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第2章
第15話
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「麻由美、ちょっと良い?」
「? なにリリー」
移動先の教室で声を掛けてきたリリーの所へ私は向かっていった.。別に向かう事自体はそんな悪い事じゃなかったんだけど……そこでちょっと不幸な事が起きてしまった。
「わっ」
「え、ちょ麻由美っ」
私は、足元のバランスを少し崩しかけてしまった。その際にすぐ近くに誰かがいなければ何事も無かったのだが……ここまで言えばわかると思うけど、いたのだ。それも、彼女が。
「……ったぁ~」
私はなんとかこけずに済んだけど、この動きに驚いた藍春は驚いて尻もちを付いて後ろから倒れてしまったのだ。見た感じ、そこまでの大けがには見えなかったし実際その後も何事もなく授業を受けていたから全然大きな問題では無かったのだろう。
だとしても。
「――ご、ごめんなさい!」
私は藍春に謝った。当然である。これは私が悪い。それで済めば良かったけど――。
「……何なのよ」
「えっ……?」
藍春が呟いた。小さい音量でも私にハッキリと聞こえるぐらいには。
「本当にっ、あんたは何なのっ!」
バッと勢い良く立ち上がると藍春は一気に私に詰め寄って怒鳴り込む。私も周囲にいたクラスメイトも、その様子を呆気なく眺めるしかなかった。
「えっ、そんな事急に言われても」
「そんな事って何! あんたは周囲も見れていない訳?!」
藍春がまくし立てる様に私へ詰め寄る。こっちは謝ったのに、何でそこまで言われなきゃいけないのか。
「何でそこまで怒るの? ちゃんと謝ったじゃない!」
「それとこれとは違うっ、あんたは……」
「ちょ、ちょっと。清水辞めなよ」
怒りのボルテージが上がっている様子の藍春に対し、リリーが割って入ってきた。
「ここで怒鳴ると皆見てるじゃん。麻由美だってホラちゃんと謝っていたのは本当だし、落ち着きなさいよ」
宥める様にリリーは説得する。
こういう時、本当に強いんだなあと私は内心関心を覚えつつも、突然怒鳴り込んだ藍春に対しては何なの……と思わずには居られなかった。本当に、私はここまでに藍春に何かをした覚えは一切無いのだ。
「……ふん、まあこれぐらいにしておくわよ」
落ち着いた様子なのか、藍春は捨て台詞を吐く様にその場を後にしていった。
リリーのお陰でなんとか事が大きくなる前に、その場は収まったんだけど……納得はいかなかった。以降、藍春は何かと付けて私に対してああいった威圧的な態度を取る様になってきた……そういう印象が私にはあるのだ。
ここまでが、私の覚えている少なくとも最初の藍春との衝突な訳ではあるんだけど……。
如何せんそれは唐突に起きてしまったがために方法は完全に手探りになってしまっている。だって、それぐらい私は状況が理解できないまま怒鳴られた様なものだもの。
あの後だってリリーと帰り道でギャーギャー藍春に対して愚痴ったのは覚えている。本当に急過ぎてビックリだの大人げない態度だの凄い言いたい放題だったのを覚えている。それぐらいには理不尽にしか見えない動きだったんだ。
「それで、麻由美はどうするの?」
「……えっ、どうするって」
やばい聞いてなかった。
リリーも呆れたと言わんばかりのジッと睨みつける様な顔だ。そんなクレームを顔で表現しなくても……と言いつつ、聞いていなかった私が悪いので当然である。
「何って今日の帰りはどうするのって事よ。近所のファミレスとか行く?」
「おおーっそれは良い……」
と言いかけた私だったが、そうなると目的が達成できなくなってしまうのでは? リリーとの交友も大事にしたいけれど、少なくとも最低限の情報を持っていかないと藍春の衝突が回避できるとは……とても言えないような。
「……んだけど、ちょっと用事があるかも」
「ふ~ん。そっか、じゃあ仕方ないか」
罪悪感を覚えつつもリリーの誘いを断った。リリーの方も深くは詮索するような態度を取ってくれなかったから良いんだけど……本当にごめん。
