって、槍に妖魔界の銀の炎を纏わせ突撃した。
 先程に妖魔界の炎を消すというより破壊されていたが、それは最初から大和に着火させなかったからである。
今回の場合は、槍に妖魔界の銀の炎を纏わせ、槍を着火剤にすることで大和の足に銀の炎をつけることができる。
そうすれば大和は、自分の足ごと破壊することになるので、ナズエルは今度こそ勝ちを確信した。

「ふふ、私の勝ちね」

 そしてその槍は大和の右足を貫いた・・・かのように思われたが、そのようなことにはならなかった。

「え・・・!?」

 ナズエルは確実に捕らえたと思い、槍を確認すると、その槍は貫通するどころか先端から折れていた。
それだけではなく、槍に纏っていたはずの銀の炎までもが消えていた。

「何考えてたか知らねーけど、お前終わりだぞ?」

 大和にそう言われると、ナズエルはふと上を見た。
 そこには魔法陣を展開させている大和がいたのだ。

「いつの間に!?」

「とりあえず大人しくなってもらうぞ。封印術・万年雪まんねんせつ

 大和が魔法を唱えると、当然ナズエルの体が凍ったように動かなくった。

「体が・・・動かな・・・」

ナズエルの体が動かなくなると、今度はナズエルの半径1mの地面に雪が積もり、やがてナズエルの姿は見えなくなった。
 
「この封印術は俺が自分の意思で解く以外は1万年後に自然に解けるのを待つしかないんだよ。残念だったな」

 大和は半球状にナズエルを埋めている雪を見て話す。

「終わったみたいだな」

「ヴォルド隊長も終わったんですね」

 どうやらヴォルドも無事に勝利したようだ。
 大和はヴォルドの勝利を疑っていなかったが、怪我もせずに戻って来てくれて安心した。

「ああ。こっちは捕らえずに始末したがな」

「そうですか。良かったです」

「それよりお前やっぱすげーな。俺の技盗むわ、新しい魔法創っちまうわ、失われた属性復活させるわ」

「ははは、恐縮です。そういえばさっきこいつが氷属性とか言ってたんですけど、その失われた属性となにか関係あるんですか?」

 大和は先程ナズエルに言われたこととヴォルドが言った失われた属性との関係について聞いてみる。

「氷属性魔法は今から1500年前、バギランド王国の勇者アルナ・フェイバスが使用したのが最後と記録されているが、それ以外の情報は分からないな」

「そうですか。ありがとうございます」

 大和は少し残念に思ったが、それと同時に研究し甲斐があると感じた。

「とりあえず今はケイト団長と国王陛下に報告だな」

 ヴォルドはそう言うと、1番隊の隊員達に大広場の見張りを任せ、大和と共に王室特殊兵団スターライツの本部に向かった。

□□□□□

 王室特殊兵団スターライツ第一会議室にて、ケイトと隊長格6名と、セーナの護衛で傍から離れられない2番隊隊長マナカの代理として、2番隊副隊長のギルコード・エクバリアと、ナズエルを封印した大和の計8名が長テーブルを囲んでいる。
 今はヴォルドが今回のセーナ暗殺事件の犯人との戦闘についての報告をしていたところだった。
 

「・・・という感じだ」

「なるほどな。つまりその実行犯のナズエルって奴は大和が封印したんだな?」

「ああそうだ。封印魔法陣を大広場からここに移動させるのは厳しいから尋問するなら俺らで行くしかないぞ?」

「そうかわかった。尋問は後で大広場に出向いて行うよ。ヴォルドの報告は以上かい?」

「ああ。他は特にない」

「わかった。ご苦労さま。次はジェイル、報告を頼む」

「はーい」

 報告を終えたヴォルドが座ったのと同時に、ジェイルが椅子から立ち上がる。

「今回俺が戦ったのはヴェルジオっていう妖魔だったね。残念ながら最後は妖魔界に逃げられちゃったけど、かなり強かったよ。はっきりいって、SS級の戦士じゃ確実に歯が立たないくらいにね」

 ジェイルの言葉に一同は驚いた。
なぜなら、SS級というのは戦士階級の上から3番目の階級で、王室特殊兵団スターライツだと隊長や一部の副隊長クラスの実力だ。
参考として、大和の戦士階級は測定していないが、AAA級程である。
そして、現在の隊長達の戦士階級はSS級がマナカ、サユリ、、ルイス、ペテルの4人で、その上のSSS級がヴォルド、ジェイル、アダムの3人である。
 つまりそれは隊長格の過半数が勝てないことを意味している。
 
「しかしそれほど強いやつが何故シャーリス王国この国にいるんだい?」

「やつの目的は異世界人の捕獲、つまり大和を捕らえることだってよ」

「大和を!?」

「ああ。ヴォルドの報告にもあったように、妖魔達はセーナ様の暗殺と大和の身柄を狙っている。目的は本人も知らないって言ってたから予想もつかないけど、可能性があるとすれば・・・」

 会議室が少し静まり返り、大和以外の皆は何かを察したかのように重い空気が流れた。
 重い空気の中、ケイトが口を開く。

「・・・大魔皇帝か・・・」

(大魔・・・皇帝!?実際の異世界って魔王って言わないの!?)

 大和は重い空気が読めず、そんなことを考えていた。

「ああ。先月同盟国のバギランド王国で国王の弟が暗殺された事件で調査隊として3番隊が派遣されただろ?その時にバギランドの暗部の人から聞いたんだけど、どうやら事件現場に妖魔族と魔族が一緒にいたっていう目撃情報があったらしい。一応まだ情報は少ないけど、バギランドの事件と今回のセーナ様野暗殺未遂は裏で魔族が妖魔族を操っていると俺も考えてるよ」

「そして大魔皇帝は大和を欲しがっているって訳か・・・よしわかった。とりあえず大至急妖魔ナズエルに事情を話させた方が良さそうだな。ジェイル、報告は以上か?」

「ああ、以上だ」

「よし。とりあえず今から大広場に行って妖魔ナズエルの尋問を行う。大和、封印術の解き方は分かるな?」

 大和は突然聞かれたので少し驚きつつ答える。

「あ、はい。自分が創った魔法なので・・・」

「おーけー。じゃあ大広場に行くぞ」

 ケイトはそう言うと、転移魔法で1人先に大広場へ向かった。
 残された隊長たちは、走って大広場に向かったのだった。
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