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第2章
第13話
しおりを挟むという感じで東谷の唐突な出現により、昼休みは見事に絵本を使って時間を戻す事に失敗した。
要は東谷と遭遇し、逃げた時間に追加で別の人気のない場所探しに難航した事によりそんな余裕は消えてしまった。明らかに昼休みが終わりそうになった時は焦って教室に戻る事になってしまった。
「麻由美なんでそんなに疲れてるっぽい感じになってるの?」
「いやあ、それは……うん」
リリーに疑られる様な返答しちゃった気もするけど、なんか言葉が思いつかなかった。
焦りが出ちゃってちゃんとした言葉で返す余裕がなくなってしまったんだろうな。本当に、何であんなタイミングで東谷が……!
「……変なの」
うっ……リリーがこっちを完全に疑う様な目で見つめている。やっぱり不自然すぎた。
「ま、まあまあ! ほら次の授業始まるし!」
このままでは不味いので私はとりあえず話を逸らす方向へと私は持っていく。とりあえず、放課後に改めて絵本を使って過去へ戻るのを実行しよう、うん。
なんとか、我慢して残りの授業を終わらせた私はリリーが静止するのを無視してそのまま教室から出ていった。リリーには悪いけど、こればかりは譲れない。私は「今日はちょっと無理!」と返して颯爽と外へと出ていった。
とりあえず、私が今やるのは藍春がこっちに突っかかる原因を改めて過去に戻って探るという選択肢を実行する事だ。
まず、これを実行するなら人のいない場所優先なのは私の中で決定事項となっている。理由は明白。実行後の状況を考えると誰もいない方が都合の良い動きになりえるからというのが大きい。時間移動をした直後の私とその直前の私は恐らく別人に感じられる様な動きを見せるだろう。
簡単に言うと、それまで普通にしていた人が急にパニックを起こした……みたいな? 周囲からはそういう風に映るかもしれないって事を考えると実行するなら人のいない場所しか考えられない。
私はどこでこの絵本を使うか……やや駆け足で走りながら考えてみる。学校だと不意に知り合いに話しかけられそう、昼休みみたいに。
そうなると、なるべく人がいなくて安全な場所が良いよね。
私は昼休みの失敗を考慮し、確実に周囲が居ない場所を確認していく。
「……よしっ」
ここで私が選んだのは女子トイレの個室だった。それも人通りの少ない廊下にある。ここなら東谷との急なエンカウントが起きないと見込んでのものだ。
いくら東谷でも女子トイレに入る様な馬鹿ではない……と思う。とりあえず、変な妨害を受けない様にするならここが良いと考えた私は早速通学カバンの中にしまっていた絵本を取り出す。
……とりあえず、藍春が最初に衝突してきた時の時期を考えよう。
確か、藍春が最初に私へ突っかかってきた時は高校に入学してまだそこまで日が経っていなかった頃、具体的には四月が終わりそうな……それぐらいの時期だった。
この時期より少し前に移動すれば、原因掴めるかも!
「それじゃ、まだ空白の空きページを……」
私は呟きながら、絵が保存された最新ページの次を開く。
前のページと違い、まだ空白のこのページ。恐らく移動したらこの場面が保存されるという事になる筈。
……ちょっと、色々気になる所はあるけど。
「まあ、どうなっても私がどうにかしていくしかないよねっ」
結局の所、全ては私が選ぶことだ。
もし、どんな事になったとしてもそれも青春なんだ。
私はこの絵本の空白ページに願う。藍春が初めて突っかかってきたあの時期へと戻って原因を探って、その衝突を回避させる事が出来る様に。
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