私は内心、リリーに言えない事を謝罪しつつ、教室を一人で出ていった。用事はもちろん、藍春を見つける事だ。
「? なにリリー」
移動先の教室で声を掛けてきたリリーの所へ私は向かっていった.。別に向かう事自体はそんな悪い事じゃなかったんだけど……そこでちょっと不幸な事が起きてしまった。
「わっ」
「え、ちょ麻由美っ」
私は、足元のバランスを少し崩しかけてしまった。その際にすぐ近くに誰かがいなければ何事も無かったのだが……ここまで言えばわかると思うけど、いたのだ。それも、彼女が。
「……ったぁ~」
私はなんとかこけずに済んだけど、この動きに驚いた藍春は驚いて尻もちを付いて後ろから倒れてしまったのだ。見た感じ、そこまでの大けがには見えなかったし実際その後も何事もなく授業を受けていたから全然大きな問題では無かったのだろう。
だとしても。
「――ご、ごめんなさい!」
私は藍春に謝った。当然である。これは私が悪い。それで済めば良かったけど――。
「……何なのよ」
「えっ……?」
藍春が呟いた。小さい音量でも私にハッキリと聞こえるぐらいには。
「本当にっ、あんたは何なのっ!」
バッと勢い良く立ち上がると藍春は一気に私に詰め寄って怒鳴り込む。私も周囲にいたクラスメイトも、その様子を呆気なく眺めるしかなかった。
「えっ、そんな事急に言われても」
「そんな事って何! あんたは周囲も見れていない訳?!」
藍春がまくし立てる様に私へ詰め寄る。こっちは謝ったのに、何でそこまで言われなきゃいけないのか。
「何でそこまで怒るの? ちゃんと謝ったじゃない!」
「それとこれとは違うっ、あんたは……」
「ちょ、ちょっと。清水辞めなよ」
怒りのボルテージが上がっている様子の藍春に対し、リリーが割って入ってきた。
「ここで怒鳴ると皆見てるじゃん。麻由美だってホラちゃんと謝っていたのは本当だし、落ち着きなさいよ」
宥める様にリリーは説得する。
こういう時、本当に強いんだなあと私は内心関心を覚えつつも、突然怒鳴り込んだ藍春に対しては何なの……と思わずには居られなかった。本当に、私はここまでに藍春に何かをした覚えは一切無いのだ。
「……ふん、まあこれぐらいにしておくわよ」
落ち着いた様子なのか、藍春は捨て台詞を吐く様にその場を後にしていった。
リリーのお陰でなんとか事が大きくなる前に、その場は収まったんだけど……納得はいかなかった。以降、藍春は何かと付けて私に対してああいった威圧的な態度を取る様になってきた……そういう印象が私にはあるのだ。
ここまでが、私の覚えている少なくとも最初の藍春との衝突な訳ではあるんだけど……。
如何せんそれは唐突に起きてしまったがために方法は完全に手探りになってしまっている。だって、それぐらい私は状況が理解できないまま怒鳴られた様なものだもの。
あの後だってリリーと帰り道でギャーギャー藍春に対して愚痴ったのは覚えている。本当に急過ぎてビックリだの大人げない態度だの凄い言いたい放題だったのを覚えている。それぐらいには理不尽にしか見えない動きだったんだ。
「それで、麻由美はどうするの?」
「……えっ、どうするって」
やばい聞いてなかった。
リリーも呆れたと言わんばかりのジッと睨みつける様な顔だ。そんなクレームを顔で表現しなくても……と言いつつ、聞いていなかった私が悪いので当然である。
「何って今日の帰りはどうするのって事よ。近所のファミレスとか行く?」
「おおーっそれは良い……」
と言いかけた私だったが、そうなると目的が達成できなくなってしまうのでは? リリーとの交友も大事にしたいけれど、少なくとも最低限の情報を持っていかないと藍春の衝突が回避できるとは……とても言えないような。
「……んだけど、ちょっと用事があるかも」
「ふ~ん。そっか、じゃあ仕方ないか」
罪悪感を覚えつつもリリーの誘いを断った。リリーの方も深くは詮索するような態度を取ってくれなかったから良いんだけど……本当にごめん。
私は内心、リリーに言えない事を謝罪しつつ、教室を一人で出ていった。用事はもちろん、藍春を見つける事だ。
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