青春少女 北野麻由美はたった一度の青春を謳歌する

益木 永

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第3章

第21話

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 第三章

  13

 私は藍春との衝突を回避させる事に成功した事をきっかけに絵本を活用して色々な選択肢を試していく、という行動に本腰を入れて行う事を決めた。
 最初に活用した藍春の件は私の中では大分大きい方である。以降も絵本を活用した違う選択を選ぶ、という活用方法は正直な所藍春の件よりは圧倒的に小さい事ばかりではある。いつもの帰りでリリーと寄り道する場所の選択肢を返る、とか西城が困っている姿を見た私が事前に原因を探って取り除く事に使ったりとかそんな小さなことだ。
 ……正直、機能に対して使い方がしょうもない! と私はなっているが、けれど事件なんてそう頻繁に起こるものではない。なので、私が覚えている限り私の中で重大になる、と思わしき出来事に対してフォーカスを当てている所だった。
「どうしようかな……」
 休日の自室で、私は家に放置されていた書きかけのノートの残りを使ってここまでに絵本を使って試した事と、この後起きる重大イベントについてをまとめていた。
 私はまとまらない考えをどうにかしてまとめるために、声を出して自問自答をしながらこのノートにまとめた事を考えていた。というのも、重大イベントの方が問題になっている。原因は簡単に言うと……どんな選択肢を取るべきか、という問題だった。少なくとも最初に重大イベントと私が定義する出来事は間もなく近づいてきている時期だった。
 五月末、この時にあったのは所謂集団行動での体験にあった話な訳だけど……。
 私はこの際に正直、ちゃんとした選択が出来ないまま流されてしまった、としか言いようのない事をしてしまったのだ。絵本の能力を使えば違う選択肢を見る事ができるかもしれないって思うとどうしてもこの時の事を重大イベントとして入れたいというのはあった。
「けど、どうするべきかな……」
 しかしその選択方法は……正直思い浮かばない。これは、一体どうしたら良いんだろうか。

「……はあああぁぁー」
「麻由美は今日、ずっと溜息ついてばっかだねー」
 休日明けの学校の昼休み、リリーにそう言われる程私は完全に溜息を繰り返し突き続けていた。もう、皆に言われるけど私はそれでも溜息をつくぐらいに悩んでいた。
「だってさー……悩むじゃん、これ」
 そうして私は目の前の黒板に書かれた内容に指をさす。
「まあ、そうだけどさ。けれど、ここまで溜息を吐く程なの?」
「吐く程、なんだよっ!」
 私は断言する。
 指をさした先にある黒板に書かれた内容……これは、まさしく目前に控えた重大イベントである集団学習イベントの選択肢だったのだ。
「こんな大事なイベントを軽くは選べないじゃん!」
「それはそうだけど、そこまで深刻なの?」
 リリーは何てことのない調子で聞いてくるが、私から言わせればこれしかない。
「深刻っなのっ!」
 もう、これしかない。
 前回なんとなくで決めてちゃんとした事を出来なかった以上、私はとてもじゃないが深刻な面持ちでこのイベントと向き合わないと行けないという重みがあった。
 それは、ある意味で前回みたいな失敗をしたくないという気持ちでもあったし、けれどこうした気持ちになるのも前回の存在があるからっていうのが大きいからだろうし……とにかく、私の心の中は穏やかではない、圧倒的な暴風が吹き荒れた環境になっていた。
「へ、へえー……」
「引かないでよ、こっちは真剣なんだからー!」
 けれどリリーにはこの深刻さを理解してもらえなかった。悲しい。

 さて、こうして私は次の重大イベントに対しての悩みを抱えていた訳ではあるのだが、前の時と比較してどういった変化があるのかを振り返る。
 一番は藍春が私に対して突っかかる事が皆無になった事だ。……時々、気になる視線で見られる事はあるんだけど。次に、私が能動的なリアクションを地道に起こした成果が現れたのか、前より西城と会話する事が増えたような気がする。
 ここまでは、私の行動で変化が起きたっていう事がわかるんだけど……気になる事がある。
「おやおや、北野さんは今日も凄い剣幕で悩みをアピールしているみたいだね」
「げっ」
 ……その、気になる相手である東谷がやってきた。
「げっ、となるなよいきなり……確かに凄い剣幕よね、東谷もこれはわかるでしょ?」
「うんうん、周囲も少し反応するくらいにはね」
「えっ?! そうなの?!」
 知らなかった……。でも、こんな事言ってたらそりゃ皆注目するかあ。気を付けないといけないかも……じゃなかった。いや大事だけど。
「でも、東谷。また急に話しかけてくるなんて、私に用事があるの?」
 そう。気になる事というのは東谷が何故かこちらへ話しかける事が明らかに増えていたのだ。前回の私の体感が週に一回程の機会で話しかけてくるとすれば、今は週に三回ほど……体感で三倍くらい話しかけられるくらいの頻度で増えていた。
「いやいや。特に他愛も無いよ。ちょっと気になる程度でね」
「何それ……余計に理解不能なんですけどぉ」
 私はちょっとクレームを入れてみる。何か事ある毎に東谷が話しかけてくる様になったの、不思議すぎて少しは入れたくなってくるのよね……。
「ごめんごめん。でも、これといった理由は無いし」
「ふ~ん……」
 変なの、と私は心の中で感想を残した。
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